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プロローグ

フカフカとした、手触りの良い感覚に段々と意識が戻ってきた私は、未だ眠たい頭のまま、ふるりと目を開けた。


私の視界の先、白い天井は驚くほどに高く。

明らかに、ここは私の部屋ではなかった。

そして私の実家の部屋でも、ましてや友人の家の寝室風景でもなく。

明らかに、ここはいわゆる高級ホテルの一室だった。


どうして自分がこんな、身分違いの場所にいるのかも分からず未だ覚醒しきっていない頭で昨夜の記憶を辿ろうとした、その時。


「え……」

私はそれに気づくと、冷や水を頭から被ったかのように一瞬にして意識が覚醒した。


フワフワと体の上に被さるすべすべとした手触りの良い布団の中。その中で、私は下着一つ身に付けておらず。そして身体に意識を向けると先ほどまでは感じなかった鈍痛が、下腹部と主に腰に襲ってきた。

それは、つまり。



私がこの高級ホテルの一室で、誰かと性行為をした事の表れでもあった。しかし、そのお相手になるのだろう男は隣には寝ておらず。私は誰とシたのかも覚えていない。必死に、昨夜の記憶を思い出そうとするけれど。確か昨夜は一人行きつけのバーでお酒を飲んでいて、そして今日が来る事を呪いながら水でも飲むかのように、身体に度数の高いお酒ばかりを流し込んでいた……筈だ。でも、それからの記憶が一切ない。マスターと、カウンター越しに話をしながら段々眠くなってきて……そしてそこで私の視界はブラックアウトした。それからの記憶がひどく曖昧で、自分が何を口にしたのか、何をしたのか、誰とそんな展開になったのか、何一つ覚えてなくて。


ただただ漠然とした不安だけが胸を過ぎる私は、身体を起き上がらせると改めて自分今いる、この部屋をぐるりと見渡した。けれどもこの部屋の何を見ても、どこを見ても自分の中の記憶と結びつく気配は一切なく。分不相応な、高級感溢れる調度品ひとつ一つに目眩を覚えるだけだった。


ただ、きっと昨日のままなのだろう明らかに女物の衣服が扉からこのベッドに向けて投げ捨てられている。その服達だけは私に見覚えがあった。と、いうよりも見間違えるはずもない。それらは昨日私が着ていた服そのものなんだから。

そして、また同じように部屋中に男物の服も散乱していた。


多分、これは。

私は昨夜あのバーで飲んだ後どういう経緯かは分からないけれど誰かにお持ち帰りされてそのまま美味しくいただかれて。そして、この高級ホテルの一室でその男と一夜を過ごしたと、そういう事なんだろう。己の余りの軽率さに頭を抱えたい気持ちが湧き上がるけれど、私はその時はた、と動きを止めた。



小さくだが、聞こえてくるのは誰かのシャワーを浴びるザァァァという音で。つまり、私の性行為のお相手がすぐそこでシャワーを浴びている最中という事だ。


それに気付いた瞬間。私はなるべく音を立てないよう、だが出来る限り速やかに寝心地の良いベッドから抜け出すと部屋中に散らばる自分の部屋をかき集めた。



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