表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/13

10 クラスメイトの追い払い方


 街は俺の噂で溢れていた。たった一発の銃弾で六匹のゴブリンを打倒した魔弾の使い手――だとか。

 尾ひれってこうやってついていくんだろうなって思う。実際は六発の弾丸で倒しただけなのに。


『やっとご主人の苦労が報われたよね! ……媚を売りたい連中もうろつきだしてるけど』

「今だけだろ。その内みんな慣れて何も言わなくなるさ」

『ご主人、まだこの街にいるの?』


 俺はコルトの整備をしながら答える。シリンダを取り外し、溶剤を浸した布を細い棒につけて銃身の煤を取り除いていく。その後はブラシで残った細かい汚れを掻き出す。シリンダも同様の手順で清掃し、元に組み立て直すだけだ。

 コルトはリボルバータイプの中でもパーツが少なく、バラしやすいのも強みらしい。メンテ動画を見るだけで大体分かってしまった。


「本当は遠くの国に行くつもりだったけど、暫くここに滞在するのも良いかなって思うんだ。知らない場所に行くのにはリスクもある」


 クラスメイトや王女ともあれっきり全く音沙汰がない。

 最初から連中は俺のことなど眼中になかっただけで、こっちが必要以上に警戒していただけなのかもしれない。


『それもそうだね』


 その時、ドアがノックされる。

 また噂を聞き付けた奴らか? めんどくさいので無視しようとしたが……。


「ヤマト君? いるよね? お願いだから開けて」


 俺はその声に対し、警戒感を跳ね上げた。リアをポケットに押し込み、コルトはホルスターに収める。


「……今更、何しに来たんだよ」


 俺は扉に近づかず、そのまま話しかけた。


「伊藤に言われたのか?」


 そう、こいつは伊藤の取り巻きの一人の北村。クラスではマドンナだとかミス・高校生だとか言われてるが、知ったことじゃない。

 今は俺の敵でしかない。


「そうじゃないの! お願いだから開けてくれる?」

「………」


 コルトのグリップに手を添えたまま、ドアに近づいて開けてやる。

 魔法使いのコスプレみたいな恰好をした北村が立っていた。こいつのタレントは魔導士だったな。

 つまりサルティナと一番相性がいいわけだ。戦闘力もトップレベルかもしれない。


「………」


 俺は無言で顎で入るよう示す。一応ドアを閉める前に周囲を確認するが、他のクラスメイトの姿は無かった。どこかで見張ってるのか。


「変わったね、ヤマト君。凄くカッコよくなったよ」

「……お前らが誠心誠意、俺を馬鹿にしてくれたからな。だからここまで来れた」


 俺は棘を隠さずに告げる。正直、今すぐに帰って欲しい。


「それまでの事は謝るよ! 本当にごめんなさい! でも、後はもうヤマト君にしか頼れないの……だから……」

「……何があった?」

「コバセンがね、ある日から突然、私たちの前で凄い怖くなったの。男子たちは抵抗したけど、コバセン、王女と仲を深めたみたいで……凄く強くなってた。みんなボコボコにされて、男子は全員奴隷みたいになって、私たち女子は……」

「………」


 俺は何も言わず、彼女に背を向ける。

 確かにあの先公ならやりかねないだろうなぁ。


「だからね、ヤマト君を連れてこようと思ったの。あなたがいれば――またサンドバッグに出来るから!!」


 振り返ると、北村は杖を振り上げ魔法陣を展開していた。


「……どうせ、そうだと思ったよ」


 対し、俺は冷静にコルトを抜き、一瞬で彼女の手から杖を吹き飛ばす。


「……え?」


 魔法陣が消滅しカラン、と転がる杖。呆けて棒立ちする北村。


「お前って勉強も運動も出来るのに、バカだよな」

「なっ!?」

「そんな見え透いた嘘、流石に信じねぇって。それとも伊藤の入れ知恵? あいつスポーツ馬鹿だもんな」

「く、少し瘦せたくらいで調子に乗んなブタが! 伊藤君を馬鹿にしないで!」

「はいはい、あー怖いですねぇ」


 俺は杖を更に遠くに蹴飛ばし、ゴリッとコルトの銃身を北村の脳天に押し付ける。


「で? どうして俺の居場所が分かったの?」

「……それは……いうわけないでしょ、デブ」


 パアン! と俺は彼女の耳元に一発見舞う。


「言わないなら良いけどな。お前らが俺を何とも思わないように、俺もお前らの事は心底どうでも良い。虫けらを殺しても何も感じないだろ?」

「っっ!」


 北村の顔が青ざめた。ゲロるかな?


「……清川っているでしょ。アンタと同類のキモオタ。あいつのタレントが、人探しに使えるくらいに進化したのよ。一睡もさせずにシバいて訓練させても、こんなに時間かかったけどね」


 あいつか。同類でも別に仲良くないから、ああそうですかとしか感じない。問題は場所がバレたって事だろう。

 この一か月何ともなかったのは、ただ単に俺を探していただけか。困ったな。この街、結構好きだったのに。


「ねえ、ちゃんと知ってること全部話したからいいでしょ? 見逃してよ」

「……良いよ」


 俺は北村を解放する。彼女は杖を拾い上げ、去り際こちらを振り向く。


「でもアンタももう終わりよ。すぐに伊藤君たちがやってくるから。ボコボコにされなさいよ。泣いても謝っても許されないけどね!」


 捨て台詞を吐いて逃げていった。


『ご主人、見逃してよかったの?』

「流石に街中で事を起こすわけにもいかんだろ」


 でもまあ、覚悟は決まったかな。


「リア、迎え撃つぞ」

『――アハハ、そうだね。やっちゃおうか』


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ