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ヘスペリデスの黄金の林檎  作者: ful-fil


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10/30

私立探偵不破エリカの報告メール

 また書いてしまいました、エリリンとグレぴの友情物語、深夜テンションで!

 私立探偵なのでハードボイルドを気取ってみました。

案件番号:#0721

依頼内容:拉致監禁被害者の救出。

現場状況:結婚式場。対象者の隣に犯人。参列者多数。うち犯人の手下が8割。強面の用心棒が犯人と被害者を囲んでいる。アリのはい出る隙間もない。

備考:招待客の中にオリンポスの神。


 …っと、いつもの癖で報告書みたいな書き方しちゃったわ。

 

 まずお礼言っとくわ、来てくれてありがとね。

 あの時は本気で危なかったわ。

 仮にも女神の端くれである私を窮地に追い込むなんて、あの女、邪神になりかけてるんじゃないかな。


 順を追って説明するわね。

 まず、今回の依頼人は新郎の両親よ。

 あの『いけすかない女』は意中の男を拉致して強引に結婚しようとしていたの。

 もちろん相手の合意なんか無しで、首輪と鎖で拘束しての無理やりな結婚よ。

 ヤンデレっていうの? 今時の流行りかもしれないけど、フィクションならともかく、現実にやったら犯罪よね。

 新郎は日本で拉致されて、国外へ……というか異界へと連れ出されたの。

 犯人は普通の人間じゃなかったのよ。


 一般的な捜索の届かない所へ拉致された彼を探し出して、救出することが今回の依頼だった。

 私が彼の居場所を突き止めた時、犯人は一見清楚な笑みを浮かべて、被害者に話しかけていたわ。


「やっと貴方を取り戻せたわ、テセウス。どうして私から逃げたりしたの?」

「知らない、俺の名前はテセウスなんかじゃない」

「いいえ、貴女はテセウスよ、愛しい人。今は思い出せないだけ。私たち何度も生まれ変わってめぐりあってきたわよね」

「人違いだ、頼む、解放してくれ」

「まあ、貴方ったら冗談ばっかり。そうやっていつも私から逃げようとするんだから。困った人。…逃がさないわ、もう二度と。私のテセウス」


 優しそうな声で男の頬を撫でながら話しかけてるんだけど、片手に拳銃持ってんのよ。

 銃で脅しながら、椅子に縛り付けられた男を愛しそうに撫でてるわけ。

 頭おかしいと思うわ。

 すぐに救出できれば良かったんだけど、警備が厳しくてね。

 準備を整えてチャンスを待つことにしたの。

 

 そしてチャンスが訪れた。


 被害者は地下室に閉じ込められてたんだけど、結婚式の時には式場に連れていかれるのよ。

 警備は厳重だけど、地下室よりは隙ができやすい。

 少なくとも屋外へ出るルートが施錠されてないからね。

 警備員が大勢いてもなんとかする自信はあった。

 それに何よりほら、私は一度経験済みだから、結婚式場への殴り込み。


 式場での新郎は気の毒なくらいロープでぐるぐる巻きにされてたわ。

 轡まではめられて、誓いのキスの時どうするつもりだったのやら。

 首輪も着けられて、その鎖を新婦が持ってるのよ。

 ブーケの中には銃口が新郎に向けられた拳銃。

 異常よね。

 そんな新郎新婦を見守る参列者も異常だったわ。


 なんでいるのよアポロン!

 派手なスーツ着て、新郎よりイケメンで目立ってるじゃないの。

 『いや~、熱いね~、熱愛だね~、よっ、熱愛カップル』

 って何ヤジ飛ばしてんのよ!

 今年の夏がやけに暑いと思ったらこいつが地上にいるせいだったのね。

 真面目に神の仕事しろよと思ったわ。


 そしたら神が1人じゃなかったの。


 ふと横を見たら、シャンパン飲んでる男がデュオニュソスじゃないの!

 それ見てピンと来たわ。

 こいつら新婦の元カレね。

 あのヤンデレ女、本命との結婚式に元カレ達を招待したんだわ。

 脳みそ腐ってるんじゃないかと思ったわ。


 呆れてるうちに式が進行して、新郎の轡が外されたわ。

 いよいよ誓いのキスってわけね。

 させないわよ。


 新婦めがけて林檎を投擲してやった。

 ぶつかりゃいいと思ったけど、さすがに避けられたわ。

 転がった林檎の文字を読んだあの女、ハッとしてアポロンの方を見たけど、すぐに警備に指示を飛ばしてた。


「侵入者よ。見つけ次第殺しなさい」


 怖いわねえ。

 でもおあいにくさま。

 私だって女神の端くれよ、簡単には捕まらないわ。


 催涙弾と発煙筒を立て続けに式場に放り込んで、場内は阿鼻叫喚よ。

 アポロンは動じず笑ってたし、デュオニュソスはシャンパン飲み続けてたけどね。

 警備員が走り回り、戦闘力のない参列者が逃げまどう中、それでも式を続行しようとしてたけど、そうは問屋が卸さない。

 首輪を繋ぐ鎖を狙撃して破壊してやったわ。


「ヘパイストゥス様に作ってもらった特注の鎖が! 非破壊属性のはずなのに!」


 甘いわね、不和の女神に壊せないものなんてないのよ。

 私はあらゆる連結構造を壊す破壊属性。

 破壊属性と非破壊属性をぶつけたら、破壊属性が勝つ! …多分。

 

 新郎はよろけながらも新婦から離れたわ。

 このチャンスを逃したら一生あの女の奴隷だものね。

 必死で走って逃げる新郎。

 そこを私がサイドカー付きの大型バイクでピックアップ。


「君は」

「探偵です。ご両親の依頼で来ました」


 あとはもうエンジン全開でぶっ飛ばすだけよ。

 あの女が根城にしてた異界を駆け抜けて、現実世界への出口までもう一歩というところで。


「テセウス様あー!」


 あの女が追い付いてきたのよ。

 全身から血のような赤い糸を発射しながらね。


 あの糸なんだったのかしらね。

 糸が通行人に突き刺さると、刺された人がゾンビみたいになって私に襲い掛かってくるのよ。

 雑魚でも数が多いと厄介よね。

 操られてるだけだと思うと、死なせていいのかためらうし。

 そうこうしてるうちに追い付かれてしまった。


「テセウス様を返せえー!」


 鬼の形相ってああいうのを言うのね。

 無数の赤い糸に絡みつかれて、バイクは横転。

 私の体は投げ出されて路上を勢いよくすべった。

 ライダースーツの焦げる匂いがしたわ。


 救出対象者は無事かと振り返ったら、むこうも地面に転がってたけど起き上がろうとしてた。

 大きなケガは無さそうだった。

 ヘルメットかぶせといてよかったわ。


 カツーン、カツーン。


 ハイヒールの足音。

 純白のウエディングドレスを着た犯人が歩いてくる。

 片手に拳銃、片手に鎖のちぎれた首輪を持って。


「テセウス様、行かないで。愛しているの」


 鬼の形相から一転して、可憐で儚げな顔でそういうこと言うんだから怖いわ。

 二面性ってやつね。

 まあ人間なんて二つの顔どころか、いくつもの顔を持ってるのが当たり前だけどね。


 さて、私は破壊属性の女神だけど、こうやって正面から来られると打つ手がないのよね。

 せめて言葉で時間稼ぎでもしてみようかしら。


「そういうのは愛って言わない。執着っていうのよ」


 犯人は足を止めたわ。

 憎々しそうに私を見た。


「あなたに何がわかるの。壊すことしか知らないくせに」

「わかるわよ。女は強くなければ生きていけない。でも優しくなければ生きる値打ちがない。あなたの執着、優しくないわ」

「黙れ!」


 銃口が私に向けられた。

 鈍い銀色のリボルバー。

 あれで撃たれたら痛いわよね。

 長かった女神人生も今日で終わるのかしら。

 悪い夢を見ていたような…いえ、いい夢だったかもしれないわ。


 そう思った時、


「エリリン、待たせた!」


 あんたが結界ぶち破って空から降ってきたのよ。

 



「グレぴ、どしたの。顔が笑ってるよ」

「ちょっとね。あとグレぴって呼ぶなよ」

「グレぴはグレぴじゃん」


 おでこに大きな絆創膏を貼ったヘスペリデスがスマホを見ながらニヤニヤしている。

 その画面には大きく文字が表示されている。


『あとエリリンて呼ばないで』

 お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、作中のヤンデレ花嫁の名前はアリアドネです。デュオニュソスとアリアドネがデキてたのはギリシア神話の通りです。アポロンとは神話では接点がありませんでした。現代になってから交際が始まったと思われます。作中のアリアドネはテセウスに執着しながらオリンポス界隈のイケメンを籠絡した魔性の女です。

 属性についてエリリンがなんかごちゃごちゃ言ってますが、テキトーです。

 神の力と神の力がぶつかり合ったらどうなるかなんて、それこそ神様でないとわかりません。

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