決意
精子
それはほぼ全ての生物が授精に使うものである。
快楽のために性行為をするのは人間とイルカだけであるが、その実態はまだ多くが謎である。
最近でも多くの科学者たちが研究を進め新事実が明らかになっている。それはこれから先の未来でも同様であり、色々なことに利用されていくだろう。
人間は相手がいたとしてもそれを外にだすことが多々ある。それは非常に勿体ない事でありながらも、私もそう言ったプレイは嫌いじゃないので強く反論もできない。しかし、精子は可哀想である。
まあ、この話は置いとくとしてこれは、そんな1つの精子の御話である!
「やあ、皆、誕生おめでとう!」その声と共に僕は覚醒した。
「君達はある人間の精子としてこの世界にたんじょうした。だが世界は時に残酷であり、この中でも生き残れる数は0かもしれない。だから君達には、生き残り遺伝子を残せるようにするため訓練を受けてもらう。」
どうやら今、偉そうに説明したやつはここで教官的なことをしているらしい。
そいつの話を聞くには僕は今金玉と呼ばれる内臓の中にいるらしい。僕達は毎日約1億もの数が作り出される中の1つらしい。
それなのに、何故あいつはあんなにエラソーなのか疑問に思いながらもそいつの言うことに従うことにする。
泳ぎの練習をするらしい。
教官?の話によれば精子の泳ぎは人間とは大きく異なるらしい。人間は手や足で水をかいたりして泳ぐが、精子は回転しながら、しかも、周りの別の精子の泳ぐ速度をあげるように泳ぐらしい。
何故、こいつはこんなに物を知っているのだろうか。僕達、数億分の1にはわからないことなのかも知れない。
そんなこんなで泳ぎの練習を始めた。僕はすぐにコツを掴み、上手い具合に泳げるようになった。
「お前、泳ぐの上手いな。俺に教えてくれよ。」そんな具合で呼び掛けてくるやつがいた。気前のいいやつだった。今僕が思った多くの疑問(多くは教官?に関してだが)をそいつと話した後、少し泳ぎを教えた。すると、すぐに上達し礼を言って去っていった。
そいつの様に少し苦戦してる奴もいたが、それもすぐに上達していった。まあ、精子として生まれたのだから当然とも言えるな。
そんな感じで泳げるようになった僕達は、先程の話よりももっと大切な話を聞かされることになった。まあ、講義だな。
腟内に入らないと精子の役割を果たせないといったことだった。
人間の雄は性欲処理のために精子を噴出する。それを此処では波と呼んでいるらしい。金玉の中にはそれが本番なのか、性欲処理なのかわかるようになっているようだ。大きなサイレンが鳴り、赤いランプが点滅するらしい。こっちの現状を知っていたら、人間も少しは自家発電をやめてくれそうなものだな。
何故、講義よりも先に実技の練習をしたのか少し疑問に思ったが、どうやらすぐに波が来る可能性もあるらしく、それに対抗、または卵子までたどりつくためだそうだ。
それはさて置き、波で出てしまったら、負けだ。二度と金玉には戻れず、死んでしまう。
「僕は死にたくない。ちゃんと、授精し人間として生きたい。」そう思った。先程の教官は、波を何回も生き延びているから偉いんだそーだ。
そんな矢先、すぐに一回目の波がきた。
「「「「「「「うわーーーーー!」」」」」」
「「「「「「「「「助けてーーーー!」」」」」」」」」
多くの精子達の悲鳴とサイレンの音が聞こえてくる。上方向に強力な引力が働いてる感じで、凄い勢いで波が襲ってきている。本当に波のようだ。まあ、本当の波がどんなものか知らないのだが。
僕はその波から逃れられる場所を偶然見つけたため無事だった。だが、さっき話しかけてきたやつの姿はなかった。良い奴だった。こんなにも速く初めての友達?を失うことになるとは思いもしなかった。
波の後の金玉の中は酷いものだった。かなりの数の仲間達が消え去っている。教官は生きていたようで声を張り上げる。
「また、約3億の仲間を失ってしまった。だが私達は彼等の果たせられなかった思いと共に生きていかなければならない。彼等の思いを無駄にしないように我々だけでも、精子としての役割を果たそうではないか!」
僕は授精への気持ちがより高まった。
「絶対に授精してやる。そして、人間として生をさずかり、楽しく人生を満喫するんだ!」
僕が授精を決心した瞬間であった。
この作品はある作品の前日談です。
ぜひそちらもお読みください。作者か、戸田悠馬からみられると思います。
ありがとうございました。