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神守君とゆかいなヤンデレ娘達  作者: 田布施 月雄
第3章 進学の美子
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第17話 嫉妬女の無双(前編)

 和気藹々と京都に向かう僕たち。

 だが、そんな状況を許してくれるほど美子は甘くなかった……


 「きシゃあアアあァアあ……」


 真っ暗なホテルの一室で奇声を挙げ、身構える美子。

 外は雷雨なのか時折、雷光が鬼神と化した美子の表情を映し出す。

 かなりイっちゃった表情だ。

 古都の怨霊が憑依したか……いや、それすら取り込んだのか、明らかに人間の動きでない。その彼女が僕の部屋の入口付近で得物を構え塞いでいる。


 「あ、アンたラは……コ、56す!」


 激怒過ぎて言語自体が怪しくなる美子。

 そこまで美子を発狂させた原因を生み出した人物はと言うと……


 「えーっ、別に良いじゃん。ちょっと礼君を独り占めにして一緒に寝たぐらい……」


 「お、おま……え――ヤッたのか?」


 美子が悍ましい表情で眞智子を睨み付ける。

 眞智子は全く動じることなく淡々と答える。


 「礼君気持ち良く寝ていたから、つい布団に入って一緒に寝ただけだよ」


……と言って面倒臭そうに小指で耳の穴をかっぽじっている。

 その脇でクリオが「あんたふざけるなよ。なんでそういう態度取っているのよぉ! そんなに挑発した後、私が宥めるなんて聞いていないわよ! 私を巻き込まないでくれる?!」と大声で彼女の胸ぐらを掴み前後に揺すっている。


 ――そりゃあ……怒るわなぁ。


 一方で一美は……


 「凄いですね。やっぱり本物は迫力が違いますね」


 何故か彼女だけが感じているベクトルが違うようで、わくわくしながらその状況をスマホで撮影して楽しんでいる……やっぱりこの子は佐那美バリの空気が読めない女の子である。


 「美子さん、落ち着いて。僕は何もされていないから。それに今日は美子さんと遊びにここまで来たんだ」


 「だったら、この馬鹿女達はいらなかったでしょ!」


 美子は鬼の様な形相でこちらを睨んでいる。


 ――いや、そう言ったのはクリオなんだがぁ……


 ちらりと言い出した本人の方に目を移すと、クリオは怒った表情で『何でこの場面で私を見るんだ!』とでも言わんばかりにこちらを睨んできた。

 逆にその様子が気に入らなかったのか美子がいきりたつ。


 「クリオ……この馬鹿女らが揃って来たのはあんたの差し金か?」


 急に怒りの矛先を自分に向けられ『な、なんで?!』とばかりに混乱するクリオ。

 前回の秋葉原同様、今回も彼女が提案したものだが……彼女はタダ単に……


 「どうせクリオは私の援護というより、ただ単に自分自身が遊びたかっただけだろ?」


 眞智子が庇っているのか、美子を煽っているのかみんなに聞こえる様にぼやいた。


 「眞智子、おまえに聞いていないっ! 答えろクリオォォ!」


 「ひいいいいっ……」


 美子の気迫に押されてクリオは仰け反り小さな悲鳴を挙げた。



 ――さて、どうしてこうなったのか、話を京都駅到着時まで遡る。



◇◇◇◇



 僕たちは予定どおり京都駅に到着。

 そこで涼子と分かれ、クリオの案内で僕らは京都のバスチケットセンターに向かう。

 眞智子は「バスよりタクシーの方が良いんじゃないか?」と渋っているが、クリオがその理由を話す。


 「何言ってるの? 1日乗車券があれば京都市内グルグル回れるのよ、しかも乗り降り自由! 仮に美子が移動してもバスで動けば良いじゃん」


 クリオは鼻息荒く力説するのだが、そもそも僕らは京都に観光しに来たわけじゃない。美子を探しに来たのだ。

 だったら、バスでちまちま行くよりは、タクシーを3時間貸し切れば何とかなるだろう。値段も1万5000円で済む。

 その理由から眞智子が渋った訳なのだが、クリオも佐那美バリの節約家である。

 それにクリオ本人はデメリットであるハズの『時間のロス』は、本人にとって『しっかりと観光できる』メリットに置き換わっており、その上安く済むのであれば彼女にとって願ったり叶ったりである。


 「バス停がそこらにあるからバス券と一緒に路線図を持っていけば私でも迷うことはない!」


 まぁ、バスの1日乗車券くらいであれば4人分出してもタクシー代より遥に安い。

 ここにいないあの子も絶対にそうしただろう……ただその場合、その子だけが迷子になりそうなんだけどね。

 ……おっといかんいかん、脱線した。話を戻す。

 眞智子とクリオの会話が続く。


 「でも、観光名所である嵐山や伏見の方には行けないんでしょ?」


 「中学生の修学旅行なら金閣や銀閣、せいぜい太秦まで行ければ十分よ」


 クリオはそう言い切った。

 実際、クリオは京都に明るい。

 観光だけであれば、彼女のガイドに従って行けば楽しめそうだ。

 実際、眞智子が「でもその券って市バスだけでしょ?」とクリオに尋ねるもすぐに答えが返ってくる。


 「まぁ、そうね。そこが問題なのよね。市営の他にJR西日本バスや京都バスなんて会社もあるから間違えると大変よ」


 一瞬、ここにいない人物が違うバス会社に乗車して大騒ぎする絵面が脳裏に過ぎった。


 「だったらタクシーで行こうよ」


 得意げに話すクリオとどうも納得出来ない眞智子。

 さらにクリオが力説する。


 「だって1人500円――」


……とここまでクリオが話したところ、意外な人物によって話を上書きされてしまった。


 「たしか1人700円でしたっけ?」


 一美である。得意げに知識を披露するクリオに彼女が新しい情報でぶん殴ったのだ。


 一美が差し出した最新の旅行ガイド誌には、1日乗車券は値上がりしており、その分移動エリアや利用できるバス会社、特にがクリオが挙げたバス会社も利用できる様になった旨記されていた。

 確かにこれなら、嵐山や伏見も行けるし、彼女ら向きの心霊スポットである清滝や化野念仏寺あたりまで行ける。

 さらに一美の雑誌にはそれプラス地下鉄も利用できる1日乗車券も記されている。


 新しいガイド誌を見せられ、自分の情報が古いものだったと思い知らされたクリオは、背中を向けていじけ出す。


 ――でも……まぁ。粗方、君は違ってはいないよ。

 

 「……そ、それじゃあ、クリオと一美さんの案で移動しよう。僕がみんなの地下鉄付1日乗車券の買ってくるから」


 僕は半ば強引に話をまとめた。

 後々ガタガタ言われない為にさっさと乗車券売り場に向かうが、急に眞智子が「それはいいとしても……」といって呼び止めた。

 どうやら移動のことで不満があるわけではなさそうだ。


 「問題は、美子の居場所よ。あのヤンデレブラコンがどこにいるのかがわかんないし」

 

 そう言えばそうだった。

 手っ取り早く学校に連絡して引率の先生から美子のスケジュールを聞こうか――とそう思った時、「それならこの子なら分かると思う」とクリオが一美の肩をポンポンと叩いた。


 「一美、今美子がどこにいるのかわかる?」


 「わかる、わかりますよ。ちょっと待って下さい」


 そう言って取り出したのはスマホ。

 一美曰く、どうやらGPSで僕たちの動きが探っていたとのこと。


 ――だが、僕の衣服や持ち物にそういう類のものは仕込まれてはいなかった《《そうだ》》。


 《《そうだ》》……というのは僕自体そういうことされていた認識がなく、後日美子からそう告げられた伝聞である。

 美子のことだ、僕の身辺についてはしっかりときっちりと執拗なくらいにチェックしていたハズなので見落としはないだろう。

 ではどうやって一美が僕の行動を把握していたのか?

 その謎が今、クリオにより明らかにされる。


 「まさかレイに仕込まないで、美子に仕込んでいたとは……灯台下暗しってことかしら」


 あぁ~なるほど……そっちの方ね。僕じゃなく、美子に仕込まれていたのか。

 彼女は僕に対するチェックは異常なレベルであるが、自分自身のことについてはほとんど無関心である。

 確かに彼女にGPSや発信器を仕込まれてもわからないだろう。


 「ちなみにうちの美子さんはどこにいるの?」


 僕の問いに応じて一美がスマホで検索を掛ける。

 横でヒマそうに眞智子が一美のスマホを覗き見ながら、余計な一言を呟いた。


 「どうせあいつ、『あの言葉』が口癖だから――」


 眞智子って突然、変な事を言い出すことがある。

 佐那美が『ロクな事しない女の子』であるなら、眞智子は『ロクな事を言わない女の子』である。

 僕は慌てて言動を止めようとすると、クリオもそれに気がつき、


 「――あんた、この先の発言に気をつけなさいよ」


と言葉を被してかき消した。

 どうも、今日の眞智子は程良く頭のネジが緩んでいる様だ。

 一方で、黙々と美子の居場所を調べる一美。

 だが、クビを傾げて困った様子である。


 「……どうも、感度が悪いみたいでピンポイントは厳しいです」


 一美は天を見上げる。ちょっと雲がかっている天気だ。

 そう言えば、カーナビのGPSも雲の影響を受けるって話だよな。

 

 「誤差範囲が広くてもいいから、どの辺なのか見当つくかい?」


 「それなら、なんとなく範囲が絞れそうです。東西でいうとここから東――具体的には東大路通方面ですね……南北でいうなら三条から五条の間かな」


 ――うん、全くわからない。


 一美にそう言われるものの、あまり京都観光したことないので判然としない。

 ならクリオに尋ねる。


 「その辺って何かあったっけ?」


 「だったら……知恩院とか、八坂神社、霊山護国神社、清水寺あたりかな」


 うーん……どこも美子が行きそうにない場所だ。

 第一、あの子って僕以外に興味がないからなぁ……思い当たる場所が浮かばない。

 みんなで考え込む中、1人だけ挙手して「私、わかった!」と声をあげた女の子がいた――眞智子である。

 みんなが俄に信じられない表情で睨む。


 「眞智子さん、変なことは言わないでよ……それでどこだと思う?」


 「清水寺! 間違いない、そこだよ!」


 僕の問いに眞智子はハッキリそう言い切ったが、何を以てそう言い切れるのか?


 「その根拠は?」


 「私が行きたいからっ!」

 

 ――やっぱり、聞くんじゃなかった……そう思っていたところ、意外に他の連中が食い付いてきた。


 「あっ……そういうことか」


 「たぶん、そうですね」


 クリオと一美が眞智子のアレで納得したのか、ポンと膝をたたいた。

 みんな、何が分かったというの?! 僕だけがその意味をわかっていない様だ。


 「清水寺に何があるの?」


 「名前は忘れた、行けばわかるよ」


 クリオは僕とのやり取りを簡単に終わりにして慌ててバス系統を確認する。


 「206系統か86系統でいけるわね。清水道あたりで降りるわよ。バス停は確か……バスターミナルのD1、D2にあるわよ」


 さっと答えるクリオ、さすがである。

 だが、今回は上位互換がいるので……


 「市バスの他に京都バスも乗れますよ。そこだったら18系統、バスターミナルC3になりますね。あと、降りるのは五条坂で降ります」


 一美に新しい情報を追加されてしまいクリオの優位性もかすんでしまった。

 そこで眞智子がまた余計な質問をする。


 「五条坂と清水道どっちの方がいいの?」


 ――そんなことはどっちでもいいよ。あまり問題を引き起こす言動はやめて欲しい。


 ほら、既に一美がちょっと考え込み、クリオが必死で古い観光ガイドを調べ始めた。

 そしてそれぞれ答えを出した。

 まずはクリオから。


 「清水道の方が清水寺への距離が短いわよ。そっちが良いと思う」


 そして上位互換の彼女。


 「五条坂の方がお土産屋さんが多いので清水寺から戻ってきた人達が多いと思いますよ。だからそっちから清水寺方面へ登っていけば途中で出会う可能性は高いと思います」


 トドメはネジが緩んだ彼女。


 「あの辺で礼君に抱きついていれば、勘の良い美子なら探さなくとも殴りかかってくるでしょ」


 ――いや、観光地で刃傷沙汰はやめてください。案の定、クリオが怒り出す。


 「あんた何言っているのよ。美子の詫び入れるのになんで輪を掛けて怒らせることするのよ」


 そりゃそうだ。上位互換にお株を奪われ、仲裁したくもないのに仲裁させられ挙げ句にその問題女は心から謝るつもりはないし、なんなら仲裁すべき相手を小馬鹿にしようとする態度に、冷静でいろって言う方が無理だ。


 とりあえず土産店が多い方から清水寺へ向かっていくことで話がまとまった。

次回投稿は不定期です

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