2−2「魔導師、導くもの」
説明台詞GJな回
裏タイトルは「教えて!リドル先生」
陰鬱な空気の立ち込める中、シオンとリドルは宿を探して歩き回る
目の前にふらふらと道を歩いている男性がいたのでシオンは話しかけてみた。
「すいませんがこの辺りに泊まれるところは・・・」
「あ、ああ・・・だめだ、眠い、眠い・・・寝たら、寝たら俺もきっと・・・」
「いや、だから泊まるところを・・・」
「だめだ、寝ちゃ駄目なんだ・・・寝たら・・・ああ・・」
「・・・失礼します」
男性はまるで寝言でも言っているかのように、途切れ途切れでどもった口調で喋った。
その後何人か当たってみたが、誰も彼もが似たような答えを返してきた。
「うう、何なんだこの町は・・・会う人会う人に話を聞こうとしてもまともな答えがまるで帰って気やしない」
「何か事件か何かが起きたんじゃない?」
「まさか、国民全員が寝ぼけてるとか・・・は無いだろうなあ」
目をこすりながら眠気と闘いながらまともに話ができそうな人を探す。
しかし会う人は皆足元が覚束ない状態でふらふらと歩いている、本当に寝ぼけているような人ばかりだった。
そのうちの一人が突然歩くのを止めた。
「う・・・あ・・・来るな・・・」
その場に崩れ込んで呻き声をあげる。
それを見たシオンとリドルは今までの人間とは違う行動をとったその一人、まだ若い青年の様子をじっと見ていた。
「あ、ひ・・・駄目だ・・・やめ・・・」
青年が何かに怯えるようにその場から後ずさった、次の瞬間
「てっ」
青年の体が赤いドロドロした液体に変わって、弾け飛んだ。
衣服はそのままで、赤い水たまりの上に青年の着ていた服が浮かんでいる。
赤い液体はどうやら血ではないようだ、別の何からしい。
この光景を見てシオンとリドルは一瞬何が起きたか理解できなかった。
「え・・・何、今の」
リドルが口をパクパクさせながら、やっと言葉を紡いだ。
「ひ、ひが・・・人が、溶け・・・あ・・んな・・・に・・・」
シオンも流石に動揺してまともに話せなかった。
しばらくしたら赤い液体は地面に吸い込まれていった。
土に吸収されたというよりは、何か別のものに取り込まれたという感じだった。
「一体・・・何なんだよ、あれ・・・」
「人が、眠たそうにしてて・・・でも寝ちゃ駄目だって言って・・・そしたら、あんな風に溶けて・・・ああ、もう何が何だか・・・」
シオンとリドルが慌てふためいている時に、後ろから他の人間たちとは少し違う足音が聞こえてきた。しっかりとした足取りのように聞こえた。
「・・・っ誰だ!」
シオンが叫んだら、足音が止まった。
後ろを振り向くと男性が立っていた。スーツ姿の長身でがっしりした体格の中年男性だった。サングラスをかけている。
「おう、俺だ」
スーツの男は意味不明な返事をした。
冷静さを欠いているからか、気付くのが少し遅れてしまった。
恐らくこの男が敵で、それなりの実力の持ち主だったらシオンかリドルがとても生きてはいけないほどの傷を負わされていただろう。
「お、俺って言われても・・・」
リドルが少し怯えながらスーツの男に向かって弱弱しく言った。
「おうおう・・・悪い、名乗ってなかったな」
ガハハと笑いながらスーツの男は両手を腰に当てる。
「俺の名はビドゥー、一昨日この国に入ったばかりだ。連れが二人いる」
「ビドゥー・・・さん?」
「おう、お前らは?」
「あ、はい・・・シオンといいます」
「り、りど・・・リドルです」
ビドゥーと名乗る大男の雰囲気に気圧されて二人は少し怯えながら名乗った。
「シオンとリドルか。まだガキだってのによく旅ができるな。やっぱお前らもあれか、“魔導師”か」
シオンの知らない単語が出てきた。
「マドウシ?」
「え、シオン知らないの?」
リドルは知っている風だった。
「魔導師ってのはね、魔力を導く者のことで・・・要するに魔力を自在に操れる人のことだよ」
「魔力ってのは?」
「・・・本当に知らないんだね、シオン」
珍しいこともあるもんだとリドルはシオンを馬鹿にするわけでもなく、本当に驚いていた。
「まあいいや、魔力っていうのは精神エネルギーのことで普通の人の目には見えないけれど空気中にも人の体内にも、どこにでもあるんだよ」
「ふーん、まるで酸素か何かみたいだな」
「まあ、そう考えたほうが簡単だよね。で、それを自分の意思で操ったりできるのが魔導師」
「で、魔力を操れると何ができるんだ?」
「そうだね、色々あるけど・・・身体能力の強化とか魔具を扱えるってことかな、とりあえず」
「魔具って?」
「魔法道具の略だよ。魔法や魔術なんかが使えない人でもそれを媒体にすることで魔法を使えるんだ」
「何かまた出てきたな、魔法と魔術って何だ。何か違うのか」
シオンがそういった後リドルが何だか目を丸くしてシオンをじーっと見ていた。
「・・・なんだよ」
「いや、シオンの質問があまりにも的確すぎて感心した。おかげで説明がスムーズだよ」
「ほっとけ」
「・・・で、話を戻すね。魔法ってのはまあシオンも知ってるような火とか氷とか風とかを生み出す能力のことだよ。呪文や魔法陣とかで使えるやつね。・・・で、魔術ってのはそれとは違った特殊な能力で人によって使える魔術が違うんだ」
「・・・例えばどんな?」
「うー・・・僕は魔術なんて使えないから良く分からないけど、どんなものでも液体に変える能力とか逆に固体にする能力とか・・・」
「何か使い勝手が微妙だな」
「でも魔法と違って魔力を操るのが上手くなくても使えるし、上手く使いこなせば強力・・・らしいよ」
「そう本に書いてあったのか」
「うん」
「お前本好きだからなー」
「おう、話が大分それてるんだが、そろそろいいか?」
「あ、ご・・・ごめんなさい。ビミョーさん」
リドルがビクッと震えて驚いたあと、ビドゥーに謝った。
「ビミョーじゃねえだろ・・・」
小さくリドルに耳打ちした。リドルは「しまった」という顔をした。
「おう、いいんだ別に。そんなビビんな、俺が傷つく」
ビドゥーは全く気付いていなかった。
「・・・いや、何かもう・・・すいません」
シオンとリドルが同時に謝った。
「ガハハ、だから気にするなって」
とりあえずもう一度二人は謝っておいた。
すっかり二人の緊張感は消え去ってしまっていた。
リドル「さて、みんな分かったかな?次回は四つのクリスタルと暁の戦士について教えるよ」
シオン「5かよ」