Episode 13 勇者のお仕事
「仕方がない……匿ってやろう」
結局のところ根負けして勇者こと田中太郎の身柄を匿う事にした俺。
「本当ですか!マジ恩に着ます」
「ただし仕事は手伝って貰うし給料は出ないぞ」
飯くらいは食べさせないといけないし、寝床くらいは用意しないといけないだろう。
「給料出ないってどんだけブラックですか!」
「安心しろ、俺も無給だから」
「わがまま言ってスミマセン」
そもそも警察に追われているかもしれない勇者を側に置いておくだけで問題はあるのだから。
「それでは山田太郎くん、君は何が出来るのかな?」
「戦闘は剣があればそこそこと、雷に乗って高速移動出来ます」
こいつ正気か?
「剣で戦う必要は無いし、雷で移動は禁止だ!逃亡者が目立つような事するな」
「オレの最大のアピールポイントが……」
「他に何かないのか?」
勇者は自分の特技を考え込む。
「…………勇者なのに」
「哀れな感じで見ないで下さいよ!」
「このままじゃ哀れなんだよ!他に何か特技無いのか?」
「酷い!本当をなんにも無いですよ!」
本当に何の作業をさせようかと悩む。
「こいつに刃物渡すのはちょっと危ないし」
「人に向かって振り回したりしませんよ!?」
人を車の窓に突き刺す奴を信用なんか出来ません。
「運搬も魔法で収納すれば困らないし」
「えっ?夢咲さん収納の魔法あるんですか!オレは神に取り上げられましたよ!?」
流石に異世界で馬鹿の名を欲しいままにした借金のある勇者は強盗する未来しか見えない。
「向こうの装備や道具が持ち帰れなかったのが痛いですよね」
「俺は収納魔法の中にあったから持ち帰っているから問題無いぞ」
「夢咲さん、オレに剣と魔法の鞄を下さい!」
「却下!」
魔法の鞄はたくさんの物が入る移動式のコンテナだ。
収納魔法と違って収納に制限はあるが鞄の口に入る大きさなら1つの鞄にコンテナと同じくらい収納出来るのだ。
「更生したら魔法の鞄は考えなくもない」
「じゃあ、給料代わりに何か下さい」
「宝石や金なんかはあるがどちらも取り引きが難しいから」
それなり以上の宝石は出どころを怪しまれるし、金も量が出てくると出どころを探られる可能性があるのだ。
「オレが金借りてたところなら何とかしてくれるかも知れないですけど……」
「完全に闇取り引きだしお前は車にそこの人を突き刺して逃げて来たんだろ、戻れるのか?」
「戻ったら何されるか分かりません」
勇者の方が明らかに強いのだが心の奥底まで勝てない相手という意識が刷り込まれているのだろう……金貸しの安全の為に自分の方が実は強いという事実には気付かないで欲しいものだ。
「それで何の仕事頼もうかなぁ……」
これは何度でも同じ話に戻ってくるパターンかななんて思っていると天啓を授かるような一言を勇者が呟いた。
「雷も剣も使えないならオレなんて電気と炎に耐性のあるタダの馬鹿力じゃないですか」
「ん?電気と炎の耐性?」
「あっ、オレは雷くらいじゃあ感電してダメージ受けないんですよ」
雷くらいってそれ以上の電撃は普通に起こらないだろ……。
「いやそっちじゃなくて炎の方ね」
「あぁ、オレって炎の中にいても熱いとか無いんですよ」
こいつ人間やめてるとか言うと自分にも返ってくるから止めておこう……自制大事!
「決めた!田中くんには大量にある木を炭にして貰おう」
「分かりました!消し炭にすれば良いんですね」
「灰になるだろ!売り物だよ!廃棄物を商品にするんだ」
こうして俺は無料の従業員を手にしたのであった。
後悔?……もうしてるよ。
勇者も働かないとご飯食べていけません




