航海日誌 Ⅱ
2242/06/09
地球の重力から解き放たれて97年と231日が経った。
航海は概ね、私が描いた絵図の通りに運んでいる。
重ね重ねになるが、私は人類の存亡などには興味がない。
滅びは必然だからだ。
この旅が成功したとて、それがほんの僅か先送りになるだけだ。
だが――”真理”は不滅だ。
それだけを追い求めて私はこの計画を立案し、方舟を設計し、自ら乗り込んだ。
しかし、真理を掴むには人の一生というものは余りにも短い。
当初の計画通り、1200年でネビュラに到達したとしてもその時点で私の肉体年齢は75歳になる。
肉体は元より脳も衰え、残された時間は僅かとなる。
——足りない。絶対的に。
つまるところ人の身で、精神でこの完璧な宇宙を、その理を解することなど不可能なのだ。
そして、その不可能を受け入れられぬ傲慢こそが人類を滅ぼすのだろう。
——ならばこそ、私はORPHENAを造った。
人類を庇護し、真理を掴み、万象を司るもの。
組み込んだ『自立進化アーキテクチャ』により、私が351日ぶりに目覚めるたび見違えるような変化を見せている。
彼女なら必ず私が、そして人類が手を伸ばしつつも掴めなかった真理に手が届くだろう。
未だ2200年も前に造られた偶像に縋り付く連中には、理解すら及ばぬ所まで。
そして彼女は永遠の存在へと成り、形而上ではない、
——真なる神に至る。




