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妄想異世界短編集

最強の男 2960年

作者: 王烈夏

「最強」と言ったとき、何を基準とするのか。


範囲は?

家庭内?町内?国?世界?


何が強いの?

魔法?格闘技?剣術?


「んな細けぇこたぁどぅでもいぃんだよ!」

という位に誰に聞いても「最強」と言われたら名前の挙がる男がいた。

その武勇伝は普及し始めた映像球により広まり、挑戦者が世界中から押し寄せたが誰一人勝てなかった。

しかも指先一つで倒していた為、「指王」と呼ばれ始めた。

が、本人が気に入らなくて怒り狂ったため広まらずに済んだ。男は勇者と呼ばれたかったのだ。

そんな最強の男も年老いることによる弱体化は避けられない。

勇者の末裔と噂され、本人も魔王を倒す為に生まれたと思っていた男は、肉体の衰えを感じた時に

「今、魔王が来たら勝てないのではないか。」

と不安になり、打開策を探す旅に出た。


先ずは四聖獣と呼ばれる超常の生き物に会いに行くことにした。

天竜、海竜、山亀、白虎、四方の守りの象徴として知られる実在の生き物だ。

一番簡単に会えるのは教会に居る白虎だ。

教会で教皇に四聖獣の話を聞き、白虎は信仰上の象徴であり、生物として超常の力は無いことを知る。

「三聖に会うにはどうしたら良い?」

「そうですな、天竜、海竜は教会の記録だと会えた人はいません。約二千年の記録の中でもです。遠くから見るしかない生き物ですね。残るは山亀で居場所は分かりますが、次に目覚めるのは恐らく五百年は先かと、千年周期で目覚めるとされていますから。」

「そうか。」

映像球で見ていた最強の男が項垂れる姿に教皇の胸が痛む。


「聖剣の話はご存知ですか?」

最強の男に役立つかもしれない話を思い出し教皇は尋ねた。

「いや、知らないが。」

古の時代、国中の男が抜こうと訪れた聖剣は、すでに忘れ去られていた。


「この教会の北の山の麓に広がる森の奥に朽ちた祠が有るといいます。そこには誰にも抜けない聖剣が有ると伝えられていますが、見た者は居ません。勇者しか抜くことができないと言われ、太古には国中の者が訪れたとされますが、勇者は現れず試す者も絶えたと、近くの村の伝承に残っています。」

(俺なら抜ける! いや、無理か?)


 男が一瞬見せた苦悩の表情に気付いた教皇は、上手くいかなくても落ち込まないように言葉を続けた。

「魔王についての神託が無い今、勇者の力も求められてはいませんから、勇者の素質が有っても魔王の顕現までは抜けないのかもしれませんが。」

「場所だけでも確認しに行きたい。その村までの案内をお願いできないか。」

男は頭を下げて頼んだ。


 森の奥、ではなく地下で祠は見つかった。男の必殺技が無ければ発掘はできなかっただろう。

そして、聖剣は抜けなかった。

「俺は勇者ではないのか、ただの指王か。最強の男と呼ばれ自分は勇者などと思い上がった愚か者なのか。」

男は暫く目を閉じて深く呼吸をした。

「魔王の顕現を待ち再訪してみよう。」

残された希望を胸に男は帰路に就いた。


 男が老衰で無くなるまで、魔王は顕現しなかった。

晩年に一人の孫を見たとき、男は涙を流し聖剣が有る祠の場所を伝えたという。

じじい強ぇぇ!

という場面は胸が熱くなりますね。

本作品にはありませんが。

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