第5話 暗闇の冒険
大手術から時間が経ち、日は傾いて夜となると家の中は暗闇に包まれる。
第5話 暗闇の冒険
「ついに幻の財宝が隠されている。洞窟を発見した。これより調査を開始する」
人工知能を搭載したロボット「アピ」が台所に置いてあった爪楊枝を護身用の武器として装備してテーブルの上でポーズを決めた。
設定は、昔の盗賊王が隠した金銀財宝がこの洞窟(民家)にあるということだった。
「盗賊団の亡霊が財宝を守っている。そいつらの戦闘は避けられないだろう。しかし、ここで引くわけには行かない。暗視スコープ!」
と言ってヘッドに搭載されていた。ライトが煌々と付けた。
暗視スコープなんて元々持っていない。
ライトで照らされた世界を見渡し、テーブルから勢いよく飛び降りる。
ガランガラン
テーブルの脇に置いてあったゴミ箱に見事に入ってしまった。
「しまった敵の罠に掛かった!だが、こんな罠なんて私には効かないぞ」
勢い良く飛び上がり、ゴミ箱から脱出する。
ライトに照らされた絨毯を一歩一歩確かめるように歩んでいく。居間を出て真っ直ぐ進むと人間の衣服が積んである畳の部屋に行き着いた。
もう、何年もその場所から動いてないらしく、膨大な埃がそれを証明していた。
部屋の真ん中には台が置いてあり少女が飛び乗ると
ブイーンと効果音を鳴らして少女が爪楊枝を構える。
「現れたな亡霊め!この私が退治してやる」
と何もない虚空に向かって蹴りを入れたり、爪楊枝で切り込んだりして闘い始めた。
飛び上がり、避けたりの動作を繰り返し亡霊の懐に入り込むと爪楊枝を真っ直ぐ突き立てた。
もちろん、そこに亡霊がいるはずもなく少女の想像の世界で闘いは繰り広げられていたに過ぎない。
「ふ、所詮はこの程度。財宝は私の物だ」
と不敵の笑みを浮かべて台から降りる。
埃が溜まっている衣類に降りてしまい一斉に埃が舞い上がった。
「まずい、防御姿勢!」
と宣言すると身体を伏せて衣類の間に身を隠す。ヘッドに付いているライトも消すと真っ暗で何も見えなくなる。
「敵の盗賊王の亡霊がやってきた。まだ、あれに見つかる訳にはいかない」
と言って息をひそめる。
もしも発見された時のために、爪楊枝は両手でしっかりと握り気配を殺す。
亡霊は、頑丈そうな体躯で辺りをウロウロと ていた。あの時に偶然、衣類の中に居なかったら見つかってやられていたことだろう。
亡霊が何もいないのを確認すると、畳の部屋を出て行って、家の階段を上がっていった。
少女もホッとしたように衣類から這い出てくると亡霊が昇って行った階段(アピがそう解釈した)をライトを付けながら見据えた。
「やはり、財宝は2階にあるようだ。しかし、それなら警備も厚くなる。ここは慎重に」
ソロリソロリと忍び足で畳の部屋から出て行くと、先ほどの居間に通じる戸の左側に階段がそびえ立っていた。
「ここが亡霊の巣窟••••••気をつけないと」
爪楊枝の尖った部分を前に向けながら一段一段、確認するように上がっていく。
階段には、段のようになっているため上段と下段の間には大きな隙間があった。
その隙間は、少女の身長の半分程であり、ヘッドライトに照らされて奥の壁が見える。
「足を滑らせたら、奈落の底!やはり、一筋縄ではいかないようだ」
足元をヘッドライトで照らし安全を確認しながら、上段を照らしよじ登るように上がっていく。
ジャンプをしてしまえば、足を滑らすかもしれないし、亡霊に見つかるかもしれない。
安全配慮にこした事はない。
時折、壁にペタリと張り付く動作をして亡霊をやり過ごす。
果たして、それで見つかっていないのか疑問が残るがゆっくりと時間を掛けて2階に行く。
2階に着いたら階段側の引き出しに身を隠し、爪楊枝を四方八方に向ける。
「よし、無事潜入完了!財宝はこの先だ」
幾多の亡霊の目を掻い潜り、空いている部屋へと物陰に隠れながら進んでいく。時には、匍匐前進もした。
入った部屋には、ベッドが部屋にあり、机の上には大量の書物が乱雑に置かれていた。
科学の本もあれば、国語の文法、小説などの本もあり、大変な読書家であることが傍目からも明らかであった。
机の脇にはダンボールが置いてあり、少女はそれに気がつくと
「ついに、財宝を発見した」
と都合良さげ言って走り寄る。
ダンボールの上には、整理しやすいようにメモが貼ってあり
[皐月 アルバム ] と書いてあった。
その名前に少女は、目を丸くした。
「これって!私を造ってくれたマスターの名前!」
爪楊枝なんか投げ捨てて、急いでダンボールを開ける。幸いにもガムテープで留められていることなく容易に開封することが出来た。
中にあったのは、ビデオテープではなく写真が収められたアルバム冊子。
ヘッドライトに照らされた様々な柄のアルバムが仕舞い込まれている。
亡霊の設定なんて忘れてしまい、本当に欲しかった自分の財宝を見つけることが出来た。




