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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

怖い噺

鬼灯の雅(ほおずき の まさ)

作者: 齋藤 一明

 フッ、 ザクッ。

 ムッ、 ザクッ。


 雅は渾身の力をこめて鍬をふるっている。


 フッ、ムッ、ウッ、ムン……。


 一鍬ごとに五寸ほどの土が掘り起こされる。

 一間ほども進んだだろうか、雅は掘り起こした溝を崩すかのようにすぐ脇に鍬を入れた。


 落ち葉に霜が降りてはいるが、鍬をふるうにつれ体がポカポカしてくる。差し渡し一間、幅五尺ほどを掘り起こした雅は、鋤に持ち替えて土を外へ掻き出した。

 。

 適度に湿り気を帯びた土は、表層の薄皮さえ剥がせばけっこう鍬の喰いつきが良い。

 雅が掘った穴は、およそ畳一枚分。鍬の柄を物差しがわりに寸法を測った雅は、僅かに顎を引いて満足げであったが、穴に降りると再び鍬をふるい始めた。


 雅という男、雅吉なのか雅助なのか、はたまた雅松なのか、詳しく知る者はいない。ただ、陰では鬼灯の雅とも呼ばれている。


 雅は逃散である。小作人の下で働く最下層の生まれである。

 雅が物心つき、一人前の体になるまではそれでも生きてこれたのだが、二年も不作が続けば、いかに飼い殺しであろうが、たださえ貧しい小作人には余力などなかった。一番の力仕事をおしつけられるというのに、雑穀が浮かぶだけの粥を日に一度ではただ死期を早めるだけであった。

 死よりも飢えの恐怖に追い詰められた雅は、同じ境遇にあった源と逃げ出したのである。

 農民が無断で土地を離れることが知れると、捕まれば死罪。そうでなくとも、新たな人別を願い出ることなどできず、無宿人となってしまう。

 雅は農民ではない。その下働きだから正確には逃散にはあたらないだろうが、世間はそれを黙認するはずがない。行く先で噂が広まれば役人の怠慢になる。ひいては藩主の恥になる。そうさせないために、また見せしめとして死罪になるだろう。


 それでも雅は逃げざるをえなかった。それほどに飢えは雅を追い込んでいた。


 雅と源は、獣すら通わぬ山奥を伝って何度も国越えをした。行くあてなどありはしない、多くの人が住む町なら食うぐらいはできるだろうとしか考えていなかった。

 しかし、街道に近づく勇気がなかったために、大きな町へ出るという願いがかなわず、この地に居つくことになったのである。


 フッ、ムッ、フッ、ウンッ……。


 腰の深さまで掘り進んで、雅は大粒の汗にまみれていた。


「雅、ちょっと休め。この調子なら昼までには片付いてしまう。こんどは俺が掘ってやるから」

 一番年嵩の徳治がもっそりと声をかけてきた。と同時に、いつの間に作ったのか、瑞々しい青竹の梯子が下りてきた。


 諸肌脱ぎになって汗を拭った雅は、手桶の柄杓で水をふくんだ。

 すっかり少なくなったはざ掛けと対照的に、点在する家の周囲は片付けのすんでいない藁が散らかっている。あと半月もすれば豊年祭りのはずで、今は年貢を納めるのに忙しい時期である。しかし今日ばかりは村全体が静かである。


「雅、一休みしたら道を手入れしてくれ。滑り易いでな、少し削って段々にするんだぞ」

 言いながら徳治は梯子を穴の外に出してしまいました。



 言いつけられた作業を終えた雅が戻ると、既に徳治は胸より深くまで掘り進んでいた。

「交替しようか、無理すると腰を痛めるで」

「今掻き出したとこだから、もう一回掘って上ることにする。それまで草刈をしておけ」

 穴の中から徳治が答えた。



「為吉! タメ!」

 穴の中から徳治が叫んだ。

「どうした?」

 手頃な太さの丸太をチョウナで四角くしていた為吉が呼ばれて穴を覗き込んだ。

「梯子を下ろせ、交替だ。こう暑くてはたまらん。」


 いかにも疲れた足取りで徳治が穴の外に上ってきた。

 初めこそしていた頬かむりは、すでに捻り鉢巻になっていた。


「いやぁ、暑いあつい。風が吹かんというのはたまらんなぁ。手の平まで汗でヌルヌルだ」

 手桶の水を何杯も飲み、切り通しでしきりと汗を拭った。


 雅がいる場所は村の正面にある山の中腹、寺の千年杉の梢を見下ろすような高台である。

 そこからは村全体が人目で見渡せる。細くうねる川も刈入れがすんで赤茶けた地肌をむきだしている田も、粗末な家々や真っ赤に色づき始めた柿の木も。

 それだけに風が強く、冷たさもひとしおである。

 しかしそんな風や冷気が心地よいのか、徳治は襟をバタバタさせてさかんに風を送り込んでいた。

 その目の下、ひときわ大きな名主の家から大きな篭を負った女がこちらに歩いてくる。いくつかの辻を曲がって歩く先には畑もなく、ただ穴を掘っているこの場所意外に行き先はない。雅には篭の中身が何であるか見当がついている。



 胸の深さだった穴が、首になり、頭が隠れ、かろうじて振り上げる鍬の先だけが見えるくらいになった。徳治は梯子を降ろして為吉を呼び上げた。


「もう一尺か一尺五寸も掘ればいいだろう。あとは見た目よく壁を均せば文句あるまい。弁当が届いたから先に食ってしまおうや」

 徳治は見晴らしのよい場所を選んで重箱を取り出した。


 煮物、酢の物、豆腐にこんにゃく。正月のような料理がぎっしり詰まっている。重箱の隅には、木の芽をあしらった押し寿司が四つ、体裁よく並んでいる。

 それぞれが一人前なのだろう、算段重ねはすべて同じになっていた。三合は入りそうな竹筒が三本。それとは別に一升徳利。塗りこそないが薄手の椀も添えられていた。



「どうだ、腹が減っただろう。朝早くからですまなかったが、村役だからなぁ。そのかわり、山焼きのときは楽させてもらえるからな」


 徳治は料理を二人に取らせると、椀を持たせた。

 キュッキュッ。徳利の栓を抜くと為吉に注いだ。そして雅の椀も、自分の椀にもなみなみと注いで徳利を置いた。

「それじゃあ、今日はご苦労でした」

 一息に半分ほど飲んで箸を取った。


 こんなにとりどりの料理が並ぶのを雅は見たことがない。いや、この村で暮らすようになって初めて知ったのである。

 だが、酒と料理を前にして心が弾まぬ者はいない。ましてや昼日中、労働の合間の酒である。怠けないよう見張られているどころか、酒は差し入れなのである。徳利だけで一升。仕事がすんだら持ち帰ってかまわない、つまり土産までついている。


 まあ一杯、まあ一杯と注ぎあううちに三人ともかなり酔いが廻ってきた。


「よし、とりあえずこれくらいにして、残りを仕上げてしまおう」

 徳治が椀を置いた。


「雅、もう一尺ほど掘ってくれ。為吉は土を運び出すんだ。こっちの山は俺が均しておくからな」

『やっぱり俺か』と、雅は思った。

 年嵩というのと土地の者ということで勝手気儘を押し通すつもりだろう。酒を飲ませたのも自分が楽をするためだろうが、そうはいくかと雅は腹の内で考えていた。


 素直に従うふりをして梯子を伝った雅は、足元の土を篭に詰めて頭上高く差し上げた。


 為吉が掘った土を掻き出すと、雅は手に唾をとばして柄を握った。


 フンッ、サクッ。フンッ、サクッ……。


 一鍬ごとに鍬が根元までサクッと入る。表層の固さとは大違いだ。どのあたりから柔らかくなったのか、きっと雅が最初に掘ったあたりからではなかろうか。でなければ、徳治や為吉の掘る速さが異常であった。二十歳をすぎて間もない雅でさえ腰の深さまで掘るのに汗みずくになったというのに、少し道を手入れする僅かの間に徳治は胸まで掘ってしまった。為吉にいたっては、雅が草刈りをする間に背丈を遥かに越えるまで掘り進んでいる。別に体格が優れているわけでもなく、力が強いわけでもないのにである。


『ぼちぼちだな……』

 五寸、五寸と二度掘った雅は、さらに鍬が吸い込まれることに嫌な予感を感じている。

 掻き出した後の地面をつま先でほじってみるといとも簡単に地面にめりこんでしまう。


『用心せんとな……』

 雅は、何度もなんども股引に手の平を擦りつけた。


 フッ、打ち込んだ鍬が固い地面に当った。

『やっぱり……』


 鍬が叩いたのは元々の地面なのだろう。今までは埋め戻した場所を掘っていただけなのだ。


 雅の手が止まった。五尺の六尺。ずいぶん深くまで掘ったから一尺くらいは小さくなっている穴の、どこへ次の鍬を打てばよいのだろう。


 右か、左か、真ん中か。


 ふんぎりがつかずに軽く振り上げた鍬を宙で停め、雅はどこへ打ち込むかに困っていた。忙しなく目玉だけをぎょろつかせた雅は、しっかり目をつむると軽く打ち込んだ。

 ザクッという手応えにホッと息を吐いた。

 しかし、土の色が黒ずんでいることに雅は気付いていない。朽ちた木片が混じっていることにも気付いていない。

 その右隣、やはりザクッとした手応えである。もう一度も同じであった。

 雅は鍬を打ち込む手応えにばかり気を奪われていた。


 左はどうだろう。意を決して打ち込めば、やはりザクッとした手応え。

 四尺ほどの幅いっぱいに打ち込んでみてもザクッとした手応えが返ってきた。

 半歩さがっても同じ手応え、また半歩さがっても同じ手応え。雅はだんだん息を詰めることをしなくなっていた。半歩さがっても目さえつむらず、淡々と鍬をふるいだした。


 フッ、打ち込んだ鍬が柄まで埋まりこんだ。

 雅の手が止まった。酔いさえしていなければ青ざめるだけですんだかもしれない。が、酔いは雅を大胆にさせていた。


 サクッ、カツン……


 鍬の先が固いものに触れたようである。手加減していたつもりだが、鍬の勢いは大して殺がれていなかった。


 土をおこすなどできず、雅は静かに鍬を抜いた。

 ずいぶん昇った日が穴の底を照らしている。白銀に光る鍬の刃先をキラキラと照らしている。その刃先に細い髭根のようなものが付いていた。


 じっとそれを見つめた雅が鍬を放り捨てた。

「徳さぁー、徳さぁー!」

 雅は叫びながら梯子を上りかけていた。


「どうした? 何をそんなに慌てて……」

 徳治が穴の縁に顔をのぞかせた。反対側には為吉の顔もある。


「出た! でたでたでたでた、毛が出たぁ!」

 雅は掘るのをやめた場所を示しながら、きつく目を閉じていた。


「毛かぁ? そりゃまあ毛ぐらい出ることはあるぞ。俺も何度かそういうことがあった。心配するな、どうせ毛だけだ」

 為吉が馬鹿にしたように囃し立てた。


「ちがう! カツンって音がした!」

「どうせ石じゃないのか? そんなに怖いのか? 鬼灯の雅って名前はこけおどしか?」

 為吉はさらにいいつのり、果ては嘲り笑いさえしてのけた。


「徳さぁー、どうするんだ? 早いとこ決めてくれ! でなきゃ、こっから出してくれ!」

 雅は徳治に指示を仰いだ。もちろん出てよいという言葉を願って。


「雅、そう怖がるな。ここへ埋けたのは五年も前のことだ。それに場所も避けてあるから怖がることは何もないぞ。為の言うように大昔の毛だろうよ。そんな石くれ、掘り出してしまえ」

 徳治も為吉と同じことをいった。しかもそれを石くれと断じ、掘り出してしまえとまで言った。


「嫌だ! そんなことは絶対に嫌だ! 石じゃなかったらどうするんだ! 俺は絶対に嫌だ!」

 狭い穴倉の中で雅の絶叫がワンワン鳴り響いた。


「わかった! 叫ぶじゃねぇ! 箕を落とすから、その中に入れろ。見なくていいぞ。鍬に載せたまま箕に入れろ。そうしたら手拭いで覆え」

「嫌だ! 誰が自分の手拭いなんかで覆うもんか。手拭いも落としてくれ。そうでなきゃ出る!」

 雅はしっかり目をつむったままだったが、そこまでは譲歩した。


 カサッという僅かな音をたてて箕が落ちてきた。そして誰のか知らないがじっとり汗を吸った手拭いも落ちてきた。


 顔を背けたまま地面を探り、手拭いを帯紐に絡げ、箕をしっかり掴んだ。そして鍬の柄を探す。

 雅は、さっき打ち込んだ場所へ恐々近づいていった。額から胸から玉の汗が噴出してくる。薄目にしようと思うのにクワッと開いた目は瞬きさえ忘れている。


 さっきできた穴に鍬を挿し入れ、ぐっと抉じてみた。

 ググッと土が盛り上がっただけである。


 五寸ほど先に鍬を打ち込んだ。

 スカッと土中に埋まりこんだ鍬をぐいっと抉ると、何やら塊が盛り上がってきた。

 咄嗟に雅は箕を塊に被せていた。少しでも見ないですむように、顔を背けたままである。しかも、息さえ止めていた。


 塊が箕に収まると、雅は手早く手拭いをかけてその上に土を盛った。


「為さぁ、引き揚げてくれ! 早くしてくれ!」

 雅は、梯子の真下で箕を精一杯差し上げていた。少しでも早く厄介払いをするために、足だけで梯子を一段、二段と上ってもいた。


「ぎゃあーーーーー」


 穴の外で絶叫がわきおこった。雅はその時梯子の下で膝を抱えて蹲っていた。


『きっとそうだ、あれは石なんかじゃない。……そうだ、石なんかであるもんか……』

 雅の頭の中はそのことでいっぱいだった。だから、外に出たくない。あれの正体を見るくらいなら、穴倉のほうがましだと思っていた。が、時がたっても二人の声は聞こえてこない。それでは外がどうなっているのかさっぱりわからない。それに、一刻でも早く逃げ出すためには是が非でも穴倉から出なければならない。


 抱えていた腕が頭をかきむしった。それなのに、どうすればよいか思案がつかない。


『待てよ、為さぁは梯子を上ってどうしただろう。あいつのことだ、どうせ穴から出たところにあれを降ろしたに違いない。だとすると、梯子を反対側に倒せば……。案外うまくいくかもしれん』

 何の根拠もなく雅はそう決めた。


『もうこれ以上掘るのはやめだ』

 雅は、穴の中の道具を一纏めにすると梯子を反対側にもたせかけた。


 ほぼ垂直に立っていた梯子だが、一間も遠くに架けかえたことで道具を抱えたまま昇れるくらいに傾いている。


 頭が出るところまで昇った雅は、正面を向いたまま、恐るおそる目を開けた。

 妙な物が転がっていたらすぐさま反対側に向きを変えるつもりでいたのだが、じわじわと目に入る光景はどこといって異常はない。ただ、その向きは出入り口とは正反対だった。


「徳さぁ、為さぁ。もうだめだぁ! 許してくれ!」

 雅は誰もいない山肌にむけて怒鳴った。二度、三度と怒鳴った。


 しかし、何一つ応えがない。


「徳さぁ、為さぁ! おるんだろ? 意地悪せんで返事してくれ」

 怯えきった声になっている。



 返事がないことに痺れを切らした雅が恐々振り向くと、目の高さに人影がない。

『まさか……、二人して逃げ帰ったのではあるまいな』

 疑いながら、まさかそれはなかろうと雅は想いを打ち消した。しかし、それにしては凄い悲鳴だった。穴の底にはっきり届くほどの絶叫だった。だとすれば、気でも失っているに違いない。

 そう思った雅は、上を向こうとする目玉を無理やり地面に向けていった。


 尻が見えた。着物の柄は徳治であることを示している。土にまみれた尻を高くかかげ、頭を突っ伏している。


「徳さぁ、為さぁは?」

 いくら訊ねても何も返ってこない。


『まさか!』

 雅はゆっくり視線を下へ向けていった。


 視界ぎりぎりに黒い塊が見えた。『うわぁぁぁ!』勝手に目が閉じる。


 その塊を見ないように気をつけながら周囲を見回したが、為吉の姿は消えていた。



 誰かが急ぎ足で坂を上ってくる。その足音は雅の耳に届いていた。


「徳治、支度はできてるだろうな。もう川を渡ったぞ、おっつけ着くが、いいか?」

 坂を上がってきたのは、小作の差配をしている末松だった。徳治と同い年で、算盤ができることで重宝されているのだが、小心者である。

 坂の方を向いて頭を抱えている徳治を見て、すでに青ざめている。


「末松さぁ、為さぁがどこかへ行ってしまった」

 雅は、ようやく話す相手が現れたことでほっとしていた。


「為の奴、決まりを忘れて逃げてきおった。いったいどうなっとるんだ!」


 状況を知らずに怒鳴る末松に、雅は指差すことで応えた。


「……うわぁぁぁぁぁ……、なんでそんなもん掘り出したんだ! 落とせ! 早く落とせ! 土被せて見えんようにしろ!」

 末松は怒鳴った。怒鳴りながらも、目を塊から外せないでいた。


 土壁の藁のように土くれの中から覗いた夥しい髪が鞠となり、その中に骸骨が眼窩に土を詰めた眼で末松を見据えている。


「ひやぁぁぁぁぁ……ぅぅぅ」

 膝が崩れた末松は、徳治と相撲でもとるように頭を地面にこすりつけていた。


 末松の言うことは絶対である。雅はなるべく塊を見ないように鍬を伸ばした。ふっと力を抜けば掘り出した土に落ちる。そして、そのまま穴の中へ転がした。どこに落ちたかを見もせず、土を掻き落とした。


「……末松さぁ、落としたで」

「は、梯子を上げろ。も、もう新仏が着くぞ、早くしろ。徳治! 山へでも隠れてろ! 本当に役に立たん奴だ」


 雅は急いで梯子を上げ、何やらぶつぶつ言い続ける徳治を山に追いやった。

 そして穴のまわりに積み上げた土を均している時、リンの音が間近に迫っていた。



 これを機に鬼灯の雅という異名が一人歩きすることになる。三度に一度は雅が墓穴をほることになった。逃げ帰った為吉は村の笑い者になり、徳治も以前のような羽振りはきかなくなったとか。

 だがそれを哀れんでいる者がいる。雅と末松の二人には徳治と為吉の恐怖がよくわかっている。


 つい四十年前までは行われていた土葬。失われゆく記憶の断片である。


 おわり


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― 新着の感想 ―
[良い点] とても興味深く、おどろおどろしいお話ですね。怖い怖いと思いながらも読みたくてたまらなくなる、そんなお話、大変面白く読ませて頂きました。 土葬はつい数十年前まで、地方では行っていた場所がいく…
2016/04/03 14:00 退会済み
管理
[良い点] 墓堀の緊迫感と、それを行う存在を逃散民として点に凄まじいリアリティを感じました。 未だ落ちきらぬ陽の下であるからこそ、より恐怖心が増します。 [気になる点] 後半分かり辛い、処(多分に記述…
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