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神守君とゆかいなヤンデレ娘達  作者: 田布施 月雄
第1章 お願いだから喧嘩しないで! 
8/63

最終話 お願いだから、僕を殺さないで!

 悪夢のような文化祭が終了し、帰宅後。


 「・・・で、なんでアンタがうちにいるのよ」


 美子が白い目で、うちのソファーにふんぞり返る眞智子に向かって文句言う。

 「いいじゃん。だって、今から劇のビデオの鑑賞会やるんだから」

 「・・・やめて。あれは悪夢以外なんでもないから」

 美子が項垂れ魂が抜けかけている。

 「あの後、大変だったなぁ・・・」

 眞智子が遠くを見つめて言葉が止まった。



 舞台を2時間ほど前に遡る。



 劇の後、正確には文化祭終了後。クラスに残され、文化祭実行委員でもある生徒会長豊田松太に問い詰められていた。

 「そもそも君たちのクラスは映画じゃなかったのかね」

 生徒会長を目の前にしてクラス委員長の眞智子と副委員長の僕が質問を受ける。

 「映画できているんですが・・・見ます?」

 「ほぉう・・・」

 豊田会長は黒縁眼鏡をピクリと動かし、差し出した携帯用DVDプレーヤーに入っている惨劇のビデオを確認した。

 「フム、これは確かにだせないなぁ。それにしても、君たち脳みそぶちまかれて良く生きているな。さすが小野乃医院だ」

 そんなわけねえだろ。これはCGだ。

 眞智子と僕は引きつった笑みを浮かべるしかなかった。

 「おっと失礼、これは自分なりのジョークだったつもりだが失笑を買ってしまったようだね。それにしてよくこんな惨劇を考えたモノだ」

 「いや、それはでしてね・・・」

 被害者であり加害者である眞智子が言葉を濁す。

 「それで劇になったわけだと。急遽体育館を貸してくれというから変だなとは思っていた。それにしても、あの劇も話が段々変な方向になってきたようだな」

 「あはは・・・それは色々ありましてね・・・」

 確かに色々ありましたよね、眞智子さん。

 眞智子はあはは・・・と愛想笑いをしてその場を取り繕っている。

 「これらを滅茶苦茶にしたのは誰だ?」

 

 「はい、隣のクラスの地端さんです」


 あっ、眞智子。佐那美をあっさり売った・・・

 「地端だと?あの熱血演説した?」

 「私達にもその責はありますが、そもそも彼女がうちのクラスの出し物に、勝手に名乗り出てやりたい放題やりました」

 「あの演劇もそうかね・・・」

 「ハイ」

 嘘つけ!!眞智子が企画してアドリブ入れたのお前だろ!!

 「そうか。やはり熱血だけ信じていても、その考え方や手配の仕方まで考えないといけないな」

 「はい。反省します。劇については最終的に私がやってしまったことですから」

 ・・・とか言っちゃっているけど、眞智子のことだから反省はしていないだろう。あえて自分にも非がある事を強調してその背後にある佐那美にはもっと非があると仕向けたいのだろう。

 元を正せばそうだ。佐那美が暴走しなければそうならなかった。

 では、僕も眞智子にならってそうするとしよう。

 「そ、それをいうなら僕だって止めなかった。副委員長である僕にも責任あります」

 クラスの皆がジッと下を向いて黙っていたが、マサやんが

 「それをいうなら、僕も同罪です。実行委員ですから」

と名乗りを上げると、他のクラスの連中も

 「私達、彼らに丸投げしていた。だから責められるのは私達です」

 「すいません、俺ら正直遊んでいました」

と一斉に声を挙げ、立ち上がると豊田会長に頭を垂れた。

 会長は

 「ふむ」

と顎を指で撫で何かを考えている。


 「なるほどな。自分はてっきり責任逃れするのかなと思っていたが」


 ギクッ

 俺と眞智子はお互い顔を合わせ気まずく会長の話を聞く。

 「まぁ、自分がいいたかったのは。クラスの出し物なのにクラスが一致団結していない事を危惧していたということだ。だが、反省してくれたならそれでいい」

 えっ、あのポンコツなヤンデレ劇場を怒っていたんじゃないの?

 「あの・・・会長?劇の事でお咎め・・・という意味じゃなくて?」

 「いや、それではない。まあ、確かに風紀委員長の日野みすずは激怒していたが、むしろ面白いコントだったと思うぞ」

 「先生方も怒っているのでは?」

 「いや、大爆笑だった。さすがに男女のキスはまずいだろうって話もあったが女性同士のキスが加わったことで、あれはそういう劇ということで終わった」

 豊田会長は「わっはっは」と扇子片手で仰ぎながら、

 「君たちは面白い人材だ。これからも、神森をからかってやってくれたまえ」

といって壇上から降りていった。

 そして教室のドアに手を掛けると


 「そうそう、来年からは全クラス参加というのはなくそうと思う。今までどおりだ。地端に演説に踊らされて全員参加にしたのはいいが、クラスの出し物が逆に低下し、酷いところは名前だけで掲げて実際は開店休業だったところもあったしな」


と扇子をパチンと閉じながら、今回の尋問の理由を述べた。

 さらに不満はそこだけではなかった。


 「特に、地端のところ!!何だアレ、地端プロダクションの秘密』に迫るだと?酷すぎる。すべて手抜きで営利目的ではないか!!その上、君たちのところでトラブルを起こしてけしからん!あとであいつにはたっぷり理由書を書いてもらおう」


とどす黒い何を背中から漂わせフフフ・・・と不気味に笑う豊田会長。そのまま教室を後にした。

 それから数分後、隣のクラスから


 「えーーっ、そんなぁああ。理由書ですか?マジで勘弁してください。私文章書くの苦手なのぉぉ!!」


と悲鳴に近い嘆願の声が聞こえた。

 

  

 再び、2時間後の神森家



 「・・・で、マサの奴はあの後、あんたの医院送りになったんだって?私のラリアートのせい?」

 美子が煎餅囓りながら、悪びれる事なく眞智子に尋ねる。

 「本当は患者のプライバシーがあるんだけど、別にマサについては恥ずかしい事は何もないから問題ないか・・・あいつ、『胸が!!』って叫んでいたでしょ」

 「叫んでいた、叫んでいた。あれ、佐那美の胸がペッタンコって意味だよね?」

 「違う、違う。肋骨が痛かったみたいだぞ。湿布あげにうちに連れていったんだけど、うちの親父様が急にレントゲン撮ると言い出して・・・結局肋骨にヒビが入っていたんだと。しばらく安静だな。それにしても佐那美のあばら骨って『最強』ならぬ『最胸』鉄板胸板だね」

 「うわっ、マサの奴災難ね。それにしてもさすが佐那美ね。あいつの場合、『凶器』じゃなくて『胸器』になるんだ。ツルペタおっぱい恐ろしや」

 眞智子と美子の会話、なにげに人の身体的特徴を捉えて酷い事を言っている。

 君たちのが普通以上にあるからそう言えるけど、佐那美は標準は下回るけど全くペッタンコっていう訳じゃないと思う。ただ、そう言う発言しようものなら間違えなく『ミスターモミーエロすぎる』って言われそうだ。

 ここはボディープレスした佐那美が悪い、そう考えることにする。

 「ところで、今日そのツルペタがうちにいないようだけど」

 「生徒会室で泣きながら理由書書かされている」

 「あの佐那美が泣いている?にわかに信じられないわね。」

 「あいつ、字が汚いしまともに書けないから、何度も書かされると心折れるんじゃないの?」

 「あぁ、高等部の生徒会長なんかねちっこそうだからね」

 「それにしても、佐那美の洗濯板のせいで、うち大赤字なんだけど」

 「へっ、ざま。礼兄さんと私のキスを奪ってその程度ですんだんだ。むしろ感謝したほうがいいかもね」

 女の子の会話ってこんなに酷いもんなんだ。

 「みんな仲良く共有できたんだからいいじゃん。私的には最後のはちょっと・・・悪夢だったけど・・・」

 「はあん?ふざけんな。あの後、お前が見てきたって言っていたお花畑のところに行っちまったぞ。そこにクソ爺いが手招きしていたからぶん殴ってきたから!」

 あっ、死んだ爺さんだ・・・遂に美子に殴られたのか。美子、嫌っていたからなぁ。

 「そいつはいけないな。じゃあ、もう一回あの世に行って爺さんに詫びてこいや」

 「んだと、てめえ。そういえば、映画でお前が私に包丁で刺されるシーン。リアル過ぎるからってカットされちまったけど、何ならここで今体験するか?」

 「あ゛あっん、だったらどこかで日本刀仕入れてきて、あのシーン再現してやろうか?」

 遂にはお互いをにらみ合い、ガチバトル寸前である。

 あっ、はいはい・・・こんな時はですね・・・


 ムニョン、ムニョン・・・

 

 「あぁつ!!またどさくさまぐれに触りやがった!!」

 「このミスターモミーが!!」

 ・・・となるわけで、ただこの後が大変だった。


 「「ところでさ、どっちの胸が触り心地よかったか、感想教えて欲しいんだけど。」」


 「えっ・・・それは・・・」

 「「どっちもって言ったら、あなたも死のうか?」」

 ・・・あっ、これ詰んだっぽい。

 これってきっと、美子と眞智子がグルになってモミー対策していたのかもしれない。


 「ちょ、調子に乗ってすみませんでした!!」


 ここは素直に土下座するしか他にない。

 「別に私らは揉まれたって構わないけど・・・」

 「選ばないで2人分、タダモミしたのは許せいないよね」

 そう言うと、眞智子が部屋を暗くして、眞智子がどこから用意したのかバケツを僕の眼前に置いた。

 そしてテーブルの上に包丁を意味ありげに置く。

 「罰を執行しなければいけませんね」

 「皆一緒に逝きましょう」

 えぇっ、僕、ここで刺し殺されるの?

 バケツって僕の血をここに溜めるって事?

 や、ヤバい・・・これ、僕ここで終わったっぽい。

 「さあ、礼君座ろうか。」

 眞智子が3人掛けのソファー中央に座るよう指さす。

 美子がご丁寧にソファーを座りやすいように後ろに引く。

 「あっ、僕お腹が痛くなったので・・・」

 「いいから座って」

 眞智子が僕を突き飛ばすようにソファーに座らせる。

 美子が僕の足下にバケツを置く。

 そして、2人が僕の両脇にぴったりと座る。

 えっ・・・ここで僕、刺されるの?

 そして美子がテーブルに手を掛ける。

 僕はこの時、今までの出来事を走馬灯の様に思い出す。あぁ、皆に手を出さずに、無事平穏に過ごしてきたが、結局はバッドエンドかぁ・・・

 どうせだったら、皆に手を出せばよかったかぁ・・・いや、どうせ俺はヘタレだから取っ替え引っ替えできないでこうなるのが運命っぽいかな。

 僕は静かに目を瞑り、最後の瞬間を待った。

       ・

       ・

       ・

 「・・・て、黙ったまま目を瞑らないでくれる?」

 眞智子の少しムスッとした声が左から聞こえる。

 「頼むから、やるなら一思いにやってくれ」

 「あっ、兄さんビビりだからしょうがないよ」

 右から美子の声が聞こえ、なにかシャリシャリと何かを切り裂く音が聞こえる。

 「目をあけろって!」

 眞智子は僕の両頬を指で挟み込む。

 「おい、眞智子、今私包丁持っているんだからな。どさくさに紛れて礼兄さんに手を出したら、お前から先にころ○ぞ」

 お前から先にこ○すぞ・・・て事はやっぱり、本当に僕が先ってこと?!

 もう僕はガクガクブルブルもんである。

 もし、トイレを済ませておかなかったら失禁ものである。

 シャリシャリシャリ・・・何かを切り裂く音と心臓音だけが僕の耳に無情に響く。

 「よしできた」

 「んじゃあ、始めるか」

 美子の言葉に応じて眞智子が僕の両耳元に何かを押し当てる。あっ、これヘッドフォンだ。そして目を閉じている瞼の向こうから何か明るさを感じる。

 
















 「ギヤアアアアアアアアアア!!」














 けたたましい叫び声で驚き、咄嗟に目を開かしてしまう。

 そこには・・・

 そこには・・・










 美子が絶叫あげて卒倒する・・・シーンがテレビに映し出されていた。




 「へへーんだ。引っかかってんの!!」

 「これ、罰としては最高だよね!!」

 美子と眞智子がイエーイとばかりに両手でハイタッチしている。

 そしてシャリシャリと音を立てていたのは・・・りんごである。きれいに皮を剥かれ食べやすいようにカットされている。

 今、僕は今日の劇のビデオを見せられていたわけだ。

 よかった、ホント殺し合いになるのかなって思って・・・おっと、ここから記憶がボンヤリとしてくる・・・


 「礼君?・・・あれどうしたの?」

 「泡吹いている・・・あっ、どうしよう・・・病院、病院!!」

 「またただ働きか・・・親父殿に怒られるなぁ・・・」

 「うわあああ、やり過ぎたぁ!!だからほどほどにって言ったのに!!」

 「何言っているんだよ。だから私は・・・」



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 まあ、こんな感じで文化祭の騒動は終わるけど、今回幸いだったのは僕のお仕置きに佐那美がいなかったことだ。もしいたら、僕は間違えなくショック死していただろう。あいつのは度が過ぎるからな。

 結局余談だが、次の日に劇と映画の上映会を今度は佐那美の部屋でやることになったのだが、バケツの意味がその時よくわかった。あれは映画のエチケット用だということが。

 おかげで佐那美の部屋は酸っぱい臭いで充満していた事は言うまでもない。


 僕、神守礼はゆかいなヤンデレ娘達に振り回されながら学園生活を送っている。

 お兄ちゃん大好きでリヤルヤンデレの美子。

 元ヤンで、グイグイと僕に迫る眞智子。

 頭が病んでいるほど滅茶苦茶で、激情的に俺に食らいつく佐那美。

 ・・・さて、僕は無事に彼女を作る事が出来るだろうか。


 兎に角頼むから、喧嘩しないで! 


 完



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