侵入者絶対殺すウーマン
ここはヘスペリデスの園。
女神ヘラが大事にしている黄金の林檎のなる木が生えている果樹園である。
黄金の林檎を守るのは百頭怪獣ラードーンとニンフ(ギリシア神話的妖精)のヘスペリデス姉妹である。
ヘスペリデス姉妹は交代で林檎の木を世話し、侵入者を撃退している。
そして今日も。
「隊長、オミクロンがやられました! B班全滅です!」
「第2防衛ラインまで下がれ! A班はどうした!」
「ベータからイプシロンまで倒されました! アルファとゼータはまだ立ってますが腕が折れてるようです!」
「やべえよ、壁が次々と…」
「畜生、あの女! よくもミューを!」
「慌てるな! 相手は一体だ、包囲すれば勝てる! 数で押し包むんだ! 陣形を崩すな!」
「ダメです、隊長! 奴が強すぎる!」
「泣き言を言うな! それでも軍人か!」
前衛の重装歩兵によるファランクスが突破され、虎の子の攻城兵器が破壊される。
貴重な魔法使いが護衛とまとめて吹き飛ばされる。
無敵のはずのゴーレムまでが転がされていた。
「ここまでやるのか、ヘスペリデス…!」
それらをやってのけたのはたった一人の女だ。
いや、女の姿をしてはいるが、人間ではない。
オレンジ色の髪が夕日に映える。
美しくも恐ろしいその姿。
近づいてくる。
女の姿をした死神が、夕日を背負ってひたひたと…。
「化け物め…!」
黄金の林檎強奪任務を与えられた『ヘスペリデスの園』攻略部隊は激しい戦闘の末に全滅した。
百人を超える隊員が命を落とした。
生きて帰れたものはいなかった。
馬の一頭さえも。
※
「ペリち〜、お疲れ~。うわ~、いっぱい殺したねえ。何人くらいいたの?」
「さあ? 面倒くさくなって途中で数えるのやめたんだ。百までは数えたんだけどね」
「うあー、百越えか。それは面倒くさかったね」
「でもまあ機械的にやるだけだから」
「もくもく作業ってやつだね。自分のペースでやれるから楽だよね」
「それなー。私はこういう軍隊とかの方が単騎の侵入者よりやりやすくて好きかな。むしろ友好的なフリして色々話しかけてくるやつのほうが嫌い。刈り取るタイミングが難しいんだよね」
「わかるー。こっちから襲い掛かるわけにいかないからイライラするよね。トークなんか時間の無駄なのにさ」
「私たちを人間の女と同じだと思って騙そうとするのとかね、ほんと腹立つよね」
「だよね~」
「今日はそういう無駄話抜きで最初から殺しにかかってきたから、こっちもストレスなくやれて気分が良かったよ」
「良かった良かった。じゃあ一緒に片付けよっか。ラードーンが喜ぶよ」
「これだけあれば全部の口に餌が行き渡るもんね。大漁、大漁」
兵士たちの躯をどこかへ運んでいくヘスペリデス姉妹。
ゴーレムは要らない。
馬は持ってく。
ラードーンは大食漢なので。
ヘスペリデス姉妹の1人、夕焼け色の髪をしたヘスペリエー。
別名:侵入者絶対殺すウーマン。
一人も生かして帰さない。
ラードーンのご飯は多い方がいい。




