夏から秋にかけて
付き合って約8年、そして9年目に差し掛かろうとするそんな時美樹は突然彼に別れを告げられた。
彼は私とは結婚出来ないと、私とは付き合うなら良いけど私とは結婚出来ないらしい。
確かに、この8年間彼に心配をかけ、彼に迷惑を掛け続けた。
でも、私は彼とは宿命という名の元で結ばれていると信じてる。
でも、一つだけ私は思った。
もし彼が誰かと結婚したらそこで諦めよう、と。
だから私は彼から連絡が来るまで待ちます!
これは、別れた直後の話だ。
彼から連絡が頻繁にくる。あっ、元カレか。
なんでこんなに掛けてくるんだろ?と思いながら、美樹はうっとおしそうに元カレからの電話に出た。
「久しぶり、元気だった?」
いや実は、三日前に一緒に夜ご飯を食べたばかりだ。
なのになにが元気だった?だ。
「うっ、うん。元気だよー。でも今日は仕事疲れたー」
「そっか、今からご飯行かない?」
実はそうだろうなぁとは思っていたけど、今気になる彼が出来た。
正直、元カレになどかまってなどいられないのだ。でも、元カレの誘いには何故か乗ってしまう。なんて自分は甘いのだろうか、そう思った。
「うん、いいよ。じゃあどこがいい?家の近くでいいかな?」
「了解!じゃあいつもの場所で。」
電話を切ってため息をつく。
まぁ仕方ない、ご飯も安く食べられるしまぁ近況報告と行きますか!
バス停で待っている間、婚活アプリで他の男性から連絡が来ているかチェックをする。
でも、どの人ともこの人って人がいない。
8年間、いやもう9年目になった彼といやいや、元カレか。別れたから仕方ないのかなぁと思いながら、いつもの様にいつもの場所に出向いた。
メッセージアプリにもうすぐ着くと送る。
でも、今頃は車で向かっているだろう。
いつも自分は判断を誤ってしまう。
でも、彼とは別れたのだ。
それ自体も誤りだと、この時の美樹は気付かなかった。
「久しぶり~」
そんな久しぶりでもないけれど、連絡してくるじゃん!と、今の美樹は憤りすら感じていた。
「うん、久しぶり。」
「何食べる?今日は奢るよー。」
大体、彼とは11歳も違いそもそも奢ってもらってもいいのだけど彼は大体割り勘だった。
お金がない、という理由だったけど付き合った当初は誰かと結婚してるんじゃ?とかよく心配したものだ。
それだけ嫉妬するくらい彼が好きだった。
「えっ?いいの?」
彼がムッとする。その時、彼の地雷を踏んでしまった事に気付く。
「あっ、ありがとう。」
「ん。それ辞めた方がいいよ。僕には良いけど、こっちの思いを踏み躙られるみたい。」
「ごっ、ごめん。」
あぁ、いつもこんな風に言われて、喧嘩になったなぁ。だから別れたんだっけ。
性格が合わないって事で。
「なんか、誠意が感じられないけど、まぁいいや。で、何食べる?」
「私、カツ丼がいい!」
「じゃあ、押して。」
ここで、さっと押してくれてもいいんじゃない?
寧ろそこは押せよ!!
無言で呼び鈴を押した。
「それで?いい人紹介された?」
「うーん、まぁ一人とはご飯行ってる。」
そう、近況報告とは彼曰く私の事を大切にしてくれるのか?チェックらしい。
「そう。で?どうだったの?」
「うーん、楽しかったよ~」
でも、正直気持ちはまだ彼にあるのだから、好きまでは行かないのだ。
素敵な人だとは思う。でも所詮そこまでなのだから。
「そっか、どこ行ったの?」
「映画見たよ!すっごく楽しかった!」
多分自分は意地悪な奴だなぁとは思う。だって、彼は映画館より自然が大好きなのだから。
自分は自然も好きだし、映画も好きだ。
でも、アニメの映画は一年に一度もやっていて、それにはいつも着いてきてくれた。
優しさは本当に、分かりにくいくらいな優しさだった。自分では感じ取れないくらいの。
「そっか。良かったね。僕も本格的に動かないと、だね。」
「うん!今は婚活パーティとかあるんでしょ?行ってみたら?」
「そうだね。行ってみる。」
そこから、全てが変わってしまった。
いや、その前から私が彼と別れた時から、彼とは終わっていたのに。なのにも関わらず自分は彼に違う人を進めたのだ。
自分から。