寒い冬
最後の連絡だと思っていた頃から、約半月たった頃、彼から電話が来た。
「久しぶり。」
相変わらず久しぶりから始まるんだなぁ、と思いでも正直嬉しかった。
半月間、私は無心で仕事をした。
仕事が休みの日は、家に引きこもりなにもせずにぼーっとしていた。
あっ、一つだけ変わった事と言えば、髪を切った事、かな。
「うん!どーしたの?」
「いや、ただ元気にしてるかなって思って。」
「元気だよ。」
「そっか、久しぶりに近況報告でもしない?」
「良いけど、彼女は良いの?」
聞きたくはない。でも、聞きたい。自分でも自分の気持ちなんて分からない。
でも、好きだから知りたい。
「いや~、付き合ってないよ。そう言うのも会って話そうよ。」
「うっ、うん。分かった。」
「すぐ出られる?」
「うん。出れるよ。」
「じゃあ、家の下まで行くから、あと5分後くらいかな。」
「了解。じゃあ下で待ってるね!」
電話を切った後、洋服は何にするか悩む。
でも、新しく買った自分的には可愛い服をチョイスする。
着替えると、急いで家の下に向かった。
懐かしい車だ。
彼を車越しで見ると、嬉しくて飛び跳ねそうだった。
「久しぶりだね。洋服、買ったの?」
「うん!どうかな?」
「うん、いいんじゃない?」
その言葉だけで、凄く嬉しくて飛び跳ねそうだった。
「今日は違う所で食べようよ。」
「じゃあステーキがいい!」
「じゃあそうしよう。」
懐かしいなぁ。ってまだ半月なのに、こんな風になっちゃう自分が最悪だわ。
彼は人のもの、人のもの。と何度も念じた。
「それで?上手く行ってないの?」
「まぁ、ね。ってかあんまり会ってないかな。約束しても仕事が忙しいらしくて、ね。」
「そうなんだ。給食?みたいなの作ってるんだっけ?」
「そうそう、あと、付き合ってないよ~」
あっ、そうなんだ。私てっきり付き合ってると思ってたわ。
ってか、なんで付き合ってないの?
「へっ、へぇ~」
「で、そっちは?」
「私はあの連絡最後にする前から連絡取ってないよ。」
「えっ、なんでまた。」
「まぁ、色々?彼じゃないなって思っちゃったの。なんだろう。好き、とかじゃないんだよね。」
「そっか。じゃあ映画の後は会ったりしたの?」
「あの後、1回だけね。」
「そうなんだ?」
「そっちは?」
「うーん、5回くらいかな?」
いやいや、約1ヶ月で5回じゃ結構会ってるだろ。でも、彼はあんまり好きじゃないのかなぁ。
「それで?どうしたの?」
「いや、連絡来ないから、こっちから無理にはしないよ。」
「そうなの?」
「うん。」
なんか、冷めてるなぁって思ったのが印象的だった。だって、私が連絡しないとすぐ電話攻撃して来た人が、人は変わるものだなぁって思った。
その仮彼女さんに、染まっていくんだろうなぁとも。
それから半年間は、その女性の影をチラチラ感じながらも彼と会うのは辞められなかった。
好きだったから。諦めるなんて出来なかったから。
「婚活パーティ、行ったら?」
彼のこの一言で、私も行ってみることにした。
「私は、たけちゃんが好きだよ。私は、やり直したいと思ってる。」
何度も今までこの半年言ってきた。
でも、この言葉を聞き入れられることはなくて。
「うん、でも、性格は合わないし、生活のズレもあったし、やっぱり結婚は出来ないよ。ただのお付き合いなら今みたいな感じだよ。僕は結婚したいしね。」
この言葉で決意をして、婚活パーティに行くことになった。
そして、その夜に連絡が来る。
なんでこの人はいつも知りたがるのだろう。
もうそっとしておいて欲しい。
「で?成果はどうだったの?」
「うーん?カップリングはしたよ。」
「そっか、おめでとう。」
泣きそうな声に、なんでだったら受け入れてくれれば自分は彼と結婚だってしたいのに。って思った。でも、彼は私には違う人をと思っているらしい。
「ご飯食べてきたの?」
「ううん。お茶しただけ。」
「えっ?そうなの?」
「うん。でも、なんか違うなって思っちゃうんだよね。」
「そっか。どんな話したの?」
「とあるアニメの話で盛り上がったよ。」
「そうなの?毎年一緒に見に行くやつ?」
「うん。」
「そっか。良かったね。」