第3話 人形事故
発見した機械の箱3つを取り出して、自分の中にあるメモリーを探ってみた。
「!?これって、ビデオじゃないかな?映像や音声を記録できる装置」
直方体の箱に収められていたのは、ビデオテープであった。
DVDが主流となる前にテレビ番組を録画するのに一役かっていた記録装置である。
少女は、嬉しそうにカセットを1つ手に取るとテレビの下に搭載されているビデオデッキの所へジャンプした。
これを、セットして再生すれば自分を造ってくれたマスターのことが少しは分かるかもしれない。
気分は高揚し、VHSの入り口にビデオを差し込もうとするがなぜか入って行くことがなかった。
「あれ?確かこれに入れてテレビを付ければ見えるはずなんだけど••••••」
試しに、テレビの電源ボタンを押してみるが全く反応が無かった。
「??••••••あ!もしかして電気がない」
人類がいなくなってしまった世界に電気が発電が出来るわけもなく、各家庭に電気が供給されていることはなかった。
「しまったなぁ!せっかく手掛かりを見つけたのに電気が来てないじゃ見れないや」
とカセットを元の箱に収め、腕を頭の後ろに回しながら居間を後にした。
「さて、次の遊びは何にしようかな」
この時は、少女アピ自身も気づいていなかったが、アピの動力源となっているのは内部にあるバッテリーである。バッテリーには、電気が貯められているのだが、電気が供給されていないということは、充電ができないをこと意味する。
つまり、アピが稼働していられるのはバッテリーにある電気の分だけであり、電気が無くなってしまえばテレビと同様に機能が停止し、動くことも遊ぶことも出来なくなってしまうのである。
バッテリーの容量があとどのくらいなんて知らない少女は、その問題を問題として取り上げることはなかった。
静かにその時は少女に否応なく迫ってきている。
仮面人形を取り出した玩具の箱の中に身を埋めながら色々と玩具を取り出している。
「ありそうなものだけどな」
と呟きながら、バイクやキャラクターシールを箱から出しては捜索を続ける。
玩具の箱の手前と奥、左右を行ったり来たりしながら望みの品を見落とさないように顔をあちこちと向きを変える。
すると視界に赤と白のコントラストが入った車の玩具が入った。
「お!あったあった」
と他の玩具を押し退けて、両腕で持ち上げる。頭の上までくると嬉しそうに
「あった!やっぱ救急車がないとリアリティが乏しくなるからね」
と行動をしたのだが、少女の身体は腹の部分を支点に玩具の箱の端に引っ掛けている状態で、救急車の玩具を上に持ち上げている。
つまり、前面に倒していた重心が後ろに反り返ってしまいグラッとバランスを崩した。
「うわ!?」
救急車の玩具を持ち上げているので、全く受け身が取れず盛大に尻もちをついてしまった。
「痛たたた、痛い?」
少女はロボットであるので、人間のように痛点は存在していない。
それなのに思わず言ってしまったことを不思議に思いながら少々首を傾げたが、あまり気にせず脇に転がっている救急車の玩具を持ち上げて、意気揚々と物置から出て行った。
今度の遊びの設定は、病院だ。
前回の闘いで腕が取れてしまった仮面人形を天才医師の「アピ」が治療していくというものだった。
片腕が取れた仮面人形を寝転ばせたテーブルに次々と道具が用意してあった。
引き出しの中にあったカットバン
ピンセット
なぜかハサミ
そこに救急車を持った少々が調子良さ気に居間に入っていく。
テーブルに上がるなり、救急車を置くとソファに横転している車の玩具を落とし穴に気を付けながら持ってくる。
「さて、まずは事故のようすから」
と言うと車の前に仮面人形を運んで寝転ばせた。
本当なら、仮面人形には立っていて欲しいものだが、車の操縦をしながら人形を持っていられないので仕方ない。
そして、ゆっくり車を後ろから押して仮面人形に当てる。
すぐさま、少女は車から手を離して仮面人形に駆け寄ると
ガシャン ヒュウウルル
と効果音を出しながら、ゆっくり回転させて車の真上を通過させる。
それは、人体が見せる神秘「走馬灯」を彷彿させるようであり、少女が快く楽しむためのスローモーションであった。
「あっ!!トラさぁーん」
被害者の名前を叫びながら車の後方に数回ゆっくりとバウンドをして仰向けに寝かせた。
置いて安定したのを確認すると取れた片腕をそっと仮面人形の側に置く。
少女は、事故を起こした車をテーブルの端まで移動させると電話を掛ける素振りを見せて
「もしもし、事故です!救急車をお願いします」
とはっきりとした声で言った。




