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1−1「道を歩く、僕らは」


エピローグとまた時間軸が大きくずれます


無駄なことかもしれない

私のしていること、しようとしていること、思っていること

全てが意味の無いことかもしれない


何をしたところで死んだ者は生き返ることは無く

私の中の悲しみも苦しみも消えることは無いのだろう


罪とは償うものではないのだ

償うことで許しを求めるものではないのだ


罪を受け入れ、罰を受けそれに報いて背負っていく

罪とは決して消えることの無い烙印なのだから

罰とは一時的なものではなく、その者の心に重く圧し掛かり

いつか潰してしまうものなのだから


許されようなどとは思ってはいけないのだ

償ってそれで終わりだとは思ってはいけないのだから


悪かったなどとは思っていない

そういった思いは許されようと足掻く愚かな自己防衛本能だから

もしあの時“本当に”そう思っていたら

今の私とは違った私がいたのだろう


間違ったことだとは思っていない

あの時も、そして今も、これからも


だがこの虚しさはなんだろう

この悲しさはなんだろう


結局私には正しい道など用意されていなかったのかもしれない

どの道も私を幸せにはしてくれなかっただろう


だからせめて私は死ぬまでに作ろう

迷うことなく歩める道を


そうすることで少しでも苦しみが和らぐのならば、忘れられるのならば

私はただただ道を作っていこう







シオンとリドルという二人の少年が居ました。

シオンは黒髪で年は十代半ば、体格は普通で精悍な顔付きの少年で黒のジャケットに紺のジーンズをいつも着ています。

リドルは銀髪でシオンより年下で、体格は年齢の割に少し小さな少年で白のフードつきのパーカーに黒いパンツをいつも着ています。


二人は平地を歩いていました。ところどころに雑草や花が生えていて赤茶けた大地に模様を描いて、あとは何もありませんでした。

道がでこぼこしていたので歩いていると二人は段々と足が疲れて、リドルが先に根をあげました。

「疲れた」

リドルがぼやきました。シオンは無視して歩き続けます。

「疲れたなあ」

リドルがひとりごちました。シオンは無視して歩き続けます。

「・・・・・・」

リドルは無言でその場にしゃがみ込みました。シオンは無視して歩き続けます。

「疲れたんだけどっ」

少し大きな声でリドルが喚きました。シオンは無視して歩き続けます


「・・・・・・」

シオンは無視して歩き続けます。

リドルは観念して立ち上がってシオンの元へ走っていきます。


「もう二時間近く歩き続けてるんだけど」

「一時間だ」

「足が棒のようなんだけど」

「気のせいだ」

「そろそろ休まない?」

「いや、もうちょっと頑張ろう。次の町まではまだ結構歩くと思うから、あんまりゆっくりしてると日が暮れてしまう」

二人はただひたすら歩き続けます。

リドルはまたぶつぶつと文句を言っていましたが、いつものことなのでシオンは無視しました。


更に一時間ほど歩き続けると、荒れたでこぼこ道が途中から誰かに整備されたかのようになだらかな地面の道に変わりました。

「変だな、地図にはこのあたりに町や村なんか無いはずなのに」

「でも歩きやすい、それはよいことだよシオン」

「そうか、ならあと一時間くらいは・・・」

「でもそろそろ休もうシオン、急ぐことも大事だけど適度な休息も必要だよ。“急いては事を仕損じる”というやつだよ」

リドルはシオンの言葉を途中で遮るようにして、もっともらしいことを言ってその場に座り込みました。

最後の言葉に関しては意味が少し違いましたが、本人は「してやったり」というような得意顔です。

シオンは「お前が言うと説得力がまるで無い」と言おうかと一瞬思いましたが、何だかもう色々と自分も疲れてしまったのでやっぱり止めました。


近くにあった岩場に座るのに具合がよさそうな岩があったので二人はそこに腰掛けました。

「結構遠くまで来たなぁ」

「そうだね」

二人はまだ旅を始めてまだ間も無く、三日前に村を出たばかりです。

「まだ不安だよ、旅を続けられるかどうか・・・」

シオンは少し困ったように笑いました。

「でも、ここまで来れた。この先どこまで行けるか分からないけど、僕たちはここまで来れたんだよ」

リドルが少し嬉しそうな顔で言いました。

「そうだな」

シオンも顔を綻ばせました。


しばらく休んで二人はまた歩き出しました。道が平坦なのでとても歩きやすく、リドルが喜んでいました。

「でも何でこのあたりは道がこんなにキレイなんだろうね」

タンタンと地面を足で叩くように踏みながらリドルが言いました。

「さあ・・・誰か人が住んでるんじゃないか?」

「ふーん、まあいいや」

リドルにとっては「歩きやすい道」であるだけで充分なことで、理由はどうでも良かったのでした。


更に歩いていくと、小屋が見えてきました。とても小さな木の板でできた粗末なもので、ちょっと人が住んでいるとは考えがたい小屋でした。

「あそこに住んでる人が道を整備したのかもね」

「どうだろうな、行って聞いてみるか?」

リドルは少し悩みましたが、結局気になって仕方がなくなったので行ってみることにしました。


「ごめんくださーい」

リドルがドアを叩きましたが小屋の中からは反応がありません。しばらく待っても中から物音が聞こえてくる様子はありませんでした。

「留守みたい」

「あるいはもう誰も住んでないのかもな」

「うーん、じゃあ誰がこの道を・・・」

もう一度ドアを、今度はもっと力強く叩いてみましたがやはり反応がありませんでした。

「うー・・・」

もう一度だけ・・・とリドルはドアを叩こうとしましたが、やっぱりやめました。この道ができた理由と道を作った人のことが気になって仕方がありませんでしたが、諦めて先に進むことにしました。



整備された道を更に歩き続けると、人が居るのが見えました。

近づいて見てみると、それは一人の男性でした。少し年をとっていて顔にはしわがいくつか見えました。

男性がこちらに気付いて手を振ってきました。リドルが元気よく手を振り返します。

そのあと男性は手にスコップを持って何かの作業を始めました。遠くからだとよく分かりませんが、何かを掘っているようです。

「行ってみよう」

リドルが男性のもとに走っていきました。シオンもそれを追いかけます。





リドル「50メートル走では六秒台です、えへん」

シオン「俺は五秒台」

リドル「・・・・・」

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