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ヘスペリデスの黄金の林檎  作者: ful-fil


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テュポーンVS素戔嗚

 少し時間を遡って、テュポーンが東京を蹂躙し始めて間もない頃。

 日本の神々が緊急会議を開いていた。


 車座になってパソコンを見つめる神々。

 モニターには東京のライブ映像が映し出されている。


「なんじゃい、あの化け物は」

希臘ギリシャ生まれの妖怪であるらしいぞ」

「それがどうして日本におるんじゃ」

「わからんのう」


 口々に話し合うが、建設的な意見は一向に出ない。


「あれ、あのように町が壊されて……」

「武士は何をしとるんじゃ」

「今の世に武士はおらぬよ。今おるのは自衛隊じゃ」

「その自衛隊の鉄砲? 大砲? 何と呼ぶのか知らぬが、当たったのに効いておらぬぞ。頑丈な化け物じゃなあ」


 他人事のように見物している神もいれば、武力行使を主張する神もいる。


「異国の妖怪にデカい面されては我らの体面に関わる。討伐すべきじゃろう」

「しかし今の世に神が降臨してええもんじゃろか?」

「あんなデカいのが堂々と暴れとるんじゃ。神が降臨したってええじゃろ」


 これには全員が頷いた。

 テュポーンの暴れっぷりを見れば、今更だ。


「しかし我々でなくとも、仏が降臨してもええんじゃなかろか? 寺も被害にあっとるし」

「稲荷よ、仏法守護神どもはどうしとるんじゃ?」

「なんか大事な寺と僧侶と仏像が異界に飛ばされたって言って、探しに行ってるみたいです」

「飛ばされたもんの回収なんぞ後にせんかい!」

「私に言われても……」


 責任転嫁のような意見も出始める。


「そもそも西洋の化け物なんじゃから、西洋の神が退治したらええじゃろ」

「誰ぞ西洋の神々に知り合いがおったら連絡とってくれんか」

「久しく会っておらぬが、連絡先が変わっておらぬかのう……おや、繋がった。もしもし」


 電話をかけ始めている神もいる。

 真剣に意見を出し合っているのはごく一部で、多くの神々はライブ映像を眺めながら談笑している。

 一部では酒盛りが始まっていたりもする。

 そんな中で。


「ああああああああ!?」


 野太い絶叫が発せられた。

 モニターに掴みかかるようにして立ち上がった、その神こそ素戔嗚であった。


「この化け物、俺の氷川神社に何してくれとんじゃー!!」


 その時、モニターの映像では赤坂の氷川神社がテュポーンに吸い込まれていた。







「……というわけで希臘妖怪テュポーンよ! 赤坂のみならず東京・埼玉の俺の神社をよくもことごとく消し去ってくれたな! その対価は貴様の命で払ってもらうぞ! 黄泉の国にて我が母・伊邪那美にどつき回されるが良い!」


 お気に入りの神社を異界へ飛ばされて、怒髪天の素戔嗚。

 刀を突き付けて宣言するが、そこへプロメテウスが遠慮がちに声をかける。


「こう言ってはなんだが、あれは不死身で、首を切り落としても死なないのだが……」

「む、そうか。では黄泉の国に送る代わりに生きたまま細切れにして、生首をオリンポスへ送りつけてくれる」

「いや、ほどほどに弱らせてくれれば、こちらで捕縛するので……」


 素戔嗚の過激発言に少々引き気味のプロメテウスだった。


「そうか? 生ぬるい処分では禍根を残すぞ。二度と歯向かう気にならぬよう、心を折っておくべきだと思うがな」

「兄さん、この人怖いよ……」


 エピメテウスもドン引きだ。


「まあいい。俺は俺の気が済むまでやる。なます切りにして、それでも生きてるようなら切れ端はお前らにくれてやる。捕縛でも何でも好きにするがいい」

「……わかった」


 プロメテウスは重々しく頷いた。

 共闘だ。


 ティターン兄弟と素戔嗚が手を組む様子を、テュポーンは冷静に観察していた。


 ……こいつも敵である。


 テュポーンは己の触手を切り落とした素戔嗚を油断ならない相手と認識した。


 ……排除する。


 テュポーンの口が開く。

 その喉の奥に赤い光が見えた、次の瞬間。


「……危ない!」


 プロメテウスはとっさに光の盾を作り、前方へと突き出した。

 間一髪、テュポーンの口から発射された熱線が光の盾に弾かれた。

 そらされた熱線が大量の海水を蒸発させる。

 白く立ち込める水蒸気。


「面白くなってきたな」


 素戔嗚は狂暴な笑みを浮かべた。







 その頃、プロメテウスの家では。


「あの人、強そう」

「えー、でも叔父様たちに比べると小さすぎない?」

「それより見たか今の! 光線吐いたぞ、口から光線!」

「それをカメラで捉えて映像を届けてくるドローン技術が凄いと思うんだよね~」


 巨大なテュポーンに斬り込んでいく素戔嗚の苛烈な猛攻を、ヘスペリデス姉妹がスナック菓子を摘まみながらお気楽に観戦していた。



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