表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヘスペリデスの黄金の林檎  作者: ful-fil


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/39

祭りだ!!

 東京都内の神社総数、約千四百。寺院は約二千八百。(AI調べ)

 小さな祠や地蔵、道祖神、その他の宗教施設も含めれば更に膨大な数になる。


 それらすべてを更地に変えた驚異の怪物テュポーン。


 その怪物は新潟の海岸で巨神兄弟と日本古来の神一柱を相手に、なおも倒れずにいた。

 触手の数を減らされてはいるが、倒れない。

 むしろティターン兄弟の方が疲れを見せ始めていた。


「……エネルギー切れが近い。光の盾を作りすぎた」

「兄さんの盾がなくなったら、あのファイアーブレスどうするの?」

「おまえが防ぐんだ」

「無理だよ!?」

「やるんだ」

「光の盾なんか作ったことないよ! この大きさで活動するのも久しぶりなのに! 突然言われてもできるわけないよー!」

「できなければパンドラ共々、ゼウスに断罪されると思え」

「うっ、僕はともかくパンちゃんが怒られるのは……。仕方ない、やってみる」


 ぶっつけ本番で兄プロメテウスの技を真似て、光の盾を作ろうと試みるエピメテウス。


「練習でできなかったことが本番でいきなりできるような天才には見えんがなあ……。それにしても硬い妖怪だ。もう三本も刀が折れたぞ」


 泥縄式の特訓を呆れた様子で眺めながら、素戔嗚は折れた刀を放り捨て、新しい刀を亜空間から取り出した。

 神剣・天羽々斬(と勝手に名付けた日本刀)を一体何本持っているのだろうか。

 意外と百本くらいコレクションしているのかもしれない。


「そう焦ることはないぞ、希臘ギリシャの。我ら火が付くのは遅いが、ひとたび火が付けば神仏一丸となって事に当たる。一騎打ちなどもう古い。時代は集団戦法。民主主義、すなわち数の暴力だ」


 素戔嗚が示す先、新潟は笹川流れの海岸に、一種異様な存在が集結していた。


「そこの怪物! 天照様のおひざ元で舐めた真似してくれたね! 覚悟しな!」


 岸壁に立って指揮を執るのは小股の切れ上がったいい女、アメノウズメだ。

 なぜかねじり鉢巻きに祭りの法被を着ている。


「巻いちまいな!」


 彼女の指示で紅白の綱、それも神社のしめ縄のように太い巨大な綱を掴んで飛び立ったのは巨大なカラスだ。

 なぜか綱を掴む足が三本あるが、深く考えてはいけない。

 飛行機並みに巨大なカラスが綱を持って接近してくるのを見て、テュポーンは危険を感じたか、翼を広げ、空へ舞い上がろうとする挙動を見せた。

 だがそれを許す素戔嗚ではない。


「逃がすか!」


 自らジャンプして天羽々斬(四本目)でテュポーンの頭部を打ち据える。

 更に巨神兄弟が二人がかりで抑え込めば、さすがのテュポーンも離陸できない。

 そうこうしているうちに、カラスはテュポーンの頭上を旋回し、綱を離す。

 離された綱は落下して、テュポーンの胴体にぐるぐると巻き付いた。


「よっしゃ、計算通り!」


 カラスの首のあたりに搭乗していた人間よりも小さな神がガッツポーズを取る。

 少彦名である。


「そういうことか!」


 プロメテウスがすかさず綱を手に取り、ほどけないようにふた結びにする。


「今だ、引けー!」


 アメノウズメが団扇を振る。


「応!」


 いつの間にか集まっていた日本の神々が一斉に綱を引く。

 老若男女、飛鳥風の装束の神もいれば、現代風ファッションの神もいる。


「懐かしいのう。国引きの時もこうやって綱をかけて皆で引っ張ったものよのう。国来、国来、と掛け声をかけて力を合わせて新羅から島を引いてきて……」

「国引きって言われても知らないんですけど。私が生まれる前のことなんで」


 古い神と若い神がそんな会話を交わしながら綱を引いている。

 その横では大勢の狐がドーン、ドーンと太鼓を叩いている。

 岸壁では三人の美少女がチアリーダーのポンポンを振って応援を始めた。


「お父さん、がんばってー!」


 素戔嗚の娘、宗像三女神である。

 娘たちに応援されて、お父さんのテンション爆上がりだ。


「Go、SUSANO、Go!」

「エピくんがんばってー!」


 何気にチアリーディングにパンドラも混じっている。

 パンドラと肩を組んで応援しているのは、これも素戔嗚の娘、スセリヒメだ。

 神様の娘は案外たくさんいる。


 狐の叩く太鼓のリズムに合わせて、日本の神々が綱を引く。

 それに合わせて巨神兄弟もテュポーンを押す。

 テュポーンはしぶとく抵抗している。

 陸地に戻されればパンドラの箱による捕縛が待っている。

 テュポーンと、それ以外の神々の力が拮抗して、なかなか動かない。


「もう一押し!」


 海岸に更なる助っ人軍団がニャーニャーと現れた。

 ウミネコではない、招き猫だ。

 大小様々な白い猫、その数ざっと一万体。


 神と呼ぶにはいささか非力だが、その手は幸運を招く。

 ずらりと並んだ一万の猫が一斉に右手を上げた。

 太鼓に合わせて、ずいっと手招きの仕草をする。

 一糸乱れぬその動き。

 そこにどんな力が働いたのか。


 テュポーンの巨体がずるりと動いた。








 ここはプロメテウスの家。


「動いた!」

「動いたわ!」

「すげえな、動いたぞ!」

「猫の手を借りたんだね~」


 食い入るようにライブ映像に見入るヘスペリデス姉妹。


「あれなら捕まるのは時間の問題ね。さて、あんたらテレビ見てる場合じゃないわよ」

「ん? 何か用事あった?」

「ヘラに命令されたでしょうが。あんたらの役目はミノタウロスの陰謀を突き止め、阻止すること! 私はそれに関する調査をするはずでしょ! テュポーン騒動で注意をそらされたけど、これも陽動って可能性もあるわ。もしもそうなら敵の狙いは……」

「「「「宇宙基地!」」」」


 不和の女神エリスはすっかり忘れかけていた使命をヘスペリデス姉妹に思い出させていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ