しねませんでした
わたしを殺したあいつは言った。
僕もすぐいくからね、と微笑んで私の首を絞めた、めっちゃ苦しかった。
だから私は不本意ながら待っていてやったのだ。
一人であの世に行くのも悲しいから幽霊という姿で待っていた。
顔もかっこよかったし?
それにすぐいく、とか言うから自分を殺した張本人を待っていてやってるのに。
「死ねないとかさ…ばかなの?」
目の前の私を殺した殺人犯は、私の遺体を処分したあと自殺した。
高層ビルから飛び降りたのだ。
でも死ななかった。
お前の体はどうなってるんだよと言ってやりたいが、生憎私は幽霊の身なので私の声は殺人犯には届かない。
死人に口なしとはよく言ったものだ。
「ばかだなぁ」
目の前の男はぼーっと病室の白い天井を見ている。
死にはしなかったけど重症だったみたいで、沢山の機械が周りで動いている。
瞬きもしなければぴくりとも動かないから人形みたいだ。
こいつ、顔だけはいいから。
っていうか殺すくらい好きなら、愛の力かなんかで私のこと見えないのかよ。
そんなことを考えていたら、男が小さく私の名前を呼んだ。
そんな悲しそうに呼ばなくたって私はここにいるのにね。
なぁに?と返事をしてみても、男の寝ているベットの上に立ってみても、男は何も言わない。
まぁ見えてないのだから仕方がないのだけれど、なんとなくおもしろくなくて私は病室を去った。
病室を出て向った先は同じ幽霊の女の人の所。
彼女はずいぶんと長い間幽霊のままらしく、何でも知っていた。
どうしてあいつは死ねないんだろう、と黒い着物を着た幽霊さんに聞いてみました。
するとセクシーな女幽霊は平然とした態度で理解し難い回答をしてくれました。
「そんなの簡単だよ。きっとその男はまだ死ぬ運命じゃないんだ。」
「なにそれ、運命とかあるんですか。」
「あるよ、当たり前じゃないか。」
じゃあ私はあの男に殺される運命だったってこと?
なんてことだ…そんなの最悪すぎる。
「じゃああいつはいつ死ねるんですか」
「そんなの私が知るわけないじゃないか」
「えぇ…私、たぶんあいつが死なないと成仏できないんですけど」
「あっそう」
「ちょ、なんて適当な反応!」
だからあいつは高層ビルから落ちても死ななかったのか!ってことは何やってもだめなんだろうか。
麻酔なしで四肢切断とか?いや、それでも死なないってことなの?なんなの?あいつは化け物なの?
「いつ死ぬのか知ってるのは神様だけだよ」
「神様なんて、会えるわけないじゃないですか…」
「はぁ?神様なんてそこらへんにいるよ」
「は、」
「あんた何も知らないんだねえ」
そりゃ一週間前に死んだばかりの新人ですから。
っていうか神様ってそんな身近にいるんだ、ちょっと感激。
「ここにもいるんですか?」
「さっきフロアで寝てたけど」
「なんてフリーダムな神様」
「あ、でも今日は可愛い看護師を見てくる言ってたよ」
「それ本当に神様なんですか?」
知りたいなら会ってきなさい、とお姉さんに促されるまま病院一可愛い看護師さんにひっついているであろう神様を探しにいった。
私は早く成仏がしたいです神様。