1−3「彼らの作る町」
リドル「商人ばかり集めると商人の町になったり・・・」
シオン(・・・・・・?)
リドル「神父さんやシスターばかり集めると大聖堂になったりするよね」
シオン「何の話だ」
「だいたい10人くらいですか、岩の陰に隠れているんでしょう?」
シオンがそう言うと、本当に岩陰から人がぞろぞろと出てきました。だいたい10人くらいでした。
「いつから気付きましたか」
でてきた中の一人が聞きました。
「確信したのはあの人が“私たちの町に”と言った辺りからですね。それまでは動物か何かだと思っていました」
「なるほど、ならば私たちがどういう存在なのかはわかりますか?」
リーダー格の男性がシオンに聞きました。
リーダーの質問にシオンは正直に答えました。
「いいえ、でも興味はあります」
「うん、気になる。できれば聞いておきたいな」
リドルも正直に言いました。
「どうやら“彼”にも気付かれているようなので、お話しましょう。まず私たちは野盗ではありません・・・見た目がこんなですが」
着ていたボロボロの衣服を手ではためかせて、リーダーが言いました。
他の仲間たちはそれぞれ適当な岩場に腰掛けました。
シオンとリドルも座りなおしました。
「私たちは彼のいた国からやってきました、彼を見守るために」
リーダーは少し間おおいたあと、話を続けます。
「彼は我々の国では英雄と言っていい程の存在でした。それだけ偉大な武人だったのです・・・」
「続きを、お願いします」
「はい、彼は我々の国の王国軍に属していて・・・かつての我々の部隊長でした。彼はとても強く、そして賢く・・・・優しくあり、我々にとっては素晴らしい上官でした」
「しかし、ある日国内で内乱が起きました。首謀者は彼の幼馴染で同じ村で育った、彼の親友でした」
風が吹いてきました。砂埃を巻き上げ、一瞬だけ視界が悪くなりました。
そのとき、シオンにはリーダーの目から何かが零れたように見えました。
「彼は迷いましたが親友と、自分の育った村を焼き払いました。その時私たちは彼の判断は間違ってはいなかったと思っています。でも、彼は悔やみ続けました。“自分は何のために今まで戦ってきたんだ”・・・と」
他の仲間たちも悲しい表情を浮べていました。何人かは涙を流しています。
「内乱の首謀者である彼の親友と村が壊滅したことで内乱は終わりましたが、彼は軍を辞めて国を出ました。“もうこの国にいる理由が無い”と、そう言って」
「ならあなた達は、どうしてここに居るんですか?」
シオンが聞いたら、リーダーは笑顔で答えます。
「私たちも、その村で育ちましたから」
「・・・」
「続き、話してもいいですか?」
シオンとリドルは少し驚いた顔をして
「え・・・」
「あ、はい・・・どうぞ」
と、言いました。
「それから色々とあって、我々は彼を影から見守ることにしました。彼は私たちを必要とはしていませんから余計な手出しはしたくなかったのです。でも、私たちには彼が必要だった・・・だから我々も国を出ました。家族はこの部隊でしたから」
「彼は、気付いているんでしょうか?」
「はい、恐らく・・・でも気付いていないふりをしているのでしょう。でもいいんです、これで」
風が冷たくなってきました。もうすぐ日が暮れて夜になってしまいます。
「ああ、もうこんな時間ですね。こんな下らない話に時間をとらせて申し訳ない」
「いえ・・・お話が聞けて、とても良かったです」
「これからもあのおじさんを見守ってくの?」
リドルが聞きました。リーダーとその仲間は全員笑顔で頷きます。
「ええ、もし彼の邪魔をしようとするものがいたら・・・。そのために私たちがこうして野盗に扮してるわけですから」
「最後に、一つだけ・・・いいですか」
シオンがリーダーに言いました。リーダーは「どうぞ」と頷きました。
「彼は、どうして軍に入ったんですか?」
シオンがそう言ったら、リーダーは声を上げて笑いました。
「ははは・・・あなたはとても賢い人ですね。彼から昔聞きました・・・“大切な人たちを守るため”だそうです。因みに彼の親友・・・女性です、彼がその女性の写真をいつも大事そうにしていました」
「そうですか・・・」
「では、私たちはこれで。他の小隊と合流する時間ですので」
「僕たちもそろそろ行きます。・・・いつか、ここに町ができる頃に、また」
「ええ・・・また、会いましょう」
でこぼこして歩きにくい道を、シオンとリドルはひたすら歩き続けます。
「ちょ・・・待って、シオン」
「早くしないと夜になる、もたもたしてたら置いてくぞ」
シオンは数メートルほど後ろでダラダラ歩いているリドルを無視して先に進みます。
「別にここに野盗とかが出るわけじゃないんだから野宿でも・・・」
「俺はふかふかのベッドで休みたいんだ、何としても」
「じゃあ、シオン一人で行ってよ・・・僕は一人でのじゅ・・・」
ガサガサと何かがうごめく音がしました。
「ひっ」
それを聞いてリドルは飛び上がって、すっかり離れてしまったシオンの方へ駆け出します。
「待って、やっぱり僕もふかふかベッドがいいいいいいいいぃ」
冷たい風が吹いてきました。
砂埃が舞い上がって、視界を遮ります。
それでも構わず二人は歩き続け砂埃がおさまり視界がよくなると、もうすぐ近くに町が見えてきました。
二人は歩き続けます。
つづく
<あとがきタイムズ>
ようやく終了第一話(・ω・ )
次回は剣やら魔法やら色んなバトルが展開されます