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神守君とゆかいなヤンデレ娘達  作者: 田布施 月雄
第4章 礼治のお買い物
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第1話 帰ってきました、いつもの日常


 僕は神守礼。

 ごく普通の高校2年生だ。

 ただ、人には言えないアルバイトをしている。

 その関係かもしれないが、僕の周りの女の子達は皆――ヤンデレ化してしまった?!

 今日も僕は彼女らから付け狙われ命の危機に晒されている。

 どうしよう、僕。

 こんなハズじゃあ……こんなハズじゃあなかったのになぁ……

 ――とまあ、こんなヘタレな僕ですが皆さんよろしくお願いしますね。



…………………………



 「――っておまえ、それ本気で言うつもりなのか?」


 呆れた表情で僕に草稿を突き返してきたのは友人である池田正勝、通称マサやん。

 僕はそれを手に取り再び内面を確認する。


 「えっ、挨拶ってこんなもんじゃないの?」


 そう言う僕にマサやんは見慣れない教室の後ろ廊下寄りの机に腰掛けながらハァ……と深いため息を付く。


 「あのよぉ……自己紹介がソレっておかしくないか?」


 何がおかしいのだろう。事実そのままじゃないだろうか。


 「おい神っち。言っておくけど、『人に言えないアルバイト』っておまえが地端のところの事務所で俳優しているっていう意味だろ? おまえ、そんなこと言ったら皆気になって聞き返すだろうだろうが!」


 「あっ……そうだね。そこは敢えて触れない方がいいかな」


 「それになんだコレ、『ヤンデレ化してしまった』って! あんなのヤンデレじゃねえし、そもそも『題名詐欺』だし!」


 「そうかな。みんなヤンデレだと思うけど……」




 「ちがあああああう! あんなのヤンデレじゃない!」




 マサやんがちょっと大きな声を挙げてクビを振った。

 新しいクラスメイトらが一斉に僕らの方向を注視する。

 

 「ちょ、ちょっと、大声出さないでよ。恥ずかしいんだけど」


 僕の制止を無視してマサやんは一方的に話し出す。


 「あのよぉ。まずおまえの妹、『神守美子』は確かにヤンデレであっているよ……っていうかアレ単なる基地外じゃん!」


 「お、おまえ人の妹になんてことを……」


 「だってそうだろ? ハイスペックな頭脳のくせにこんなレベルの低い学校までおまえを追いかけてくる程の超ブラコンで、おまえのパンツコレクター。しかもおまえが好きすぎてズッコンバッコンしたいが為寝込みを襲い、挙げ句におばさんに半殺しされている妹っているか? 普通いねえだろ。あれはタダの変態だ!」


 うっ……痛いところを突いてくる。


 「おまえの妹はそっちに置いておいてもだなぁ……何だよあの『小野乃眞智子』は! アレは完全にヤンデレではないだろっ、確かに元ヤンでヤンキーデレなのかもしれないが、あいつはただの拘束欲求が高く嫉妬深い暴力女だろがぁ!」


 「い……いやぁ……ソレはどうかなぁ……」


 僕はある方向を見て血の気が引いている。

 それでもなおずっと喋りまくっているマサやん。彼のマシンガントークは続く。


 「それでよぉ、おまえのバイト先の娘である『地端佐那美』だって、あれはヤンデレじゃねえぞ。確かに地雷原を裸足で走り回るほどヤバい奴だけど、言い換えればおまえが好きすぎるタダのスーパーおバカさんだ。しかも守銭奴ときている。おまえを稼がせるだけ稼がせて稼げなくなったらとっとと結婚してしまおうとも考えている狡猾で猪突猛進な女なだぞ!」


 「あ……それは……」


 佐那美の事は否定出来ない。


 「おまけにおまえのアルバイト仲間であるサンディ=クリストファーこと『クリオ=ルーカス=バトラックス』っていうエセ外人! 最初はよツンデレで病んでいる感じもしたけどよ。本当はタダのデレデレかまってちゃんじゃん!」


 「お、おま――」


 「それでなんだ、地元アイドルTKBのツカサこと『織田一美』って子! 最初はクールなお姉さんキャラだったのに、蓋を開けてみればタダのコミュ障で佐那美同様の地雷女じゃねえか。挙げ句今じゃあおまえのストーカー……いや『ストーカーアイドル』って普通立場が逆だろ!」


 「い……いやぁ……」


 「つまりだ。あれらはヤンデレ娘というよりかは、タダの変人集団だ! 言うなれば『神守君とゆかいな頭がおかしい娘達』だわ。しかも学校中の美女を一斉におかしくしやがってさあ! おまえさあいい加減にしろよ、すべておまえが元凶じゃねえか!」


 凄い、言い切った。僕でさえそんなこと言えないのに……しかも……


 「マ、マサやん……あのぉ……」


 「何だよ、さっきから煮え切らない奴だなぁ、さっき……から……よぉ」


 そこでマサやんがその言葉を吐いた後何かの気を感じたのか血の気が引いて真っ青な顔に変わった。

 いや、感じたというレベルの気じゃない。

 『殺気』にも似たどす黒い瘴気である。




 「――おい『シムラ、ウシロ!』って言葉、じいちゃんばあちゃんから教わらなかったのか?」




 先ほど名前が挙がった眞智子である。その眞智子が殺意に満ちた目つきでマサやんの後頭部をアイアンクローかましている。

 しかも先ほどから眞智子の脇で指をポキポキならしているのはボクシング経験者のクリオ。


 「眞智子、コイツ、ボコっテイイ?!」


 アイドル顔負けの美人さんが顔を歪ませ片言の日本語で怒りに身を震わせている。

 おかしいなぁ日本語ペラペラなのに……


 そしてその反対側で佐那美が満面の作り笑顔で拳を振るわせている。


 「みんなダメだよ。こいつは後で神守君の代わりにスタントマンとして使うんだから。とりあえず、パラシュートなしのスカイダイビングしてもらおうかしら――ふふふふふ……」


 最後にこの中で一番恐ろしい一言。




 「池田さんの会話データ、先ほど美子さんの携帯に送りましたから」




 この冷酷なトドメを刺したのは一美である。

 ――あっ、こりゃぁマサやん死んだなぁ。


 この後、僕は美子へ『父親が警察官なので得物は使用しない様に』と自制を促すメールを送った。





 さて、時は流れてホームルームの時間――





 「神守礼です。趣味は鉄道模型です。今度うちの学校に妹も入学します。僕の事で色々と皆さんに迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします」



 僕はそれだけ告げて座ると僕の左脇で窓横にいる眞智子が「挨拶ってそんなもんでいいのよ」とうんうん頷いていた。

 その一方で僕の右脇に座っていたクリオが「そうそう、あんまり喋ると失言しちゃうから気を付けなきゃ。ホラ見てみなさいよあのバカ、初登校日に包帯でグルグル巻きになっているじゃん」と哀れな僕のトモダチを指差してニッタリと笑っている。

 そうかと思えば眞智子の後ろで「もっと凝った脚本と演出が必要ね」とダメだしをしているのは佐那美である。

 彼女は空気読めない地雷女なのでこの後、何を言い出すのか僕には何となく理解できた。また他の連中も彼女の言動を想定済みなのか、まずは佐那美が口開く前に眞智子が「おまえ、とりあえず黙っていような!」と釘を刺した。


 そして普段、佐那美に酷い目に遭わされているこの人も。


 「それに自己紹介の時に『神守君のお嫁さんです』って名乗ったら、レイと一緒に事務所辞めるからっ!」


 「え~ぇ……それは困るぅ」


 佐那美はプクッと頬を膨らませると頭を抱えて黙りだした。

 何故、クリオが僕の名前を持ちだしたのか、これには補足が必要だろう。

 実は僕自身、前々から引退したい旨地端のおやっさんに告げており、これは事務所周知となっている。

 従って、もしクリオが事務所を抜けるというなら、それを機に僕も引退するつもりだ。

 クリオはそれを逆手にとってそう発言したのだ。

 2大看板が一斉に抜けるとなると事務所自体の存続が危ぶまれるわけで、いくらパワハラでお馬鹿な佐那美でもそんなことになればどうなるかくらいは理解している。

 だから今回は素直にクリオの警告に従ったのだ。


 さて、うちの面子にもう一人いる訳であるが、この子も曲者である。

 彼女は僕の背中をツンツンと指で突くとちょっと納得いかない表情でジトッとした目で僕を睨んだ。


 「この席順、私は納得いきません……」


 一美である。

 彼女は僕のストーカーであり、大体僕の後ろにいることが多い。

 だったら文句はないよね、と思うのだが彼女としては「神守さんの背中はいつも見慣れているので新鮮味がない」ということのようだ。

 席のことで僕に文句は言われてもなぁ……


 そして、ちょっと気になる事がある。

 他の連中は廊下側先頭からあいうえお順に並んでいる。

 新学期の始めあたりはその様な席順である。


 それなのに僕らの席だけ窓際奥にまとめて固定されていた。


 しかも僕が中心となりその周りを問題児で固めている。

 さらにはクリオの後ろで一美の右隣は誰も座っていない机が置かれている。

 どうも転校生がここに座る……っていう訳でもなさそうだ。

 おかしい、明らかにおかしいぞこの配置。

 これは誰が見てもそう思うだろう。


 「おい神守の取り巻き、五月蝿いぞ!」


 その様に仕組んだ容疑者が僕らに対して一喝した。

 高田である。彼女は三十路独身女である故に、ヤンデレ娘達に対して辺りが厳しい。

 彼女がまた僕らの担任だった。

 そんな高田でも学校の意向には逆らえなかった様でこれは彼女が苦肉の策でそうせざる負えなかった結果なのだ。 

 なぜなら、彼女らのバックには地元有力者がついており、学校経営者らはそこを怖れていたと思われる。

だから、厄介者である僕らを他の生徒の妨げにならないようを一纏めにしたのだろう。

 当然、コレには反発する者もいるわけで。


 「先生、何でこの席だけが固定なんですか!」


 一美である。彼女が不満を訴えた。

 だが高田は速攻で反論する。

 

 「何言っているんだ。授業の邪魔にならないようにそうしたんだよ! だからおまえ等はそこで黙ってお互い牽制していろっ! それと神守……悪いがおまえにはこのクラスの為、こいつらの生け贄になってもらう」


 …………い、言い切りよった。この年増。


 「じゃあ、この空いている席は何ですか! ここに誰か座るってことなんですか! 転校生ですか!」


 一美が畳みかけるように高田に確認するが、内心は彼女も嫌な予感を感じていたハズだ。

 確かに新学年の教室で空き席があるのはおかしい。

 クラス名簿を見る限り、休んでいる子はいない。ならば編入で間に合わなかった誰かがいるってことになるのかな?

 ……って甘い考え起こしませんか?!

 それは違います。そこはきっとあの子の為の席なのでしょうね。

 一美の問いに眞智子が代わって答える。


 「何言っているのよ。休み時間、一番ヤバいアレが座る席でしょ」


 彼女は引きつった笑みを浮かべながら隣の1年生の教室を指した。


 ――そうだよね。あの子しかいないよね。


 そう推察した眞智子は、高田の「さすがだな小野乃、正解だ」という言葉に、正解にもかかわらずがっかりとした表情で項垂れ、額を机に打ち付けた。

 クリオも「エッ?! やっぱりそうなんだ……」と後ろを振り向きあからさまに嫌な顔をしている。

 確かにこの席を空けておかないと、彼女の場合他の生徒の席を強奪しかねない。

 一方で、蛙の面にナントカという子もいるようで。


 「あぁ、よかった~。あたしはあの基地外との間に障壁があるおかげで直接被害はなさそうだわ」


 佐那美である。横にいる一美を盾として扱うつもりなのだろう。

 これには一美も「えっ?! それって地端さんが何かしでかしたら、その分私が被害被っちゃうじゃないですか」と更にドン引きしてしまった。

 でもそれは間違いである。


 「大丈夫、一美の頭上を得物が通過するだけだから」


 そう手を振っているのは眞智子。

 ……うん、それも間違い。

 正解は、『一美ごと佐那美を成敗するだろう』でした。





 さて、うちの妹を基地外扱いする連中は放っておいて……こんな感じで高2バージョンスタートです 。

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