#1 人の意思を操る男
人は己の意思で動く生き物である。何を考え、何を思い、何をするのか。それはその人自身がそれぞれ操るもの。しかし、意思とは様々な方法でその意思を他人が壊すことができるものである。それとは反対にその人を守るために操れるものでもある。
「ここで、速報です。今日未明、行方不明となった少女、8歳の女の子が無事保護されました。発見されたのは昨日行方不明になったとされる山から10キロ離れたところだそうです…」
「へぇー、よく見つけたなぁ。」
ふわふわのクロワッサンを食べながら、藤山が言った。
「なぁ、そうは思わないか?だって、10キロだぞ?よく見つけた、あっぱれ、と言いたいところだよ。」
真斗は黙々とご飯を食べている。
「はいはい、食事中は黙ってろ、でしょ。これだから、ボンボンは嫌いなんだよ。」
「まぁまぁ、そう仰らずに…」
秘書であるじいやが藤山の飲み物を注いだ。
「じいやさん、こう言っちゃなんだけどさ、御宅のボンボンはこれでいいと思ってるのかね?人の話を無視してまでそんなに朝ごはんが大切なんですかね?」
「まぁまぁ、これは真斗様ご自身の判断にお任せしますよ。」
ふふふっ、とじいやは笑った。
「おい、真斗。あのな、世の中にはたくさんの…」
「ごちそうさまでした。じいや、出発の準備を。」
「はい、出来ておりますよ。」
「おい、真斗!」
「あ、いたのか?何してる、早く行くぞ。」
じいやと真斗は外へと出て行った。
「…。バカなのかアホなのか…。」
そう呟いて藤山は後をついて行くように外に出た。