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Episode 8 第1目標

「父さん、俺しばらく草刈りするよ」

帰宅後そう言って家族全員から頭おかしいという目で見られたのは反省しかないが俺なりに考えた結果だ。

「今日色んな場所を見た結果なんだけど……昔に比べて本気で人がいない」

「だから過疎なんだって言ってるじゃない」

妹の美緒はそう突っ掛かってくるが気にするだけ無駄だ。

「人に言われた事と自分で見るのではやはり印象が違うからね」

俺は過疎と聞いて人が本当にいないと錯覚していた……しかし、過疎とは少なくなっているだけで人の生活が確かに存在していたのだ。

「今日俺は病院に言って子供たちに会って、山下さんとも話をした。でも過疎化しているって口では言っても昔と同じなんだなって思った」

「恵吾、お前は昔と同じだと思ったのはどんなところだ?」

父さんが聞いてくる。

「歳取ったけど知ってる顔がいて、役場がどうのって文句言いながら何か出来ないかって山下さんがうろうろしてたり、そんな人たちに家族がちゃんといるって事だね」

「当たり前だけど当たり前じゃないのよね。ずっと住んでたら見えなくなっちゃうのよ」

美緒は何か思うところがあるのか、うんうんと頷いている。


「そう言えば恵吾、今日は何をしに病院に行ったんだ?」

父さんが聞く、

「役場で晃に会ったんだ。それで娘さんの事を聞いて」

「晃ちゃんに会ったの?元気してた?大人になってお話する機会がとんと無くてねぇ」

「母さん……」

母さんは懐かしい名前を聞いておしゃべりモードに入ったようだが父さんが静止してくれた。

「晃ちゃんの娘さんがどうしたんだ?」

どうやら家族は晃の娘の病気を知らないようだ。

「一年くらい前から入院してたんだって」

「入院!?大変な病気なの?」

美緒は心配そうに聞くが……。

「多分そのうち退院するんじゃないかな」

退院するのは子供たち全員ですけどね……多分全員だよね?

「おい恵吾、お前なんかやらかしたんじゃないのか?」

父さんは何かを悟ったように言う。

「イエ、ナニモシテマセンヨ?」

あまりにも的確に何かを察してそうな父さんに挙動不審になってしまう。

「あんまり馬鹿なマネはするなよ」

多少手遅れとは思いながらも父さんの刺した釘は俺の暴走を多分……いや少しは思い留まる事だろう。


「それで結局なんで草刈りに辿り着いたんだ?」

「それは山下さんみたいに人手に無くて放置されてる土地は山程あるんだろ。それが片付くだけで町が明るくなるんじゃない?」

そう単純な話なのだ。

「金にならんぞ」

「どうせ死んだやつを雇ってくれる会社は無いし、異世界では工兵してたからなぁ……草や木を刈って拠点を建てる。そして畑して鍛冶して薬作って家建てて……」

「要するに工兵なんて言ってるけど使いっ走りじゃん」

そうとも言うが……泣いて良いか?

「因みに剣も槍も弓矢も訓練したからな」

実戦もあったが家族に語るつもりは無い。

「訓練だけじゃん」

そう笑う家族の姿に少しだけほっとする。

「取り敢えず何をするにしても町の外観は必須だろ。取り敢えず金になるかは別として人に貢献して協力の得やすい環境を作る!実績のない人間には誰も協力してくれないというのは思い知った」

「お前がそう思うならやってみなさい、ただし困ったらちゃんと相談しなさい」

と父さんが言うと、

「恵吾、お前は金が無かろう。儂と婆さんのへそくりだ、少ないが持っていけ」

と祖父が使い古びた黒いハンドバッグを投げて渡してくる。

「へそくりって爺さん……は?」

中を見て俺は声が裏返った。

「お兄ちゃん?」

美緒がバッグの中身を覗こうとするが、それをそっと手で塞ぎ遮る。

そして正座をし、祖父母へと向き直り言った。

「少しの間お借りします」

深々と頭を下げると爺さんは大笑いするのであった。

「返せなんざ言ってないわ、じゃが人様の為に働こうと決めたなら腹に一本筋の通った信念を持ちなさい。金や世間様の声で物事を決めず、その人たちの事だけを思ってやるんじゃ」

鞄の中に入ってあったのは現金で4百万円、夢咲家は決して金銭的に裕福な家庭ではない。

なのに、それだけの大金を渡したという事は何か思う事があるという事だと思う。

「目標は1か月で町制覇だな」

「少しは自重も覚えてくれ……」

張り切る俺に頭の痛そうな父であった。



昨日の事です。

庭に蛍がいたので保護して草むらに帰そうとしたら、蛍を持つ反対の手の平の中にトンボが飛び込んできて、蛍が朝防虫剤をまいた花壇の中に……御愁傷さまです(見付かりませんでした)

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