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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪役令嬢にとりつかれました!

ゴリゴリモンスター 〜祖父は立派な発明家ですけど、みんなが嫌がるので装置を止めます〜

作者: 葉桜 笛

「ゴリゴリモンスターが来たぞ! 逃げるんだ!!」



 〔ゴリゴリモンスター〕


 それは、下半身が戦車と融合しているモンスター。

 近付いて来るとき、「ゴリゴリ」と音を立てるので〔ゴリゴリモンスター〕という名がついた。魔法を吐き出し、襲ってくる。とても強いので、腕に自信のある冒険者も、見つけたら全力で逃げなければ殺されてしまう――――――。




 昔は、一般人でも魔法を使えた。

 だが、だんだん使える人が少なくなり、代わりに科学が発展していった。今では、魔法が使える人は貴重な存在で、百人に一人ぐらいしかいない。

 しかし、モンスターは変わらず強力な魔法が使える。一般人はただただ殺されるだけだった。脅えて暮らす人々。減っていく人口。消えていく町。そこで、一人の科学者は考えた。




(モンスターの足が遅くなれば、女性やこどもも逃げやすくなるのではないか?)




 “戦車と融合すれば、足が遅くなる”

 そう思いついて、生まれたのが〔ゴリゴリモンスター〕。

 一人の科学者が、作り出した“バケモノ”だった。










 ロッソ・クラシコは町の人から冷遇されていた。

 祖父の発明によって、人々は更なる恐怖に脅えることになったからだ。


 モンスターの足を戦車のキャタピラにすることで、逃げやすくはなった。

 が、砲台はないとはいえ、ただでさえ強いモンスターが更に強くなってしまった。家は前より簡単に壊されるようになり、引っ越ししなければならない人が増えた。



(死者が減ったからでもあるのに……)



 死んだら引っ越すことも出来ない。

 “祖父のおかげで、死者が減った”と言い返すこともできない内気なロッソ。


 祖父は死んでもういない。老衰である。

 両親は物心つく前にモンスターに襲われて死んだ。

 言い返せば、更に怒鳴られ、憎まれるだけ。だから、いつも何も言えず、幼なじみの少女に庇われていた。少年が一人で生きていくのは大変だった。




 そんなある日。


 自分が使う〔薪〕と、僅かな収入源となる〔魔道具〕の部品になるような素材を探しに、森に入った時のこと。柄の悪い冒険者のパーティー〔ボトリチス〕に襲われた。



「げぇはははははぁ!

 じじいの〔鍵〕をよこせぇ!!」



 どうやら、亡き祖父が作った“モンスターと戦車の融合装置”の〔鍵〕が欲しいらしい。それがあれば、〔ゴリゴリモンスター〕を簡単に倒せるようになり、荒稼ぎができるとのこと。



「か、〔鍵〕なんて、知らないよぉ」



 人気が無い所で襲われたので、助けてくれる人はいない。

 しかも、知らない物をよこせと言われても、ロッソにはどうしようもできなかった。「そんなに隠したいなら殺してやる!」と殴る蹴るの暴行を受けたとき、空から天使が現れた。



 天使はドラゴンと一緒に舞い降りて、ボトリチスたちとの間に入り、ロッソに言う。「立ち上がりなさい」と。

 助けてくれると思ったのに、“自分で戦え”と天使は言った。


 ヤケクソになり、薪を振り回すロッソ。

 ボトリチスが天使に気を取られているうちに、一撃をくらわせた。もちろん反撃がきたが、天使がつれているドラゴンがシッポで軽くなぎ払ってくれた。




 天使は〔ロザリー・バードック〕といった。

 〔世界の覇者〕を目指しているエルフ。

 キレイな金色の髪を二つに分けて、白いリボンで結び、胸のあたりで大きな縦巻きカールにしてある。ボタンもファスナーもついていない古いデザインの服を着ていた。


 ドラゴンは〔ゼア・メイス・リン〕といった。

 ドラゴンと人間のハーフ。

 普段は、キレイな銀色のドラゴンの姿をしているが、人間の姿にもなれる。遠い小さな国の王子様らしい。彼の服はファスナーもボタンもついていた。いかにも“おとぎ話の王子様”って感じの深い色の軍服を着ている。




 二人は別の大陸出身で、魔法が使えた。




 そして、魔法は精霊が音を聞き取って発動すること。精霊は感情を食べることを教えてくれた。しかも、二人は海を渡ってきた〔ゴリゴリモンスター〕と戦ったことがあるという。

 この大陸でも、〔ゴリゴリモンスター〕と戦える者は少ない。ロッソは前のめりになって、どう戦ったのか聞いた。


 二人は、親切に話してくれた。

 


「倒したのではなく、大陸に入ってこれないように結界を張っただけだ」



 モンスターが使う魔法は、体内に宿っている〔精霊〕が出しているらしい。

 魔法を提供する代わりに、モンスターの食欲などの感情を〔精霊〕は食べるとのこと。

 〔精霊〕や〔妖精〕は、人とぶつからない。しかし、〔精霊〕と〔妖精〕はぶつかる。その体の構造の違いを利用したそうだ。



「妖精に聞いたところ、〔人には見えない小さな精霊〕から、〔妖精〕、〔人にも見える精霊〕へと進化していくそうですのよ。

 体の作りが同じだから、〔精霊〕と〔妖精〕はぶつかるって、言ってましたわ」



 恋の感情が大好きな〔妖精〕を魔法陣に集めて、〔ゴリゴリモンスター〕の体内の〔人には見えない小さな精霊〕とぶつけ、物理的に大陸への侵入を止めたとのこと。




 二人の説明を聞いて、ロッソは興奮した。

 この大陸では魔法が衰退しているため、魔法の原理なんて考えたこともなかった。精霊に気に入られないと使えないんだろうなとしか、思ったことはなかった。


 “精霊に聞き取りやすい声”“感情を食すこと”を考慮して、ロッソは〔祖父が残した部品〕とロザリーの持つ〔妖精の杖〕を使って、対ゴリゴリモンスター用の武器を作ってみることにした。ゴリゴリモンスタ―に効く武器が作れたなら、それは、そのままゴリゴリモンスターを作る装置を止める〔鍵〕になる可能性がある。



「たぶん、“鍵”は〔妖精の杖〕から放たれる〔魔法のエネルギー〕だと思うんだ」



 優しい祖父は、〔ゴリゴリモンスター〕の足を遅くしただけ。足を〔木〕とかに変えて、動けなくはしなかった。

 “モンスターも生きている”だから、絶滅に繋がるようなことまではしなかった。そこに、ヒントがあるとみて、どんな魔法が“鍵”に使われたか考えながら武器作りを進めた。






 しかし、柄の悪い冒険者パーティー〔ボトリチス〕はしつこかった。




「あはははははははぁぁ!

 いただきだぜぇ!!!!!!」




 ゴリゴリモンスター退治は、普通のモンスター退治より〔カネ〕になる。

 潜りの技術者に作らせた〔崩れかけのロボ〕に乗って、ロッソが作った武器を盗んで行った。



「初めて見た大きな乗り物に、気を取られてしまいましたわ」

「俺もだ。すまない」



 ロザリーとゼアは冒険者に囲まれ、すぐに取り返しに行くことができない。



 絶望するロッソ。

 〔妖精の杖〕は、とても貴重なもの。

 申し訳ない気持ちでいっぱいになった。



「それは、じいちゃんの発明だけじゃなく、ロザリーの大事なものも使ってるんだぞ!」



 内気なロッソは、勇気をふりしぼって立ち上がった。

 ボトリチスのメンバーは、ロッソは戦力外だとあなどって笑っている。それがとても悔しかった。そして、そこが狙い目だと思った。




――――――――妖精にも聞き取りやすい音がありますの。




 ロザリーが説明してくれたことが、頭の中でグルグルまわる。




――――――――〔炎の魔法〕は“怒り”の感情を好むのですわ。




(魔法は精霊に好かれたりしないと使えないんだと思ってた)



 軽く冒険者たちに小突かれ、足がフラフラしておぼつかない。

 それでも、しっかり〔崩れかけのロボ〕を見据える。



(でも、そうじゃないなら、僕にだって!!)



 狙いは左腕の間接部分下。

 そこに、左のタンクからオイルが流れ、心臓部分を通って全身にオイルが行き届かせるためのパイプがある。



(一から発明をすることはできないけど、だいたいの作りなら僕にもわかる!)



 まだ未熟ながらも、技術者らしく冷静に狙いを定める。

 そんな自分とは別に、冒険者への怒りでいっぱいの自分もキープ。

 ロッソはタイミングを計り、感情を爆発させた。



(精霊が言葉を聞き取れるように、気をつけつつ……)






「燃え上がれ! 炎よ!!」






 ロッソが呪文を唱えると、小さく「パチッ」という音が聞こえた。



「ぎゃはははははは!」

「こいつ、ヤケクソになって、魔法を使おうとしたぜぇ!」

「ヤケクソすぎだろ!」

「冒険を積み重ねてきた俺たちにだって使えねえのに、ムリに決まってんだろ!」

「バカだこいつ!」



 笑うボトリチスのメンバー達。

 笑いながら、ロッソを殴った。

 殴られながら、ロッソも笑った。



「こいつ、おかしくなったぜ」



 ボトリチスのメンバーがロッソを不気味に思ったとき、〔崩れかけのロボ〕が崩れた。




「「「「「あ゛あ゛ぁ!? なんでだぁ!?!?」」」」」




 ロッソの狙いは正確だった。

 魔法はとても小さいが発動し、見事にオイルのパイプに穴を開けた。

 崩れかけでも、彼らの強力な武器だったので、ボトリチスは逃げていった。





「よく、立ち上がりましたわ」



 とても満足そうなロザリー。

 でも、妖精の杖を使った武器はボトリチスが持って行ってしまった。

 ロッソは、再び絶望した。



「お~っほっほ!!

 誰が〔妖精の杖〕が一つだけだと言いまして?」



 なんと、ロザリーの翼が光ったと思ったら、その光はロザリーの周りをクルクル回り出した。そして、光はロザリーの両手へと飛んでいき、〔妖精の杖〕になった。



「……杖の先が、花の形…………。

 奪われた武器に使った、ロザリーの〔妖精の杖〕と一緒だ」



 〔妖精の杖〕が二本も現れ、驚いた。

 何より、ロザリーが天使でないことに驚くロッソ。驚くが、なんとなく納得する部分もあった。ロザリーは普通の人が思い描く天使像とは、かけ離れている気がする。


 ロザリーは三人の〔古の光の妖精〕を連れていた。

 〔妖精の杖〕は妖精が変身していたらしい。



「二本もあれば、より強力な武器が作れますわよね?」



 微笑むロザリー。

 ロッソは震える手で二本の〔妖精の杖〕を受け取った。



「やってみるよ。ロザリー!!」










 ロッソは、装置の〔鍵〕となる新たな武器を作った。

 最初に作ったのは、ガンタイプだった。今度は右肩に装備するタイプの、大きめの物にした。ロザリーの負担にならないよう、見た目よりかなり軽い設計になっている。



「〔妖精の杖〕が二個あるのと、妖精が自分で動くことを前提に考えて作ったんだ」



 一から開発できないので、基本は祖父の発明を組み合わせたものである。



「ロザリーが拳を前に突き出して止めると、拳のほんの少し先に衝撃波が出る」



 腕を振っている間に、肩から右腕に続いている筒に空気が入る。

 その空気は、筒の中で音を鳴らしながら右肩の〔妖精の杖〕のもとまでいく。

 腕が止まると、今度は筒から衝撃波がでる。

 


「誤作動の防止のために、腕を少し引くと“キャンセル”するようにしたよ」


「まぁ! まぁ! まぁ!

 わたくしでも、武闘派の方々(かたがた)のようなことができますの!?」



 ロザリーは大喜び。

 空に向かって“光の衝撃波”を出して大興奮した。






 ゴリゴリモンスター用の新しい武器ができたので、次の日は、〔融合装置〕の破壊に挑戦することにした。

 〔融合装置)の近くには、冒険者のパーティーがいくつか集まっていた。遠い国から来たと思われるパーティーもいる。



「お前らも、ゴリゴリモンスターに挑戦するのか」

「ここは危険だ。世界中の猛者達が集まるほどだぜ?」

「“悪魔”も来ていると精霊が言っています」

「悪いことは言わん。帰れ」

「せめて、もっと筋肉つけてから来い」



 ムキムキの男達に忠告され、ロッソは怖くなった。

 彼らの中には、精霊と会話が出来る者もいるようだった。きっと希少な〔魔法使い〕なんだろう。服装もそれぞれ個性的だし、本当に世界中から集まってきたようだった。


 ロザリーが、気にせず笑顔で前に出た。

 それは、とても優雅だったので、まるでドレスを着ていると錯覚するほどだった。



「みなさま。ご心配ありがとうございます。

 わたくしもみなさまが心配ですわ。

 今から、融合装置を壊しますのに、そんなところにいたら、足の速いモンスターに襲われましてよ?」



 冒険者達が一斉に身構える。



「融合装置を壊したら、足の速いモンスターが襲ってくるじゃねぇか!」


「だから、そう言ってますでしょ?」


「装置を壊したら、町の住民達から不満が出るぞ!?」


「あら?

 ゴリゴリモンスターを生み出す装置に、住民のみなさまは不満があるようですけど?」


「装置が壊れたら、町の奴らも気がつくさ!」


「ふんっ。そんな起こってもない未来のことなど、知ったことではありませんわ。“町の人が気付くかどうか”より、“今、町の人が望んでいること”に私達は向き合ってますの。

 あなた。

 そんなに言うなら、こんな所にいるより町のみなさまを説得されてはどうですの?」



 ロッソは胸が熱くなった。

 “町の住民のため”のようにロザリーは言っているが、そうじゃない。“ロッソのため”だ。ロザリーは最初から、ロッソが住民に虐められる要素を取り除くことだけ考えていたようだ。

 町の人が望んでいるから、ロッソは〔融合装置〕を壊す気になった。が、冒険者の言うとおり、それをすれば町の人が後悔することになる。冒険者に言われて気付いた。町の人を思うなら壊すべきじゃない。

 



「お前は悪魔か!!」

「足が遅くなったおかげで、逃げれるようになったんだぞ?」

「腕に自信のあるパーティーが数チーム集まれば、倒すこともできる」

「悪魔……?」

「あれ? この女…………翼が無いけど、まさか!」




「「「「「〔ドラゴン殺しの屍生産機“幻光の堕天使ロザリー”〕か!?」」」」」




「え? え? え?

 ロザリーって、有名人だったの?」



 ロザリーを見て脅えだした冒険者達。

 どうやら、魔法使いが精霊から聞いたウワサ話を、この場のみんなに話していたらしい。

 魔法使いの上に、精霊と話せることを自慢して、この場の自分の存在を高めようとしたようだが、高まったのはロザリーの存在だった。

 驚くロッソ。



「〔古の光の妖精〕を三人も連れていたのに〔堕天使〕なの?」



(〔屍生産機〕と言われているなら、ゴリゴリモンスターと同じぐらいか、それ以上にロザリーがヤバイことになるけど?)



 ロッソには何が何だかわからなくなった。



「“ウワサ”が勝手に一人歩きしたのですわ。

 わたくし自身は、たいした力はありませんの」



 そう言って、ロザリーはゼアを見た。



「ゼアぁ! 助けてくださいませ♡」



 すると、ゼアは銀色のドラゴンに姿を変え、近くにいた冒険者たちをなぎ払った。



「なんだこりゃ!」

「ずりぃぜぇぇぇぇぇぇぇ!!」



 飛んでいく冒険者たち。



「そして、あなたが作ったこの武器!!」



 ロザリーは遠慮無く冒険者たちにパンチを繰り出す。

 次々に〔光の妖精〕のエネルギー波をぶつけて、殴り飛ばしていった。



「いつも側にいる古の妖精達!

 ……そういえば一人足りませんわ」



 空に向かって、「わたくしはここにおりましてよ?」と叫ぶロザリー。

 すると、奪われた〔妖精の杖〕が帰ってきた。

 盗みをはたらいた〔ボトリチス〕のメンバーが、「なんで杖が飛んでいくんだ!?」と驚きながら追いかけてきた。



「まわりの人達に助けられて、今のわたくしでいられるのですわ」






 ロザリーは拳を握り、集中した。

 すると、帰ってきた〔妖精の杖〕が右肩に装備している武器に消えた。武器が右に広がり、まるで右側だけに翼が広がっていくようだった。

 三本の〔妖精の杖〕を取り込んだ武器が光だす。






「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」






 やってきた〔ボトリチス〕のメンバーを一気に吹き飛ばし、そのまま〔融合装置〕にも強力な一撃をくらわせ、装置の停止に成功した。



「……最悪だ」

「モンスターが暴れるぞ」



 絶望に脱力する冒険者達。

 しかし、ロザリーは完全に無視した。



「さぁ! 凱旋ですわ!!」



 町に帰ると、広場でロザリーが声を張り上げた。



「みなさま! 聞いて下さいませ!!

 ゴリゴリモンスターの〔融合装置〕は、停止しましたわ!!

 これ以上、ゴリゴリモンスターが増えることはありませんわ!」



 町の人は横目で見ただけだった。ボソッと「それが本当なら良いんだけどな」と言う人がいたぐらいだ。



「きぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



 路地の裏から女性が逃げてきた。



「おい!

 モンスターはこれ以上出ないんじゃなかったのか!?」



 魚屋の男が怒りをあらわにした。



「え?

 誰がそんなこと言いまして?

 わたくしが話したのは〔ゴリゴリモンスター〕についてですわ」



 青ざめる町の人々。

 目にもとまらぬ早さで、建物の壁から壁へ飛びうつる猿系のモンスター。

 いつもならキャタピラの音が聞こえたらすぐ逃げられたのに、早すぎて逃げられそうにない。



「なんてことしてくれたんだ!」

「このままじゃ、たくさん死人が出るぞ!!」

「最悪だわ!」

「全然良くなってないじゃない!!」

「今までの方がましだ!」



「おぉ~っほっほっほっほっほっほ!!

 何とでも言うが良いですわ!

 わたくし達はあなた達の願いを叶えてあげただけですの!!」



「お前らなんかに願ってねぇ!!」


「いいえ。願いました。

 ロッソのおじいさまの発明を憎んで、ロッソに酷くあたってたのは誰ですの?」


「はぁ? ゴリゴリモンスターなんて喜べるはずないでしょ?」



「不満を述べるより、速く逃げた方がよろしくてよ?

 がんばってくださいませ!!

 ほっほっほっほっほっほっほっほ!」



 逃げ回る人々を、笑って見物するロザリー。

 何故か彼女はモンスターに狙われなかった。

 少し後ろにロッソが立っていた。ロッソの身は、ゼアがそっと手を肩にそえて、ロッソの体を少しずらしたりして危険を回避した。



「わ゛かった! 俺たちが悪かったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「八つ当たりだったわ!」



 やがて、町の人が血だらけになったころ、自分たちが間違っていたと認めた。ロッソに八つ当たりをしてしまったと、深く反省した。

 すると、ロザリーは軽くジャンプして、宿屋の屋根に着地した。

 まだ武器の中にいた〔古の光の妖精〕の力を借りたらしい。



「さぁ! 歌いますわよ!!」



 そう言うと、古の妖精の一人がマイクに変身した。残りの二人は光速で飛んで、窓やベル、机など町にあるものを叩いて、メロディーを奏でた。




――――押せばいいのか、引けばいいのか、恋はよくわからない♪




 歌い出したロザリーに、みんなが驚いた。



「なんでこんな非常事態に歌えるの?」

「いかれてるぜ」

「いいからほっといて逃げろ!」

「あいつとにかくヤバイ」

「この状況でよく歌えるな」



 しかし、ロザリーが歌うとモンスターの動きが遅くなり、やがて森に帰って行った。

 妖精にとって、〔恋〕や〔愛〕の感情はデザート。恋の歌に妖精が集まって、モンスターの中の精霊が妖精にぶつかり、モンスター自身の動きが鈍くなった。〔妖精〕に進化する前の〔精霊〕にとってもデザートになる。〔精霊〕がお腹いっぱいになることで、モンスターも満たされた気分になり、森へ帰っていった。







 そして、ロザリーとゼアは次の町へ旅立つといった。「僕も行く」とロッソは言った。



「あなたは来ませんわ」



 そう言うロザリーの視線の先には、ロッソの幼なじみがいた。

 寂しそうに、物陰からこちらの様子を見ている。

 町の人に辛くあたられていた時も、庇ってくれた幼馴染の少女。彼女に会えなくなるのは辛いと思った。そんなロッソを見て、うなずくロザリー。

 ロッソは緊張してギクシャクしながら、少女に向かっていく。



「こ、これからは、ぼ、僕が……君を守る!」



 顔を赤くする少女。「プロポーズみたいですわ!!」と喜ぶロザリー。


 少女は深く頷いた。

 それを確認すると、ロザリーはロッソが作った武器をちゃっかり装備したまま、〔世界の覇者〕になるためゼアと旅立った。




最後までお読みくださり、ありがとうございました!


ロザリーが拳を突き出すとき、パァァァァァァって武器が光るのがカッコイイと思いながら書きました。


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