EP.03 プロフェッショナル 天使の流儀
なぜ 世界を救うのか?(ピアノのSE)
「やっぱり……天使ですからね。僕は主が創られた世界を守ってこそと思ってるんで」
――――そう語るのはサタン、多元宇宙の保存を目指すひとりの天使だ。
「やっぱり天使もだいぶ数減っちゃたじゃないですか、自殺したり殺されたり自殺したり。それで残った方々も別のことやってる……僕みたいなのはマイノリティなんでしょうけど、だからこそ! なおさら世界を救わなければならないんですよ」
――――『世界を救う』……その秘策とは?
「ヨブちゃん、つまり救世主を雇ってます。戦闘力のない僕にとっては彼が頼りですね」
――――しかし、救世という重労働に対して極めて安い手当で済ましているという噂が……。
「いやー、こっちだってケチしたいわけじゃないんですよ……待ってください、ブラック企業とかそんなんじゃ無いですからね!?」
――――サタンはおもむろにノートPCを開く。これはこの仕事に欠かせない奇跡論の粋を集めて作られた天使のアイテムだ。
地球のマップが映されている、そこには細かく株価や物流の流れが表示されていた。
「『神の見えざる手システム』です。因果律の歪曲により、自然な形で富が集中されるように弄っています
……と、言いたいところなんですが、ここまで経済が複雑だと大したお金が集まらないんですよね……下手に歪曲すると世界経済がぶっ壊れますし。
これは今後改良される予定ですので、ヨブちゃんには今までの分含めて十分な給料を払えるようになるでしょう、努力しますよ、ほんとに、マジで、多分(次第に小さくなる声)」
――――え~、サタン様の奇跡でそこまでできますか~?
「努力はするよ! ていうかこれザガンちゃんが作ったものなんだから彼を呼んで改良させればいいじゃん」
――――あいつ死にましたよ。
「…………そういえばそうだった」
大きくうなだれて大きな溜息を吐くサタン。
少しして顔を上げると、目の前にいるもう一人の天使に命令した。
「止めだ止め、ダンタリちゃんカメラ降ろして」
眼鏡を掛けた幼い少女型の天使が言われた通りに撮影を終了した。
「止めちゃうんですか~、しかし何でこんな映像作っているんです~?」
「どうやら世界を救うということに対して不真面目に見られているんじゃないかと思ってねぇ。『僕だって色々考えてるんだぜ』って伝えたかったワケよ」
「ヨブノスケ様に真面目な態度で接すれば良いのでは~?」
「い や だ ね(鋼の意思)」
今更態度変えるのもめんどうくさいのだろう。
そうしているとPCに通知が表示される、どうやら世界の危機を感知したらしい。
「ム、これは緊急を要するがすぐ片付けられる事案だ。ヨブちゃん飛ばしてくる」
「いってらっしゃいませ~」
少女の天使に見送られると、サタンは全知無能の大図書館を抜ける、無用な情報の数々を踏み散らしながら。
そして虚空の中に佇む一枚の扉の前に立つ。
〇 ● 〇
「結局のところ貴様のやっていることは焼け石に水ということだ
100の世界が滅んでる間に1の世界を救って何になる?
無駄、無意味、無価値
下らん憐憫と自己満足を棄てろよ、サタン
……楽になるぜ?」
〇 ● 〇
「今日も一日頑張るぞい!!!!」
元気よく掛け声を唱えて、扉を開ける。
ガチャリ
そこにはあっけにとられた顔をしたヨブノスケがいた。
便器に座っている……どうやら用を足している最中だったようだ。
「は?」
「救世だ」
「は???」
こうしてヨブノスケは問答無用で救うべき世界へ雑に転移させられた。




