2−5「能力、条件、戦闘開始」
、を×にすると某アニメのタイトルっぽくなってしまうのは偶然でしょう、きっと
「ちんたらやっても仕方ねえ」
そう言ってビドゥーは魔力を込めた方の手でアルプを指差した。
「お前を千発ぶん殴る」
そう言ってもう片方の手で手招きしてアルプを挑発した。
「あら、挑発してるの。面白いわぁ」
アルプが少し近づいてきた。
「私の能力・・・知っていて接近戦だなんて、馬鹿なのかしら、それとも・・・」
いきなり加速してビドゥーの目の前に飛んできた。
「何か策でも?」
アルプがビドゥーに向かって両手を伸ばす。
「殴るだけさ」
何故かビドゥーはその場から一歩も動かず、身体を反らしすことでアルプの手を自分に触れさせないように避ける。
「ただしっ」
拳をアルプに繰り出す。アルプは多少のダメージは覚悟していたので気にせずビドゥー身体を触ろうとする。
ドスッ
拳がアルプの腹部にめり込む。
「がふっ」
アルプは苦しみながらもビドゥーに向かっていく。
(これは痛い・・・けど、まだ命はたくさんある。10人分くらい使ってもコイツを喰う!)
そう考えていると、腹部の痛みがどんどん激しくなってきた。
まるで何度も同じ場所を連続で殴られたかのように。
「あ、あがっ!!」
痛みはどんどん激しくなっていき、アルプは耐え切れずにその場に倒れこむ。
「あがががががががが!」
痛みは全く止む気配を見せず、どんどん強くなっていく。
「千発、だ」
「は・・・はがっ、あ・・・・あっ!!!」
常人なら最初の一発目でとっくに弾け飛んでしまう威力のビドゥーの拳を腹に受けて、アルプはしばらくもだえ苦しんでいた。
喰った人間の数だけ命があるアルプは、腹が吹き飛んでもすぐに再生する。
だがまたすぐに腹が吹き飛ぶ、再生する。それを何度も繰り返していた。
ほんの数秒の出来事だった。
「す・・・すごい、」
リドルとシオンが驚嘆した。
「何が起きたんだよ・・・一体」
「だから言ったろ、千発殴ったんだって」
ビドゥーが殴ったほうの手を押さえながら言った。
「ち、意外に硬いな・・・アイツ」
その手は出血で真っ赤になっていた。
「でも殴ったのは一発で、それにその怪我っ!」
リドルが慌てて持っていた鞄から消毒液と包帯を取り出して手当てをしようとしたが、ビドゥーが手を突き出して無言で「今はいい」と伝える。
「それが・・・“魔術”か」
シオンが言った。
「おう、シオンてめえやっぱり賢いな」
ビドゥーは最初に会った時と同じような口調になっていた。だが、顔は笑っていないし、冷や汗が出ている。
「俺の能力は“千手観音”。相手を一度殴っただけで千発分のダメージを与える術だ」
発動条件は対象に向かって「お前を千発殴る」と言うこと。
そして言ったあとはその場から一歩も動かないこと。
条件は厳しいが、一発で石畳に小さなクレーターを作るほどの威力なので、喰らったら確実に・・・
死ぬ
「だがきっちり千発殴った分の反動をこっちも受けちまうのが痛いんだな、ったく」
ビドゥーがそう言って、シオンとリドルを手招きした。
「なんですか?」
ビドゥーは二人に手を上げるように指示した。二人は言うとおりにする。
パン、パン
するとビドゥーは何故か二人とハイタッチを交わした。
何の意味があってやったか分からないでいる二人にビドゥーは説明する。
「俺のもう一つの能力“選手交代”だ。これを駆使して奴を倒す」
ハイタッチを交わした相手となら瞬時に位置を入れ替えることのできる能力。
対象とハイタッチをしてから三十分以内、目視できるか半径100メートルに対象が居ることが発動条件。
能力名を叫んだあと、対象の名を言うことで発動できる。
「いいか、もうアイツに“ノック”は当てられねえ。だがアイツを倒すにはこれじゃなきゃ無理だ。並みの攻撃じゃ奴を殺しきる前にこっちが消される。・・・だからお前たちはアイツに触られないようにしてギリギリまで近づけ」
そして、“シフト”で一気に間合いを詰めて“ノック”を放つという作戦だった。
「最低三回は奴に当てる必要がある。だが気をつけろ、奴の手には絶対に触れるな」
リドルが聞く。
「なぜ?」
「昨日奴と戦ったときに分かったことだ」
ビドゥーは説明した。
アルプの能力は“夢喰”
相手の夢の中に入り込み悪夢を見せながら命と魂を削る能力。
魔力を操れるものには抵抗力があり、ほとんど効かない。
もう一つの能力は“魂喰”
直接両手で触れた相手の魂を一気に喰らう能力。
抵抗の無いものは一瞬で、あるものは数秒で溶かされて吸収される。
「アイツ余裕かましてペラペラと喋っていきやがった。それでも勝つ自信があったんだろうな」
「この夢の中みたいな空間はアイツの能力とは別なのか?」
シオンが聞いた。ビドゥーが頷く。
「別の奴の能力だろうな。敵か味方か・・・とにかくその事は後だ」
「アイツに触わられずに、アイツに近づく・・・」
リドルが言った。何か考えているようだった。
「お・・・しゃべりは、もう・・・終わった?」
アルプがよろよろと立ち上がってくる。
「私が千人も死んだわ、こんなの初めてよ。屈辱」
アルプが三人を睨みつける。
睨まれただけなのにものすごい威圧感を感じる。
夢魔が本気で怒りをあらわにした瞬間だった。魔力があふれ出し、周りの地面や建物の壁がビキビキとひび割れていく。
「お前を、千発殴る」
ビドゥーがアルプを指差して言った。
「どうぞ、できるものなら」
アルプは笑っていなかった。
だが、絶対に当たらないという自信に満ち溢れているように見えた。
(・・・頼んだぜ、ガキども)
「あなたは後にして、まずあの子達から頂くことにするわぁ」
アルプがシオンたちの方に飛んでいく。
「来た、やっぱり俺たちが先か・・・リドル!」
「大丈夫、僕がやる。援護お願い!」
リドルはそう言って鞄から魔道書を取り出した。
シオンも上着の裏側に隠してある投げナイフを数本取り出して構える。
「まだ魔術は使えないけど、僕には“風”がある。シオンもいる!だから負けない!」
魔道書が光りだしてリドルの周囲に風が巻き起こる。
「ほほほほほほほほほほほほほ」
高笑いをあげながら猛スピードでアルプが二人の方に近づく。
「行くぜ!」
「うん!」
リドル 「ちなみに空を自由に飛べます、魔法で」
シオン 「魔力で無理やり脚力を強化すれば、空中でジャンプとかできます」
アルプ 「素で飛んでます」
ビドゥー 「垂直跳びで10メートルは軽くいけるぜ、おう」
(・ω・)「聞かないで下さい」