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ヒョウとリン

「あたしと初めて会った頃の夢……ですか……?」


「ああ」



 うんと伸びをした。のびをしながら、リンを見つめる。


 リンは口元を両手で押さえ、恥ずかしそうな顔を隠していた。いや、隠せてないんだけどさ。


 何つうか、そんな顔を見せられると、俺はとんでもなく恥ずかしいことを言ったのではないか、と思ってしまうのだが、よ~っく考えてみると、やはりそんなことはなかった。


 リンは今年で十二になる。つまり現在十一。俺は二十二。リンは東尾とうびの女だけあって精神年齢が高いが、それでもやはりガキである。


 だから時々、俺じゃついていけないような、突飛なことを考えたりやらかしたりする。


 それで俺以外が巻き込まれることもしばしばある。


 まあ物凄く端的に言うと、アホなんだよな、こいつ。だからこいつのやることなすこと、真剣に考えるだけ損なのである。



「ふわぁ……あ~あ」



 伸ばしていた手を下ろし、ゴシゴシと目をかいた。

 今一度リンを見つめると、リンはどこか気落ちした顔を見せながら、視線を横に流していた。


 相変わらずコロコロと表情を変えるやつだ。

 一寸先では違う表情になってやがる。



「あの……兄様」


「ん~?」


「兄様の夢に出てきた昔のあたしは、その……」


「ん? あーすげえ感じ悪かったな」


「はわ!!」


「まああの時のお前は俺のことを敵と誤認してたわ――」


「わ、忘れてください!! あの時あたしが言ったことは!!」


「あたしが言ったこと?」


「いや、その……」



 視線を外しながら、誤魔化すリン。


 俺はそんなリンをジッと見つめて、今一度ノビをした。



「まあいいさ。俺だって、特に覚えてねえからな」


「……」



 俺は頭をガリガリとかきながら、立ち上がった。


 チラリと、リンを見つめる。


 リンは沈んだ顔で、床をジッと見つめている。


 覚えていてほしいのかほしくないのか、どっちなんだよ、こいつは。


 ったく。



「……リン」

 

「あ、はい!!」



 俺は面倒なことが嫌いだ。

 

 そんな俺がわざわざ『こんなこと』を言おうとしている。


 それはつまり――……。


 どういうことなんだろうな。わからん。



「その、なんだ、制服」


「制服……あ!! お取りした方が――」


「違う違う。そうじゃなくて」


「?」


「だ~か~ら~。その、制服……似合ってるぞって……」



 いつの間にか視線を外してしまった目を、今一度リンに向けた。


 リンは口元を手で隠していた。


 だからその反応やめろっつうに。


 言ってるこっちが恥ずかしくなってくる。


 そんな俺の想いが通じたのか、リンは口元から手を離し、くすぐったそうな顔で、笑った。



「はい!! ありがとうございます。兄様」



 頭をガリガリとかいた。


 こいつの近くにいると、心が引っかき回されていけない。


 いや、引きずり回されて、という言い方の方が近いかもしれない。


 いや、どっちでもいいな、こんなこと。



「ふわ~」


 

 俺は壁にかけてある、北頭ほくとうの、王立魔術師学園の制服を手に取った。

 俺は今年二十二になる。そんな俺が、何だって今更学園に通わなきゃいかんねんというと、それには理由がある。


 それは――




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