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2−7「戦闘中、思考中」


各頁の前書きと後書きは、あんまり見ないほうがいいかもです


「もうあなたたちの戦闘パターンは把握したわ、だからもうおしまい」

言った瞬間視界からアルプが消える。


「・・・リドルッ!!」

シオンが叫ぶ。

アルプが一瞬のうちにリドルの背後に回っていた。


シオンの声を聞いた瞬間リドルは羽衣で鎧を作り自身を包んだ。

アルプがリドルに触れようと両手を伸ばすが鎧に阻まれる。

「・・・く・・・ううっ・・・」

鎧が風を巻き起こしてアルプを押し返そうとするが、それでもアルプの手はリドルに近づいてくる。


「ぐっ!」

声を上げたのはアルプの方だった。

アルプの腕にはナイフが刺さっていた。

「リドル退がれっ!」

シオンが叫ぶとリドルは後ろに飛んで退いた。


「でえええいっ!」

シオンが思い切り斬りかかるが、避けられる

「ガキいいいいいいいいい!」

アルプがシオンに手を伸ばす。しかし伸ばした手がシオンに触れる瞬間弾かれた。


(また風か・・・っ)

「ちぃ・・・っ」

アルプは舌打ちをしながら風を振り払う。





(まずいな・・・)

タイミングを計っていたビドゥーは二人がアルプの背後をとったらすぐに“選手交代”をして攻撃を仕掛けるつもりだった。

(夢魔の動きが予想以上だ・・・あれだけ素早く動かれちゃいくら二人がかりでも後ろを取るのは無理だ・・・それに)

ビドゥーは全く動かなくなった自分の片腕を見た


(もう駄目だな・・・この腕、死んでやがる)

さっきから動かそうとしても激痛が走るだけで腕は殆ど動かない。血が乾いてそれ以上の出血は止まったが、はっきりいってもう動きの邪魔にしかならなかった。

(“千手観音”はこっちの腕でしか使えねえ・・・そういう条件の能力だ)

無いほうが体が軽くなるのでいっそ引き千切ってしまおうかともビドゥーは思ったが、まだ使い道があることに気付く。

(まだ牽制程度にはなるか・・・だが二度目はねえな、感づかれる)


ビドゥーの腕が使えないことはビドゥーしか知らない。

それを利用してシオンかリドルと“選手交代”して突然アルプの目の前に出れば、当然アルプは“千手観音”を警戒して一瞬動きが止まる。

止まらないにしてもほんの僅かな時間、コンマ数秒でも動きが止まればシオンがアルプに攻撃を当てられる。

(なぜ魔力で身を固めた夢魔に傷を付けられるのかは置いといて、あいつの斬撃をまともにくらえばこの押されている状況から一気に逆転だ)


勝負の鍵はアルプがビドゥーにどれだけ警戒をしているかという所だった。

戦闘には参加せず傍観している状態のビドゥーに攻撃を仕掛けない理由はいくつか考えられる。


一つはただ単に後回しなのか、これは良くないパターンである。もしアルプに三人同時に相手をする余裕があるのなら奇襲を仕掛けても対応される恐れがある。

もう一つはシオンとリドルの相手で手一杯なのか、これは最悪のパターンである。アルプに“勝てない”と判断されたらまず間違いなくアルプは逃げる行動をとる。そうされたらまだ残っている人間を根こそぎ吸収してさらに魔力を強化して再びこちらに向かってくるだろう。この国の人間を全て犠牲にするうえこちらも吸収されてしまうことは完全な負けに等しい。


そしてビドゥーが想定している“アルプがビドゥーを警戒しつつ、シオンたち二人とはやや優勢気味に戦っている”状況が最良のパターンだった。

その場合アルプは“あの男の攻撃を喰らいさえしなければいい”と思っているだろう。そうするとシオンたちには積極的に近づこうとするが、ビドゥーとは何かあっても対応できる距離を保とうとする。

仮説が正しければアルプがもっとも神経を使っているのは、“選手交代”でビドゥーが出てきた時に即座に対応できるようにするということだ。

たとえ多少のダメージを喰らおうともビドゥーの“千手観音”だけには当たらないようにする。

アルプがビドゥーを恐れれば恐れるほどこのフェイントの成功率は増す。


(きつい賭けだがやるしかねえ・・・成功か、死か・・・だ)




「はっ、やるじゃない。魔力で覆った私の身体に傷をつけるなんて」

アルプはシオンに向かって叫びながら考える。

(でも考えられない・・・物理的な硬さで言えば鉄よりも硬くなった私の身体に、僅かな魔力しか通ってない投げナイフなんかで傷をつけるなんて・・・)

アルプはビドゥーとリドルの能力は把握したつもりだが、シオンの能力はまだ基本的な魔力による物質や肉体の強化しか見ていない。

(魔法も魔術も扱えないという可能性もあるけど・・・いえ、もしかしたら・・・)



アルプの仮説は正しかった。シオンは既に能力を使っていた。

相手の魔力を切り裂く魔法、シオンが唯一使える魔法だった。

シオンはこの世界では非常に珍しい“無”の魔法を扱う人間だった。

(因みにリドルは“空”、ビドゥーは“時”と“空”の魔法を現時点で使用している)



“無”の魔法は他の全ての魔法とは隔絶された存在。

他の全ての魔法を消し去る特殊な魔法。

“無”の魔法を扱う者に対し、魔法使いたちは完全に無力となる。



この場合はシオンの魔法は不完全なので剣やナイフを媒介にしないと発動しないようだが、相手の魔力がどれほど強大でも“無”でそれを切り裂いて無防備な相手に直接ダメージを与える・・・

この状況でアルプを攻略する唯一の手段だった。






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