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光の剣と村人Aの冒険

作者: 中野改人

むかしむかし とある平和の王国に 村人Aという

なんのとりえもない みすぼらしい 若者が 住んでいました。

村人Aは 毎日毎日 退屈な日々を 過ごしていましたが、

ある日 恐ろしいことが おこりました。


なんと 平和の国の お姫様が 大魔王に さらわれてしまったのです。


国中の 人々が 大騒ぎしていましたが

村人Aは ひとりだけ わくわく していました。


「光の剣を 使って 大魔王を 倒した者は 姫と 結婚させよう」


という 王様の お触れが 出たからです。


光の剣とは 平和の国の お城の 秘密の部屋の 土台に 刺さっている

選ばれた者だけが 引き抜けると 言い伝えられている

誰も 見たことも 聞いたことも ないような 伝説の剣です。


村人Aは さっそく 光の剣を 引き抜くために お城に 向かいました


光の剣が 刺さっている 秘密の部屋の 前には

われこそは 光の剣を 引き抜いてやろう という 人々の

長い長い 行列が できていました。

村人Aも 列に並んで 順番を 待ちますが、

村人Aの 前に 並んでいた 人々は

誰も 光の剣を 引き抜くことが できません。


いよいよ 村人Aの 順番です。


村人Aは こんしんの 力を込めて 

光の剣を 引き抜こうとしましたが 

光の剣は びくともしません。


けっきょく 村人Aは 光の剣を 引き抜くことが できませんでした。


村人Aは がっかりして しまいました。

けれども 村人Aは あきらめないで 考えます。


「平和の国の 光の剣は 僕には 使えなかったけれど

 もしかしたら 世界の どこかに 僕にも 使える

 光の剣が あるかもしれない」


村人Aは 旅に 出ます。


海を 渡り 広い広い砂漠を 越えたり 溶岩のにえたぎる洞窟を

探検したり しました。

旅の 途中で 光の剣と よく似た剣を 何本も 見つけましたが

そのどれも 村人Aに 使うことは できませんでした。



世界中をめぐる 旅を 終えた 村人Aは 

また がっかりしてしまいました。

けれども 村人Aは あきらめないで 考えます。


「世界の どこにも 僕に 使える 光の剣が 無いのなら

 自分が 使える 光の剣を 自分で 作れば いいんだ!」


村人Aは 世界中を 旅して 手に入れた 

美しい宝石や 恐ろしい怪物の爪や牙を 使って 

光の剣を 作ります。


何度も 何度も 失敗しましたが 村人Aは あきらめません。


そして とうとう 自分だけの 光の剣が できたのです。


自分で 作った 光の剣を 持って 村人Aは

お姫様を さらった 大魔王の 城へと 向かいます。


大魔王の 城は 誰もいない 暗くて さびれた所でした。

村人Aが おそるおそる 進んでいくと

ぼろぼろの 広間に 真っ黒な服を 着た 男の 

ぽつんと 立っている 後ろ姿が 見えました。

どうやら あの男が 大魔王の ようです。  


村人Aは 勇気を ふりしぼり 光の剣を 抜いて 言いました。


「お姫様を 助けに来たぞ! 覚悟しろ!」


大魔王は ふり返ると ぎょろりとした目で 村人Aを にらみつけ

大きくて おどろおどろしい 形をした 剣を 取り出しました。


「姫は 絶対に 渡すものか!」


村人Aと 大魔王は 戦いました。

大魔王の 大きな剣と 村人Aの 光の剣が 打ち合うたびに

村人Aは まるで 自分の腕が 蛇に かまれたように

熱くしびれているように 感じました。

それでも 村人Aは 振りかざされる 大きな剣を

かいくぐって なんとか 大魔王の胸に 光の剣を 突き立てました。


「ぐわあーー!!」


大魔王は 苦しそうな 叫びとともに 倒れました。








村人Aが うす暗い 地下の 牢の扉を 開けると 

そこには お姫様が いました。

村人Aは 思わず 息を のみました。


吸い込まれそうな 深い海のような 大きな瞳に

月明かりに 照らされた カーテンのような 白い肌

ゆるく 波打つ金色の髪は 太陽の下に 出れば

きらきらと 輝きそうです。

村人Aは その姿を 見ているだけで

今までの 道のりで 大変だった 思い出が 

すべて 何処かに 飛んで行ってしまうような 気持ちに なりました。

それほどに お姫様は それはそれは 美しい人でした。


「君を 助けに 来たんだ。

 もう 心配は いらないよ!」


村人Aが 手を 差し出すと 

お姫様は おびえたように 下を 向きました。


村人Aは 少し 戸惑いましたが


「とにかく ここから 出よう

 平和の国に 帰ろう!」


そう言って お姫様と 一緒に 平和の国へ 向かいました。


帰り道 村人Aは お姫様に 今までにあった

色んな できごとを 話しました。


王様の お触れが 出たこと。


光の剣を 抜こうとしたけど だめだったこと。


世界中を 旅したこと。


自分で 自分の 光の剣を 作ったこと。


でも お姫様は 一緒に 歩きながら 

村人Aが 何を 話しても 下を 向いたまま。

どこかで 一休み する?

何か 食べたいものは ある?

何を 聞いても お姫様は 黙ったままです。


やがて 村人Aも 何を 話せば いいのか わからなくなって

ふと 言いました。


「君みたいな きれいな人と 結婚できるなんて 嬉しいなあ」


すると その一言を 聞いた お姫様は 

並んで 歩いていた 村人Aの 前に ざっと 歩み出ると

はじめて 村人Aと 目と目を 合わせました。

しかし その顔は 今にも泣きだしそうな 

怒っているような 顔だったのです。


「冗談 言わないで! 私は あなたみたいな みすぼらしい人と

 結婚なんて したくないわ!」


突然 お姫様が 大きな声を 出すので

村人Aは びっくりしてしまいました。


「え・・・ だって 王様が 言ったんだよ。

 光の剣で 大魔王を倒して 君を 助け出したら

 結婚させてくれるって」


「パパの 言ったことを 本気に してるの?

 大体 あなたが 持ってる その剣は 

 自分で 作った ニセモノ じゃないの!

 光の剣 なんかじゃないわ!」


村人Aは 何も 言うことが 出来なくなって しまいました。 

自分で 作った 光の剣は 

平和の国の 光の剣とは 違うんだと

その時 はじめて 気づいてしまったからです。


それでも 村人Aは もしかしたら お姫様の 気持ちも

変わってくれるかもしれないと 信じて 平和の国へ 

お姫様を 連れて帰ります。




さらわれたお姫様が 帰ってきて 平和の国は 

大変な 大さわぎに なりました。  

国中の 人々が 無事に 帰ってきた お姫様を 

ひと目 見ようと 王様の お城に 集まりました。

王様と たくさんの 人々の 前で

村人Aは 今までのことを 話します。


光の剣は 抜けなかったけれど 大魔王を 倒したという

村人Aの 言葉に 王様も 耳を 疑いました。

その場に いた 大臣や 兵士たちも 

村人Aを お姫様と 結婚させて いいのか

ああだ こうだと 相談を はじめます。


「待って!」


お姫様の 透きとおる声が 

王様の 広間に 響きました。


「その男は 大魔王が 化けて いるのよ!

 私と 結婚して この国を 乗っ取る つもりなんだわ!」


その場にいた みんな そうだったのかと 信じてしまいました。


「まあ なんて 恐ろしいの!」


「大魔王め! この国から 出て行け!」


みんなが 口々に 言いました。


「そんな・・・ 違うよ! 僕は 大魔王なんかじゃない!」


誰も 村人Aの 言葉に 耳を 貸しません。


その時です。


「勇者様だ! 勇者様が お見えに なったぞ!」


遠くで 誰かが 叫んだのが 聞こえました。

すると 城の 入口の方から ピカピカの 鎧を 身に着けた

勇者と 呼ばれた 男が マントを ひらひらと たなびかせ

村人Aが 引き抜くことが できなかった あの光の剣を

手に 持って 堂々と 歩いてきました。


勇者は 村人Aが 世界中を 旅して 自分で 光の剣を 作り

大魔王と 戦っている間に

村人A 抜くことが 出来なかった 平和の国の 光の剣を 抜き

数えきれないほどの 人々に 信頼されていました。


王様の 広間で みんな 口を そろえて 言いました。


「勇者様 どうか 大魔王を 倒して下さい」


勇者は 言わるがままに 村人Aに 光の剣を 向けて

斬りかかってきました。

村人Aが 自分で 作った 光の剣は とても 立派な剣でしたが

勇者の 光の剣は それよりずっと 大きな力を持った剣でした。


村人Aの 光の剣と 勇者の 光の剣が 

打ち合うと 村人Aの 光の剣は またたく間に

叩き折られてしまいました。


村人Aは どうすることも できなくなって

命からがら 平和の国から 逃げ出しました。








やがて 長い長い 時が経ちました。

村人Aと戦った勇者と 平和の国のお姫様は

結婚して 幸せに 暮らして いるらしいと

風のウワサで 聞きました。


村人Aは がっかりしましたが


「お姫様が 幸せに なったのなら それで いいや」


と思って あきらめることに しました。


折られてしまった光の剣は もっと 強い剣に 作り直しました。

毎日 剣の練習も 欠かしません。

村人Aは また旅に出ます。

今度は 自分と 結婚してくれる お姫様を 探す旅です。

時々 どこかの国の 勇敢な戦士や 兵隊たちが

村人Aを 倒すために やってきましたが、

もう村人Aは 負けることはありません。


村人Aが 作り直した 新しい光の剣は

立ちはだかるもの 邪魔するものを

次から次へと なぎ払っていきました。


こうして 村人Aは 本当に 世界中から

大魔王と 呼ばれるようになり

大魔王を 倒すことのできる 平和の国の 光の剣の伝説は

いつまでも いつまでも 末永く 語りつがれることになるのでした。


めでたし めでたし。

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