Episode 12 ヒーロー参上!?
暑くてグロッキーになってました。
しかし猛暑の草刈りは続く……物語みたいに草刈り楽に出来たらなぁ
俺はあいも変わらず木を切り草を刈る生活をしていた。
「暑くなって来たなあ……」
空を見上げると雲も僅かで綺麗な青空が広がっている。
「雲はあんなにも美味しそうなのに何故食べられないのか」
馬鹿な事を呟いていると晴天の山中には相応しくない妙な音が鳴り響いてくる。
ピシャン……ピシャン……ピシャン……
「雷の音?晴れてるのに……ってか、なんで近付いて来て……」
なんて言っているうちに音がはどんどん俺の方に向かってきて目の間の木に落ちる。
「ぴぎゃふ!?」
全身が雷で痺れ作業服がズタズタに焼き切れる。
「勇者参上!」
落雷と共に焼けた木の中から現れたのは異世界で何度か会った勇者であった。
「何をしに来たんだ、勇者」
「共に悪と戦った仲では無いか、ただ会いに来て何か不都合があるかい?」
「不都合なのでお引き取り下さい」
「酷くない!?」
この勇者、何を隠そう真正の馬鹿で異世界にその名を轟かせた男なのだ。
「というかどうやって俺を見付けた?」
「それは勇者の力さ!勇者は悪を見付ける為に索敵能力にあるのさ」
また迷惑な能力を……あの神は自重の知らないのか?
「さっきの雷は?」
「雷に乗って高速移動できる能力さ」
なんで移動くらい静かに出来ない?
「よく見ると何だその格好……」
全身真っ黒のライダースーツみたいなものだけを着ている。
「これは向こうを世界で雷獣を倒してその皮で作った装備で、電撃を無効出来る」
だから俺の作業服は酷い有り様で勇者は無事なのか……よし、ぶん殴る。
「作業服の代金2万円請求しとくね、名前と住所教えて」
「名前は田中太郎で住所は……」
田中太郎って……。
「偽名は要らん!」
「本名だよ!」
勇者田中太郎……こいつも苦労してるのか……。
「っていうか夢咲さん、助けて下さい!」
「助けるのは勇者じゃないのか?」
「オレ、借金取りに追われてるんすよ」
勇者終了のお知らせです。
「こっちに帰って来たら借金が膨らんでて億単位になってて」
完全に闇金やないかい!
「借金取りを突き飛ばしたら近くのベンツの窓にその男突き刺さって」
はい傷害罪です。
「通りすがりの警察官もパニックになってベンツに突き刺さしちゃって」
こいつ本気で勇者してたのか?
「逃げようとしたら自動販売機にぶつかって穴をあけちゃったんすよ」
なんで俺がどうにか出来ると思ったんだ?
「残念ながら俺は社会的には死んだ事になってるから手助けは出来ないな」
「死んだ事になってる?」
「ほら俺たち15年行方不明になった事になってるだろ?」
「嫌だなぁ、オレたちが向こうに行ってたのは5年ですよ」
おかしい……経過した時間にズレがある。
「そう言えば神が戻る時間ズレるかもって言ってたかも」
「あの神のせいか!」
「それ皆に伝えてって言われたけど伝えましたっけ?」
「お前のせいか!」
流石に思いきりぶん殴った。
「取り敢えずここに埋めとくので勝手に育って下さい」
「遺棄しないでっ!」
穴を掘ろうとする俺を見て怯える勇者。
「せめて勇者の剣さえあれば……」
「日本でお前は何をする気だ」
こいつは本気で無事に逃がしてはいけない気がした。
「せめて匿って下さいませんか?」
「分かった、すぐ穴を掘るから待ってろ」
「だから遺棄しないで下さいってば!」
勇者はどうしてやろうかな……。




