Episode3 家族の現状
週3〜4回更新していけたらと懐います
「俺の話はこれくらいで置いといて皆んなはどうしてたんだ?」
俺は家族の事も知りたく聞いてみると全員が微妙な顔をしていた。
「美緒はバツイチよ、今は近所に住んでて保育園で保母してるわ」
「ちょっとお母さん、なんでわたしからなの!」
と妹は母に噛みつく……あぁ、妹は美緒という。
「お母さんは10キロぐらい肥りました」
「ちょっと美緒!あんた何を言い出すの!」
太ったのは聞かなくても分かるからスルーして父へと向き直る。
「仕事の調子は?」
祖父と父は代々持っている土地で白桃の栽培農業をしていたはずだが、
「爺さんが歳で身体が動かなくなって引退してオレも若くない……若い働き手もいないし、卸先もどんどん店を閉めていって赤字だな」
「働き手がいなくて店が減ってる?」
「お前がいなくなってからの10年は特に酷い高齢者社会だった……しかしな、ある時期を境に年寄りも減ったかわりに子供も減った」
減ったって……?
「人はいつか死ぬ、それは仕方ない。しかし仕事がない田舎では家庭が作れないし、子供が産めないのは分かるだろう」
「わたしも元旦那に仕事がなくて生活出来なくなって離婚したのよ」
どうやら異世界に行っているあいだに俺の故郷は深刻な過疎化が進んでいたようだ。
「じゃあ畑や田んぼなんかも?」
「管理出来なくて草だらけで放りっぱなしの土地が多いな」
農業には人の力が不可欠なので仕方がない。
「情勢が情勢だけに国も放置した農耕地にかかる税金の免除なんかで対応してるが焼け石に水だな」
「そんなに酷いのか?じゃあ、そんな農耕地を借りたいっていうのは可能?」
「草刈りしてくれるなら無料で使ってくれっていうところも多いくらいだからな」
ピンチはチャンスである。
「じゃあ、草刈りくらいはするから借りられるよう持ち主を教えてよ」
ここは地元に顔のきく父に頼るのが早いだろう。
「お兄ちゃん農業やるの?」
「農業もやるって感じかな?これから仕事して故郷に恩返し出来るって年齢で異世界に行ってたから、それを活かして何か事業でも起こしてみるさ」
兄貴らしく妹の前で格好つけてそう啖呵をきる。
しかし……、
「恵吾、お前は死んだ事になってるんだから役場に行って説明が先だからな」
祖父の指摘に俺は結局格好つかないまま沈黙するのだった。