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神守君とゆかいなヤンデレ娘達  作者: 田布施 月雄
第3章 進学の美子
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第12話 次回作(案)


 ――地端方の道場。


 地端の社長は急用を思い出したとのことで、打ち上げ会は再び僕らのみで行うこととなった。

 彼の言い分では「懇親会の邪魔をしたくはない」とのことだが、これは僕らに気を利かせた訳ではなく、関わりたくなかったからそういう体にしたのだろう。

 おかげで僕はちょっと迷惑というか……いや、ちょっとどころではない!

 彼の所為でヤンデレ娘のポンコツ担当が『これは社長の意向である』と言わんばかりに、僕を自分の左脇に座らせた。


 ――あんにゃろ、あのトラブルメーカーを僕に押しつけた形で逃げ出しやがった。


 また、どさくさ紛れにクリオも「私も会社重役の一人」だと主張し、彼女も僕の脇に座りだした。

 当然、他の連中が面白くない。

 眞智子と一美がその対面に座らされ、何か言いたげな表情で彼女らを睨んでいる。

 これはけして、和やかな雰囲気とは言えない。


 「睨んだってダメだから! これはうちの会社の打ち上げだもん。うちの会社で開いているから文句は言わさないから!」


 佐那美は『これは決定事項』と言わんばかりに眞智子の抗議を事前に阻止する。

 当然、眞智子は面白くなそうに「平のくせして」と憎まれ口を叩いたが、 幸いに佐那美の耳には届いていない。

 その一方で。


 「レイと私は会社の人間だから仕方ないよね! それにレイは私にあんな恥を掻かせた責任をとるため私のご機嫌取りくらいしなさいよね」


 これに納得できないのは一美である。

 

 「私だって地端プロダクションのアイドルなのにぃ……」


 そういう理屈で言えば彼女も会社の人間である。当然、不満持つ訳だ。

 だが、彼女の先輩であるメンヘラちゃんは、一応面倒見ていた後輩が自分に対する不満を吐露してしまったからには、面白い訳がない。


 「佐那美、TKBが私らに文句が言えるくらいにもっとアイドル活動したいって。そろそろメジャーデビュー……っていうかこのまま国際デビューさせた方がいいと思うんだ」


 クリオは悪意ある表情で佐那美にそう進言する。

 彼女もそれに同調したのか笑みが消え真顔で一美をジロッと見る。


 「そうね。だったら逆境でも生き残れる力が欲しいわね。それなら隣国あたりでデビューさせようかしら……ひょっとしてナントカ流ファンあたりから石投げられるかも知れないけど」


 佐那美はそう言うと、どこからか取り出したメモ帳にそのアイデアを書き殴っていた。

 彼女が真顔で何かをしている時って、本当にやりかねない。

 その迫力に、一美は真っ青になり「調子乗ってスンマセンでした!」と必死に佐那美とクリオに頭を下げる羽目になった。

 そんな微妙な空気の中――



 「ちわーっす、私も混じるから!」



 そう言って弁当片手に現れたのはうちの美子である。

 彼女の首には湿布が貼り付いており、時折その部位を手で押さえていた。

 ……どうやら、母さんの新技を食らったようである。


 「あのクソババア……マジで痛いんだけどっ!」


 ――しかも、まだ懲りていない……

 彼女は席を見回して、不満そうに佐那美に尋ねた。


 「私の席はどこ?」


 「眞智子の脇でいいんじゃない?」


 彼女が示す『眞智子の脇』というのは僕の前ではなく、佐那美の前のことだろう。

 だが、このヤンデレが素直に従う訳がない。


 「本当はお兄ちゃんの脇に座りたかったんだけど……仕方ないなぁ」


 美子はそう言いながら、僕の真正面のポジションである眞智子と一美の間に割り込むように座った。

 眞智子が迷惑そうに美子を睨み何かを言いかけたが、それより先に美子が彼女を制した。


 「あんたのチンコロ(告げ口)のおかげで、酷い目にあったんだけど――あぁ首が痛いなぁ……折角だからこの近くにある小野乃医院ってところ行こうかな。そこの娘さんに経由でお願いしてタダに湿布貰おうかしら」


 もちろん、ここでいう娘さんとは、伝ヤン眞智子のことである。

 そしてこれは《《タダ》》の嫌みであり他意は無い。

 だが、今の眞智子にとって非常に痛い一言であった。


 ――それは兄である龍央の存在である。


 彼は小野乃家長男であり、医学博士の学位を持つ医師だ。

 以前は大学病院の准教授だったのだが、今は実家の小野乃医院で父親の道三医師とともに診療にあたっている。

 その彼と眞智子との兄妹仲は、うちと違って非常に悪いらしい。

 もし、美子がその様な行為に及んだ場合、ソレが原因で小野乃兄妹が大げんかに発展するのは確実だろう。

 僕はまだお兄さんとは面識はないが、うちの父さんとは仕事上であるらしい。

 その父さんの話では『結構面倒臭い人』とのこと。

 

 眞智子は渋々美子のわがままを聞いたのも、そういう関係だからなのだろう。


 一方で一美に関しては、美子の「何か文句ある?」と圧で臆したのか、何も反論せず素直に従った。

 まぁ、日頃から色々とヤバい佐那美らに『美子は《《本当に》》ヤバい奴だから気をつけろ』と脅され続けていたからか、それを素直に守ったのだろう。

 ――確かに人に躊躇なく包丁を投げる様なヤンデレさんとは目を合わせてはいけません。

 そして、そのヤンデレさんはここぞとばかりに、ある人を挑発した。


 「まぁ、騒ぐのだったらここが一番適切な場所よね。どうせ、佐那美んちだし」


 確かに騒ぐなら他人様が和んでいるレストランではなく、自宅でやれって僕ですら言いたい。

 だが、その迷惑掛けた張本人は、悪びれる事なく「あっ、そういうのやめてくれない? ここ防音設備ないんだけど」としれっと反論した。


 ――余所は良くて自分の家ではダメなのか……ずいぶん勝手な言い分である。


 もっとも彼女の飽きっぽい性格からして、あれだけ騒いだ後であれば疲れて大人しくするだろう……そう思っていたのだが、打ち上げ会が始まってすぐに、それは僕の間違いだと気付いた。



◇◇◇◇



 「いやぁ、まさかあんな感じにされるとは思わなかったんだけどぉ!」


 佐那美が僕とクリオにキレ気味にクレームを言う。

 あんな感じ――というのは、前作の映画「極めよ!オタク道」での僕とクリオとの別れのシーンのことを指しているのだろう。

 あそこのシーンは佐那美の指示では握手でお別れするハズだったのだが、色々の手違いがあってキスシーンになってしまったのである。

 佐那美はあの件を未だに根に持っている。

 そして、それは他のヤンデレさんも同様に――


 「――美子。例の《《アレ》》持って来た?」


 「持って来ていないけど、調理場貸してくれれば再現するけど……」


――と機嫌悪そうに会話している。

 もちろん、『例のアレ』とは僕が作った料理のコピー品のことである。

 僕の料理は産業廃棄物とまで言われたほど、檄マズなもので、あのヤンデレ娘達ですら尻込みするものだ。

 美子はその料理を忠実に再現することが出来るのだが、再現する際にはリアルに作ると死人が出るといってその簡易版に留めている。

 実際に、それを食したクリオは白目剥いて泡吹き、試食とばかりに食べさせられた佐那美は奇声を発して泡を吹いて痙攣した……

 それを眞智子と美子が再び作ろうと話し合っているのだ。

 その被害にあったクリオが「何度も何度も処刑にしないでくれる!」と猛抗議して、その話はそれで終わった。


 ……って、あの子あれからまたコピー品を食べさせられたの?!


 そんなろくでもない話をクリオが必死で打ち切ったところ、その意味すら知らず、話をぶり返す子がいた。



 「えっ、私その話知らないんですが……」



 一美である。彼女が首を傾げてその話を尋ねてきたのだ。

 頼むからぶり返さないでよぉ! ……と言ったところで、これは彼女に説明しないと納得はしないだろう。

 さて、どう説明するか。


 一応、彼女には僕がうちの事務所のドル箱スター『レイン=カーディナル』で、クリオが同じく『サンディ=クリストファー』であることは伏せている……


 あの時、レインとサンディがキスシーンを演じた(?)ことが彼女らがブチ切れている原因であるが、幸い誰もレインやサンディ、それにキスシーンの話はしていない……


 ……あっ、そうだ! だったら、二人でバカップルを演じてイチャついていたところ、偶然彼女らに見られて嫉妬され、その結果、罰ゲームで檄マズ料理を食べさせられた……ことにしよう。


 その様に話を進めようとしたところ、いつものおバカさんが僕の言葉を遮る様に話し出した。



 「はぁ? あんたも見たでしょ。このスケベと抜け駆け女がキスしたところ!」



 佐那美はヒステリックな声を挙げて僕の胸ぐらを締め上げる。


 「えっ、それって僕とクリオじゃなく、キスしていたのってレインとサンディの話でしょ!」


 僕は必死にレインとサンディのことを誤魔化すが、今の佐那美にはそんなのは関係ないようで、そこまで話すと再び、彼女が言葉を被せてきた。




 「おまえら、あんな大スクリーンで『ブチュー』ってしやがって!」




 ――ハイ。このおバカさん、一美に隠していたことをあっさり白状してしまいました。

 横でクリオ、正面の席にいた美子、眞智子が頭を抱えた。




 「えっ、スクリーンに映し出されて、キスしていたのってレインとサンディ……ですよね?」




 当然、一美は混乱している。

 僕はクリオの方を見て確認する。彼女も呆れた表情でこくんと頷き僕の説明に同意した。

 ここは正直に話すしかない。


 「今まで、一美さんが外部の人間だったから言うのは控えていたのだけど……僕がレイン=カーディナル、クリオがサンディ=クリストファーなんだよ」


 一美は「えっ?、ええっ?!」と驚きの言葉を発して絶句した。

 何で、今頃白状しなきゃならないの……僕はその原因のおバカさんをジトッとした目で見る。そのおバカさんは――


 「えっ、一美にあんたらの役者名の話、してなかったっけ?!」


――と説明済みだと思い込んでいたらしい。

 僕の前にいる眞智子が「このバカ、つかえねえ……」と呆れた表情で頭を抱えた。

 美子ですら「やっぱり、コイツは平で良いんじゃないの。お兄ちゃんの権限で「平社員」って肩書きにして発言権を抑制したほうがいいわよ」と白い目で睨んでいた。


 「えっ、じゃあ、ござるさんは私が思っていたとおり神守さんでいいけど、神守さんがレインの代わりに演じていたの?」


 一美は頭の処理が追いついていない様で、いくらか慌てている様子である。

 まだ、僕=レイン=カーディナルという式には至っていないみたいだ。

 いずれにしても、この先追及され続けるのも面倒なので、正直に話すことにした。



 「代わりじゃなくて、本人。本物さ」



 「うそでしょ……」


 「一応、知っているのはここにいるメンバーと、マサやん――池田正勝とその彼女の遠藤琴美さんしか知らないよ」


 僕の話を聞いても、まだ頭の整理が出来ていないようだ。

 当然、今日一日だけで事務所の人事異動の件やマネージャーの解雇の件があった為、尚更混乱しているハズである。

 もっとも僕とクリオはいつもこのトラブルメーカーに振り回されているせいか、どんな無茶振りされても差ほど驚かない――っていうか、諦めというか……呆れてしまっている。

 そのトラブルメーカーは、混乱している一美に輪を掛けるかのように、再び思いつきの話を進める。


 「そんなことよりさぁ、今度の映画の件だけど」


 「えっ、この状況で次作案を発表する?」


 クリオが呆れて僕を見る。僕にナントカしろと訴えているつもりなのだろうが、佐那美のことに関しては無理です、抑えられません。

 第一、やる気ある時の佐那美に対して、なんだかんだいちゃもんをつけようものなら、マジで大泣きするので彼女の妄言を聞き流すしかない。

 混乱する一美を余所に、佐那美は語り出した。

  

 「今度はサスペンスよ! 恐怖映画ね」


 彼女は目を輝かせて皆に話しかけるが、彼女の天敵がボソリと突っ込みを入れた。


 「何だ、事務所が借金まみれになって潰れるって話か?」


 「ち・が・う、違うっ!」


 佐那美は語尾を荒げるが、眞智子に続けとばかりにうちの妹がさらなる追い打ちを掛ける。


 「平社員に降格された元役員、裏に(うごめ)く陰謀が彼女を襲う。次の処分は諭旨か! 懲戒か? 鬼才神守美子が紡ぎ出す社会派解雇サスペンス『阿呆の如く鳴く』乞うご期待」


 「ちょ、ちょっと! 格好良くあたしをディスらないでくれる?」


 佐那美が泣きそうな表情で美子に噛みつくが、その悪ふざけに乗った眞智子がさらなる混乱を作る。


 「あっ、それいいかも……それってあの包丁を振り回す基地外が黒幕でいいのかな」


 その包丁女が怒り出す。


 「それの原因のすべてはおまえらの所為だろ! おまえらが挑発しなければ私もお兄ちゃんとラブラブでいられるんだ」


 美子が責任転嫁したところで、今度はクリオが全く関係ないことを言い出す。


 「映画なし、ナシ、ナッシング! 私とレイは引退してアメリカで地端プロダクションの経営するから、佐那美達は日本部門は頑張ってね」


 あぁ、もう滅茶苦茶になってきた。


 佐那美を除くヤンデレ三人衆が喧々囂々と騒ぐ中、佐那美は一人涙目になってしょぼくれ出した。

 このままだと彼女に大泣きされてしまう。とりあえず三人を黙らせた上で、佐那美の話をじっくりと聞く必要がある。

 僕は、手を振って彼女らの雑談を止めて佐那美に内容を話させる。


 「あたしがやりたい映画はストーカーに追い回される話よ……」


 佐那美が元気なく話を進めると、皆一斉に一美の方を見る。

 はい、彼女は神守礼のストーカー……だそうです。


 「えっ、だからあれストーカーじゃないって!」


 今まで無関係だった彼女だが、ここに来て主役級に目立ち始める。

 さっきまで訳が分からずパニック状態だったのが、ここにきて違う意味でパニックになっていた。

 一美は必死に否定するが、表情をよく見ると、脂汗を流して明らかに動揺している感じである。

 美子がさらに追及を始める。


 「前にも同じこと確認したけどさぁ! お兄ちゃんと待ち合わせしていないのに何で、見計らった様に出没するの? それも毎回」


 「そ、それは……ぐ、偶然…たまたま」


 美子の追及に一美の目が泳ぎ出す。

 美子は追及の手を緩めることなく、さらに突き詰める。


 「それに、なんでお兄ちゃんのカバンに小型の発信器とか、盗聴器とかGPSみたいなものが仕込むのかなぁ……あんたがお兄ちゃんのカバンを弄っているところ目撃している奴、3人もいるんですけど」


 「な、なんのことですかぁ……アハハハ。ほ、他の人じゃ無いですかぁ……」


 一美は言い逃れをするが、完全に美子から視線を逸らした。

 ちなみにその目撃者3人とは佐那美、眞智子、クリオのことだそうだ。

 美子は一美の言い逃れを一つ一つ潰し始める。


 「ちなみに言っておくけど、クリオのバカはメールを四六時中ガンガン送ってくるからそんなことしないし」


 「い、いいじゃない、メール何十通送ったって!」


 とばっちりを受けたクリオが半ばギレ気味に反論する。


 「チンコロ(告げ口)伝ヤンは、クソババアの犬になりさがっているから、情報はそちらから入っている様だし」


 「あのね、未来のお義母様と仲良くするのは問題はないと思うけど!」


 眞智子としては当然、うちの母さんと代官と越後屋の様な蜜な関係を続けたいだろう。


 「この自己中おバカは、頭狂っているから夜中だろうが朝だろうが、皆を巻き込んで電話掛けてくるし」


 「あたしがモヤモヤしたら困るでしょ! あんたらそれぐらい我慢しなさい!」


 佐那美としては――まぁ、今更何を言っても無駄である。


 「つまり、あんた以外誰がいるの?!」


 「うぅ……それは……」


 一美が歯切れ悪く、もう少し追及すれば落ちそうである。

 ――っていうか、一美を自白させたところで今更感がある。本題は佐那美の話だ。


 「あの、その件はもう済んだことでしょ? 佐那美さんはそんなことをぶり返したかったの?」


 「あぁ、そうだった。本物のストーカーで話が脱線してしまったわ。そうじゃなくて、レインが熱狂的なファンに追っかけ回される話を考えていたのよ」


 ――ん? それって今の状況じゃん。

 僕の他、眞智子やクリオ、美子が首を傾げた。


 「佐那美さん。僕の日常を映画版にするつもりなの?」


 「そんな生ぬるい日常ではないわ。基地外に追いかけ回されるっていうか、逃げるレインとそれを追うストーカー」


 僕、クリオ、眞智子が今度は一斉に美子に視線を移す。

 美子は「何見てんだよぉ!」と抗議するが、佐那美は――


 「あぁ、そこにも包丁持って追っかけるヤバい奴いたんだっけ」


――と妙に納得している。


 佐那美の話は脱線しまくりなので要点だけ纏めると……

 まず、舞台は日本。

 レインはアメリカから来た留学生。

 一人の女性が彼を一目惚れしてしまい、付き合って欲しいと猛アプローチを開始するが、彼には既に懇意にしていた女性がいたため、それを拒まれてしまった。

 その女性は失恋で発狂し、ヤンデレと化してしまう。

 そして彼女は彼が懇意にしている女性を見つけ出し、刺し殺してしまった。

 彼女はアリバイやトリックを巧みに扱い、逮捕を免れ野放し状態となってしまう。

 恐怖に怯えるレイン。

 彼女は意を決して彼を自分のものにすべく、包丁を持参してレインの部屋に侵入し、帰ってきた彼を襲い掛かる。

 逃げるレインに対して、ヤンデレ女は盗聴器、GPSなどを駆使して彼を追い詰め、やがて駅で電車に乗ろうとしたレインを見つけだした。

 彼女は彼が乗る列車に向かって、渡り廊下を使わず線路上に降りてショートカットしようとした結果、その線路に入線してきた列車に轢かれてしまう。

 彼女は五体バラバラになって死んでしまうのだが、その瞬間を目の当たりにしてしまったレイン。

 彼が意識を失う瞬間、バラスト上に転がるその彼女のクビがニタリと笑ってストーリーが終わるというものであった。


 「あれ、これって僕が見た夢となんとなく似ている……」


 「やっぱり、このキチっている絵が欲しいのよね――そこで美子、あんた映画に出演する気ない?」


 「はぁ? あんた私のことなんだと思っているの?」


 「殺人鬼」


 まさにベスト配役である……ってそんなこと言ったら、美子の機嫌を損ねてしまう。

 それに美子は素人だ。『リアルの殺人鬼』と『リアル感ある殺人鬼に魅せる』とでは全く違う。

 僕は美子の機嫌が悪くなる前に手を挙げて話を止めた。


 「うちの美子は素人だからダメ! 却下」


 「じゃあ、一美で良いわ。リアルのストーカーだから合うんじゃない?」


 これもダメだ。あんまりそういうことで弄るのはいけない。


 「一美さんはアイドル。当然、眞智子さんも素人だからダメ」


 前もって釘を刺しておく。すると、今度はクリオが口を挟んできた。


 「じゃあ、誰が演じるのよ」


 皆の視線がクリオに集まる。


 「じゃあ、あんたでいいわ」


 佐那美の決断で皆がうんうんと頷く。クリオだけがキョトンとした表情で己の方に指を差す。


 「クリオはプロだから」


 僕のその一言でクリオの配役も決まった。

次回投稿は不定期です。

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