五 婚約の保留
執事のハモンドがシシイノ族の首領に書簡を送り、王様の意見を聞き調整出来た
とアリエ姫の処に来た時には三カ月が経っていた。
「アリエ様、調整できました」
「ご苦労様でした。随分掛かりましたね?」
「えー シシイノ族の首領は快く承諾してくれたのですが、シーラン様が
乗り気でなく、今まで掛かってしまいました」
「で、如何するのですか?」
「はい、お互いの中間地点で出会えばと決まりました」
「中間地点とは何処ですか?」
「ハチトウシン村です」
「えー あの醜男、醜女の塊の村でしょう。他にはないのですか?」
「丁度、真中で舞台もアリエ様が宿泊する施設もありまして、それにシーラン様
のお母上がその村の出身だそうです」
「えー 美人のシーランの母上が醜い村の出身なんて不思議ですね」
アリエ姫は自分でシーランの美しさを確認してクライス卿の事は諦めようと決めた。
しかし三等身のクライス卿の美しい体、禿げ散らかした頭と牙のように飛び出た
頬骨を思い出すと諦めることに胸が痛くなった。
それからクライス卿と婿候補の二人から婚約を保留にして欲しいと王様に
申し出があった。
「ハモンド、婚約破棄では無く保留とは如何いうことですか?」
「シーラン様と結婚出来るのは一人です。残りの二人はアリエ様との結婚と
二又を掛けているのです」
「まあー なんて抜け目のない殿方でしょう」
アリエ姫は自由に大らかに育てられたので怒るとか嫉妬する感情はなかった。
「アリエ様、それに不思議に思うことがあります。シシイノ族の首領も醜男で
母上もハチトウシン村の出身で醜女です。その子供があれほどの美人とは?
それとシシイノ族とハチトウシン村はルーツが同じだそうです」
「そうですか? 突然変異と言うこともありますから」
「アリエ様、クライス卿の領地の中にシシイノ族が暮らしているので、クライス卿
とシーラン様が結婚できればとシシイノ族の首領が企んだかもしれません」
「ハモンド、もう良いわ。私はシーランに会って見たいだけ」
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