第3話 お願いだから、巻きこまないで!
佐那美が次のシーンを撮るので移動してくれという。
場所を尋ねると佐那美は無言でペデストリアンデッキからデパート経由で地上に降りるとデパート北側にある携帯ショップ前で立ち止まった。
「えっと、眞智子。悪いけどこの上から飛び降りてくれない?」
佐那美はそう言って建物の屋上を指さす。
どう考えても4階はあろう。
「はぁ!?あそこの屋上から?」
「そう。屋上から。」
なんて馬鹿なこと頼むんだ。当然、眞智子だって怒る。
「じゃあ、佐那美やってみせてよ。」
「いやよ。死んじゃうから。」
ひどい言いぐさである。
「・・・・あなた、一回死んでみる?」
眞智子が引きつった笑みで佐那美の胸ぐらを掴み挙げる。そりゃ怒るわな。
「だったら、西側に行く?あっちはこの建物プラスマンションがあるからあそこは13階だったかしら。たぶん落ちたら新聞載れるわよ。」
相変わらず馬鹿な事を言っている。それに新聞載れるというかみんなそろって新聞沙汰である。
すると元家が、「姉さん、違うよ。」といって佐那美の前に割って出てきた。
「小野乃先輩。実は上からバンジージャンプするシーンがあって。でも、本当にバンジージャンプすると大騒ぎになっちゃいますからその辺はCGでごまかします。ゴムでぶら下がったシーンを撮るのに逆立ちしてもらえれば後でうまく編集します。」
「えっ、ここで私逆立ちするの?」
「そうです。その時、何人かで先輩の足を持ちますから、一瞬だけ支えている手を放して気をつけの姿勢になってください。」
そう元家に説明を受ける眞智子。釈然としない様子である。
「嫌よ。私、今日はスカートだし・・・」
それに眞智子はバイクに乗る以外は基本的にスカートである。抵抗感もある。
すると、佐那美が眞智子のスカートを指さし
「不良なんでしょ?援交しているんでしょ?パンツぐらい見せるの平気でしょ。それに誰もその汚ったないの興味ないんだから。」
と他人事のように指示する。
そんな言われ方すれば、眞智子だってカチンとくる。
「ふざけんな!!今の私はヤンキーじゃないし、援交なんてやったことないから!!そんなにパンツ見せたければ、お前のパンツみせてあげたら?」
と眞智子に言い返されると佐那美は
「いやよ。あたしのは。」
と他人はよくて自分はダメというジャイアニズムな言い訳で切り返した。
当然、眞智子の回し蹴りを食らうこととなる。
すると、美子がしょうがないなとばかりに「私が買ってきたジャージ貸してあげる。」と助け船を出してきた。こういうときは女の子同士になるものである。
眞智子は美子から差し出された赤のジャージズボンをスカートの中に履くと佐那美が一発勝負で撮影すると言い出した。
それぞれ配置につく。
今度は美子も僕と美子が一緒立っているシーンだが、今度は腕を組まず上から下に視線をずらし口元を抑え驚愕しているところから始まる。
そりゃ、こんなところからバンジージャンプをすれば驚愕するほどの出来事だ。
まずはそのシーンを撮影。
そして、僕らの目の前で眞智子がぶら下がっているシーン。
眞智子は、とりあえず逆立ちをして眞智子の足をジャージ、スカートごと佐那美と琴美とで抑える。
なお元家は僕らの脇を歩く通行人。
その眞智子の背後から僕らが映るようにマサやんが撮影するっていうものだ。
「本番行くからね。アクションのかけ声で、眞智子は『気を付け』してくれる?」
「ちょっと、あんたらちゃんと私を持ち上げていてよね。」
「オッケースよ。」
「そんじゃあ、アクション!」
眞智子は地面に付いてる手を放し『気を付け』状態になる。
しかし、その瞬間・・・・佐那美がニヤリと悪意ある笑みを浮かべると佐那美の手から眞智子の足がするりと滑る・・・ていうか、佐那美が途中で手を放しやがった。そして琴美が支えきれずに・・・・
ガン!!
眞智子は頭から地面に激突する。
一応、地面から数センチくらいから激突なので、それほど大事には至っていない・・・と思うが、一瞬眞智子が気を失ったようにぐったりと倒れる。
さすがに僕と美子は驚愕の表情がリアルに出ていたと思う。
眞智子の脇では「あらごめんなさい。」と悪意ある満面の笑みをたたえている佐那美が、そしてその脇で顔をこわばらせ佐那美と眞智子を交互に見る琴美。
その背後にはスマホを持ったまま固まっているマサやん。
元家にあってはその場に腰を抜かし泡を吹いている・・・きっと自分の姉のその後を恐怖しながら心配をしているのだろう。
「はいカット!!」
佐那美はにっこり微笑みながら
「いやぁ・・ごめんね、ごめんねぇ~。地面に直撃しちゃったみたいね。でもリアルで良かったよ。」
と倒れ込んでいる眞智子の肩をポンと叩いた。
倒れている眞智子は体をぴくりと動かすとその半身をゆっくり起こした。
そして痛そうにうずくまって悶絶している。かわいそうに・・・・。
美子と僕は急いで眞智子に駆け寄り、眞智子の頭を見る。
幸い、切り傷はなさそうだ。でもたんこぶができあがってしまった。
「あんた大丈夫なの?」
「眞智子さん・・・頭グラグラしないか?」
眞智子はしばらく悶絶したあと、何かの線がプチンと切れたようで
「うん・・だいじょうぶ。」
とあのケロロ目でフフフと不気味な笑みを浮かべ拳に力を込め震わせていた。
きっと怒りに震えているのだろう。あぁ、眞智子こうなると手に負えないんだよなぁ。
眞智子は僕らにケロロ目でにこりと微笑みながら立ち上がると、佐那美の前にゆっくりあの目を維持したまま近づく。
「あらあんた大丈夫だったみたいね。よかったよかった。」
そう言ってケラケラ笑い続ける佐那美。
眞智子は
「一瞬、お花畑が見えたわよ。あははは・・・・すばらしい景色だったわ。佐那美にもぜひ見せてあげるわね。」
と淡々と佐那美に語った後、佐那美の頭に対して力一杯の手刀を振り下ろした。
ガン!!!
先ほどよりもちょっと鈍い音をたて佐那美がつんのめりぶっ倒れた。
空手3段の手刀はかなり効いた事だろう。天罰が下った佐那美は白目向いて気を失っている。
「すばらしいお花畑でしょ?気に入ったなら・・・もう戻ってこなくていいわよ。」
眞智子はざまーみろと言わんばかりに佐那美に吐き捨てた。
でも本当にお花畑に行かれると色々困る。
「ちょっと、眞智子。いくら佐那美がスゲー馬鹿だとしても、あんまり頭は叩かない方がいいわよ。馬鹿がよけい馬鹿になるわよ。」
先ほど被害に遭った美子が、一応注意してみたが、眞智子はずっとイライラしていたせいか、今度は美子にまで、あたり始めた。
「でも、美子は私のおかげで、ヤンデレからブラコンに落ち着いたんだろ?」
ヤンデレとブラコンという言葉にカチンとスイッチが入る美子。
「は?あんた今のショックで馬鹿になった?礼兄さんは私の男なの。ヤンキーの癖に妄想だけは大したものね。一人でオナってろこのエロヤンキー。」
「お前がそれを言うか?ざけんなよ。」
「あん?お前から喧嘩ふっかけてきたんだろうが!」
その言葉で眞智子がヒートアップして美子の胸ぐらをつかみ出すと美子も負けじと眞智子の襟首を引っ張りお互いに顔面を睨み付けるところまでに発展した。
これは困りました。
ダメ元で、ちょっと方法を変えてみますか。
「はい、ミスターモミーが仲裁に入りますよぉ。」
僕がそういって彼女らの肩をポンポンと叩くと、彼女らは一斉に、
「ちょ・・・!」
「あっ・・・!」
と『当事者同士』ではなく『僕に対して』距離を取り始め、警戒して自分の胸をガードしてした。
なんか、泣けてくる・・・
「そんことより、佐那美へのチョップ、何か凄い音していなかった?」
僕は眞智子に少し過剰気味に尋ねると、彼女はめんどくさそうに
「頭蓋骨は割っていないわよ。どうせ佐那美だもの、ナメクジみたいな脳しか入っていないわよ。」
と悪びれる事なく答える。だからちょっと脅してみる。
「本当にそうなの?」
「・・・大丈夫よ、一応、思いっきり加減したし。」
いや、思いっきり殴っていたよね?
「でもさ、これ以上彼女おかしくなった、誰かが責任とらされるぜ。」
「うっ・・・」
「僕が彼女を嫁にもらう事態になったら、ホント困るよなぁ・・・・」
そこまで脅してみる。すると、美子がすぐに反応した。
「眞智子、何やっているの!すぐにあんたの医院に連れて行く!!今すぐに!!」
美子は目が血走りながら眞智子の胸ぐらを締め上げた。
眞智子の家は個人医院である。
そこまでは求めてはいなかったが・・・それに越したことはないがお互いの険悪なムードを吹っ飛ばすのに丁度いい。
「確かにそうなるとマズイ。わかったわよ・・・しょうがない。うちでMRIかけてみる?」
と答えが返ってきた。あぁ、多少は良心が残っていた・・・
でも、そのあとがちょっと酷かった。
「きっと佐那美の頭は空洞だらけだからね。あぁ楽しみっ!!ついでに美子の頭も診てあげるわ。きっと『兄』って漢字が一杯入っているだろうから。」
眞智子は目を輝かせながらうれしそうに微笑んでいた。
おいおい不謹慎だろ、僕はそう思いつつも彼女の笑みが不覚にもかわいく思えた。
でも、美子の頭は脳内メーカーとは違うから!
この後は眞智子の親父、おいちゃんこと道三医師がただ働きさせられるわけであるが、おいちゃんのおかげで眞智子や美子も佐那美も無事であることが確認できた。
ただ眞智子としては
「なんで佐那美の脳みそスッカスカじゃないのかしら。」
と佐那美の画像データを見ながら納得していない様であった。
次の日
昨日は佐那美の独善的な撮影のおかげでうちの美子と眞智子が酷い目にあった。
佐那美に文句言ってやろうと、登校時に佐那美が行っているであろう剣道部の朝練に行こうとしたが、眞智子と美子に止められた。
なんであんなに酷い目にあったのに止めるんだと尋ねると、美子も眞智子も同じ理由であった。
「なんでって、そりゃ礼兄さんの文化祭に協力しなきゃね。一応言っておくけど、それとは別に・・・・売られた喧嘩は買うわよ。」
「そうそう、佐那美のの文化祭のためにやっているんですもの。がんばって貰わなきゃ・・・・ぶちまわす楽しみないじゃない。」
と指をポキポキ鳴らしながら不気味な笑みをたたえていた。
あ~ぁ、こうなると言うこと聞かないんだよね。さて、今度は誰が犠牲になるのかな。
・・・て思っていたら僕かよ。
佐那美の奴、昼休みにうちのクラスに乗り込んできて、「学校帰りに武道場付き合ってくれない?」ていうので、昨日の撮影メンバーとともに城址公園近くの武道場に行くことになった。
何で武道場なんだろう?
入口付近に佐那美がニコニコしながら手を振っている。
「一階に弓道場があるんだよ。ちょっと見ていかない?」
「はぁ、剣道馬鹿のあなたが何で弓道なんかに興味あるのかしら。」
眞智子が怪訝そうに佐那美を睨む。
「色々あってね。さあ、入った入った。」
そう言うと佐那美は僕の後ろにまわって武道館に押し込んだ。
さて、弓道場では皆さん袴を履いたお姉さん方が28メートル先の的を36センチの的目掛け弓を引いている。僕は彼女らを弓道ガールズと呼ぶことにする。
「神守君、こういうものも得意だよね。」
確かに僕は亡くなった爺さんから叩き込まれた神守流盾剣術を修得しており、それには弓道も少し混じっていたから的に当てることぐらいならできる。
でも、僕的には的場よりも射撃場の方がしっくりくるんだがね。
「・・・まあ出来ないことはないけど。でも弓と矢の準備していないよ。」
「あぁ、いいよ別に今日は射的するわけじゃないから。」
そう言って、佐那美は僕を空いている射場に案内する。
それじゃあなんで僕をこんなところに連れてきたんだろう?
僕は弓を引いている弓道ガールズをちらりと見たが、彼女らは僕の視線に気がついている様子であるものの、誰1人視線を合わせることなくそのまま弓を引き続けた。
何か・・・変だな。
そして僕の斜め前にはなぜか台車が置かれている。
「おい、佐那美この違和感バリバリの台車は何?」
「多分、荷物か何かを押すためにあるんでしょ。」
佐那美に聞く僕が馬鹿だったかもしれない。
美子と眞智子が疑いの目で佐那美を睨んでいる。
佐那美は台車の脇に立ちながらジッとまわりの様子を見ている。
「じゃあ、撮影始まるわよ。マサやんは的を狙っている彼女らをまず撮影して。」
「へいへい。」
「それで、神守君とマサやん以外は後ろで座っていて。」
「あんたうちの礼兄さんに何するつもりなのよ。」
「礼君に何かあったら・・・あんた確実にぶっ○すわよ。」
「はいはい。大丈夫、大丈夫!」
佐那美はそういって美子と眞智子を後ろへ追いやった。
そして、佐那美の『アクション!』の合図。
その合図に合わせ、弓道ガールズが一斉に弓を引き矢継ぎ早に撃ち放つ。
的なんか狙っていない。ありったけぶち込んでいる感じである。どうやら彼女らは佐那美に頼まれたエキストラの様だ。
佐那美はどういう絵を撮りたいのだろう・・そう思いながら弓道ガールズに目を向けていると、後ろに妙な気配を感じた。
振り返ると、佐那美が立っていた。僕と視線が合うと彼女はニッコリとほほえみ
「えいっ!」
というかけ声と共に、彼女は僕を両手で突き飛ばした。
「なっ!?」
僕は不意を突かれる形で足をふらつかせてしまった。
「「なにするのよ!!」」
眞智子と美子が立ち上がり怒声を挙げた。
僕は尻から倒れ込む。転倒防ぐため足をよろつきながら何とか踏ん張らせようと試みる。
だが、足下にあった物が僕の踏ん張りを打ち消してしまった。
僕は台車に足をぶつけてしまい、すくわれる形でおしりから台車に倒れ込む。
すると台車は僕を乗せた状態で滑走し始め、弓道ガールズと的の間のコースに向かい始めた。
「あっ!!」
端っこにいた弓道ガールズの一人が僕の異変に気づき声を挙げる。
その声で他の女の子も僕に気がつき、弓を降ろそうとするが限界まで張り詰めた弓を元に戻すのには間が合わなかったようで、何人かの矢が放たれてしまう。
僕はその矢を真正面から受けることとなる。
「礼兄さん!!」
「礼君!!」
美子と眞智子が悲鳴を上げる。その様子がスローモーションで見える。
彼女らの目には僕が矢に射貫かれる像が映し出されているのかもしれない。
その脇で、ワクワクしながら僕を見ている佐那美。何かあったら呪ってやるぞ!
琴美は腰を抜かし、元家にあっては口から泡を出して気絶しているようだ。
そして僕をとり続けているマサやん。奴はすまないと思っているのか僕から目線をそらしているが、スマホのレンズだけはしっかりと僕に向けられていた。
おいおい・・・しょうがない奴だな。
さて、なぜ僕がこんな状況でここまで冷静に状況を見回しているのか?
答えは僕、幼少の時分に交通事故で頭を強打しておりその後遺症で時間の流れを変える事が出来るのだ。
もちろん、時間そのものを早めたり遅めたりすることは出来ないが、僕が体感する時間を自由に変える事が出来るわけ。
ちなみに昔見たアニメで同じようなキャラクターがいたことから僕は「ルパンの敵症候群」といっている。
そして、僕がじいさんに叩き込まれた剣術には高速で流れてくるものを刀で避けるものがあり、鍛えた結果反射神経や筋肉の対応能力が研ぎ澄まされ、今では・・・・こういう事が出来る。
僕は滑走続ける台車の上で、まず
左から一番目の矢の矢柄を左手刀で受け流し、
二番目の矢は体を体を倒すことで回避、
続いて三番目の矢を体を倒したまま右手の人差し指で上方にはじき飛ばし、
体を床に倒して四番・五番目の矢を右足で台車を蹴り上げ台車を盾に弾き落とし、
最後に落ちてくる台車の取っ手を右手でつかみ滑車面を地面に戻して、
何事もなかったかのように彼女らの脇を台車で通り過ぎた。
もちろん彼女らはこの矢が僕に当たるのではないかと悲鳴をあげた様だが、それよりも僕の回避速度の方が十分に速いので、実際に彼女らが声を挙げた頃には僕はすでに回避終了していた。
もっともこんな事は朝飯前で、刀があればけん銃の弾でも打ち払ったり、弾自体を切断したり、弾の速度や進入角度を変える事が出来る。だから去年までアルバイト先のハリウッドで引く手数多のアクションスターを演じることが出来たわけ。
話を戻すがそれにしても弓道ガールズがしゃがみ込み泣いているところを見ると佐那美の奴、ろくな説明しないで射的させたのだろう。
さて、これから僕は佐那美を説教しなければならないようだ。
だが、そうするよりも先に美子と眞智子が彼女を壁に押しつけ胸ぐらつかみ、
「礼兄さん、今日『風邪気味』フラフラだったのよ。もし避けられなかったらどうするのよ!!」
「礼君、今日『腹痛』で痛がっていたのに!もし避けられなかったらどうするのよ!!」
と僕を気遣ってくれた。もっとも風邪気味でも腹痛でもなかったわけだが、そうでも言わなければ佐那美の奴は反省することはないだろう。
美子と眞智子の猛抗議で事の重大さにようやく気がつき、嗚咽を挙げる佐那美。
「ごめんなさい、神守君・・インフルエンザなのに・・・食中毒なのに・・・ジステンバーなのに・・・こういうことさせてごめんなさい。うぅ・・・」
ちなみに僕はインフルエンザでもないし、食中毒でもない。ましては犬がかかるジステンバーでもないので、そこのところよろしく。
「今の僕はレインじゃないんだからさぁ。無茶させるなよ。」
「うぐぅ・・・」
僕はその辺でやめておいたが、美子と眞智子の怒りは収まるわけではなく、
「あんた、こういう事するなら、もう礼兄さんに近づくな!!」
「それに二度と私らに顔を見せるんじゃねえ。」
と責め立てる二人。
「うええええええええん。だって、だってぇ・・・」
それにしても、やられたのは僕なのだが、泣いている佐那美を見ているとなぜか僕の心が痛む。これ以上女の子を責め立てて泣かすのも本意ではないので
「もういいよ。これ以上後味を悪くしないでくれ。」
といってその場はこれで収めてもらった。
あと余談だが、その後すぐに弓道場の管理者が
「こら、おまえら何やってるんだ!!」
と怒鳴ってこっちに来たので、うちの責任者を差し出し、管理者とエキストラの弓道ガールズらに謝罪させたのは言うまでもない。
もちろんうちの責任者とは佐那美とマサやんである。
佐那美はぐしゅぐしゅに泣いているので、差し出すつもりはなかったが、眞智子と美子の「これ以上の責めないけど責任はとりなさい。」という温情ある恩赦を得たことから彼女にも謝らせることにした。
当然、二人だけ頭を下げても納得するわけないので最終的には僕ら全員が頭を下げ許してもらった。