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プロローグ


 ――幸せとはどういうものなのだろう。


 この疑問は、よく槍玉に挙げられがちではあるけれど、その答えを明確に出せる者はいない。

 つまるところ、幸せを定義することが難しいのだ。

 お金があることが幸せ、友人がいることが幸せ、恋人と一緒にいられる時間が幸せ、長生きできるのが幸せ……。

 幸せだなんて、個々の感覚次第でしかない。


 自分はとてつもなく不幸だと思っている人がいたとしても、自分よりも不幸な人間を見ると安堵感を覚える。そうして少し救われる。

 そう考えていくと、実際、不幸な人間と幸せな人間とは、その両極端の二人の人間しかいないのではないかと思ってしまう。


 いくら不幸な人間だとしても、その先の人生で良いことが起これば、それは幸福と呼べるし、いくら幸福な人生だったとしても早死にしてしまえば意味がない。

 偉人には早死にが多いと言うけれど、そういったところで世界はバランスを取っているのかもしれない。

 死んでみれば、人間の幸せの度数は皆同じくらいに調整されているのかもしれない。


 ただ、生きていなければ、幸せとは感じられないから、相対的に見て死とはやはり不幸なことだ。

 そこで、仮に『生』そのものを幸福だと定義して考えてみる。

 生きていて辛いという人は山ほどいるとは思うが、これはあくまで仮定だ。




 もしも、この世界に、幸せになればなるほど、生命が短くなっていく人間がいるとしたらどうだろう?

 もしあなたが、幸せになればなるほど、寿命が縮んでいくとしたら、どうするだろう?




 あなたは、生きることと、幸せでいること、どちらを選びますか?




 僕はそんなことを心中で問いながら、作品名『生の幸福』作者『水無月』と書かれた絵画から目を離した。


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