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神メンテで最強の美女ゴーレムに溺愛される追放錬金術師 ~俺を見下した勇者パーティーは『金メッキの呪い人形』で勝手に自滅中~  作者: さらん


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第7話 歪む勇者の心と、優雅なるダンジョン紀行

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!



 中級上位ダンジョン『湿地の魔洞』。

 その薄暗い通路で、剣劇の音が響き渡った。


「シッ……! ハァッ!!」


 勇者アレクが振るう剣閃が、襲いかかるマッドマンの胴体を両断する。

 泥の怪物は悲鳴を上げる間もなく、真っ二つになって崩れ落ちた。


「す、すげぇ……」


 アレクは、自身の手にある剣――透き通る青白い刀身を持つ『蒼水の剣』を見つめた。


 軽い。羽のように軽いのに、切れ味は以前使っていた鋼の剣とは比較にならない。

 魔力を流せば、刀身から水流の刃が伸び、離れた敵すら切り裂くことができる。

 間違いなく、国宝級の名剣だ。これさえあれば、上級ダンジョンの攻略すら夢ではないだろう。


 だが。

 アレクの心は、泥のように重く濁っていた。


「クソッ……! なんで、なんであいつが……!」


 剣を握る手に力が入る。ギリギリと歯軋りの音が漏れる。

 この剣で敵を倒すたび、脳裏に浮かぶのは、あのギルドでの屈辱的な光景だ。


 ――『ほらよ。代わりと言っちゃなんだが、これをやるよ』

 ――『お湯を沸かすついでに作った量産品だがな』


 あの涼しい顔。憐れむような目。

 そして、彼の周りを囲んでいた、この世のものとは思えない美女たち。


(なんでだ! なんで俺たちが追い出した「荷物持ち」が、あんな良い思いをしてるんだ!?)

 かつてのアレクは、少し自信過剰だが、根は単純で明るい男だった。

 だが今、彼の心はドス黒い嫉妬と劣等感に塗りつぶされていた。


「アレク、どうしたんだよ? すごい切れ味じゃねぇか! さすがクロウがくれた剣だぜ!」


 重戦士ガルドが無神経に声をかける。彼の手には、以前よりもさらに安物になった中古の大盾が握られている(良い盾を買う金がなかったのだ)。


「うるさい! あいつの名前を出すな!」

「ヒッ……、わ、悪かったよ……」


 アレクの剣幕に、ガルドが怯える。聖女ミリアに至っては、クロウの話題が出ただけで顔を青ざめさせ、俯いてしまった。


 アレクは再び歩き出した。

 この剣のおかげで、モンスターは怖くない。だが、一歩進むごとに、彼のプライドは削り取られていく。


 「クロウに生かされている」という現実に、彼の精神は歪み、捻じれていくのだった。


 ◇


 一方その頃。

 アレクたちが泥にまみれている場所から遠く離れた、北の大地。

 氷と水晶で覆われた美しいダンジョン『氷結の回廊』を、一台の豪華な馬車が進んでいた。

 いや、正確には馬車ではない。

 動力源が見当たらない、流線型の美しい装甲車(魔導ビークル)だ。

 クロウがラボのガレージで見つけた「移動用機材」を、自分好みにカスタマイズしたものである。

 その車内で、クロウは優雅にティーカップを傾けていた。


「ん、この紅茶も美味いな。この辺りの冷涼な気候で育った茶葉か?」

「はい、ご主人様。ダンジョンの入り口付近で自生していた『氷晶茶葉』ですわ。お気に召して光栄です」


 隣に座るアミィが、鉄扇で仰ぎながら微笑む。車内は魔法で完璧に空調管理されており、外の極寒が嘘のように快適だ。


「マスター。現在地の気温は氷点下20度。ですが、このビークルの断熱結界内は常に22度に保たれています。極めて快適な旅路です」


 向かいの席で、サフィが地図を広げながら報告する。

 外を見れば、本来なら命がけで戦うはずのモンスターたちが、ビークルの結界に触れて勝手に凍りついたり、弾き飛ばされたりしていた。


「お兄ちゃん見て見てー! 外のトカゲさん、カチンコチンになってるー! あははは!」


 ルビィが窓に張り付いて無邪気に笑う。

 そして、車の前方では、黄金の巨体――ゴルドが、雪かきのように進行方向の障害物を排除していた。


「邪魔ダ、雑魚ドモ! 我ガ主ノ道ヲ空ケロォォッ!!」


 ドォォン! とゴルドが腕を振るうだけで、アイスゴーレムの群れが粉々になる。


「頼もしいな、ゴルドは」

「当然ですわ。アレクという男は、本当に見る目がありませんでしたのね」


 アミィの言葉に、クロウは「アレク? 誰だっけそれ」と一瞬考え、すぐに思い出した。


「ああ、そういえばそんな奴もいたな。まあ、彼らもあの剣で元気にやってるだろうさ」


 クロウにとって、勇者たちの存在など、もはや道端の石ころ以下の関心事でしかなかった。

 彼の興味は、この先にある「新しいラボ」にしか向いていない。


「この『氷結の回廊』の奥には、冷却技術に特化したラボがあるはずだ。上手くいけば、夏場に冷たいビールが飲める魔道具が作れるかもしれない」

「まあ、素敵ですわご主人様!」

「合理的です。マスターのQOLクオリティ・オブ・ライフ向上のため、全力で回収します」


 悲壮感も緊張感もない、ただの楽しい家族旅行。

 最強の装備と、最高の仲間たちに囲まれ、錬金術師クロウの優雅な「ダンジョン荒らし」の旅は続くのだった。



【中盤シーン:流体魔王と、氷の絶対零度】

 氷のダンジョン『氷結の回廊』の最深部。

 俺たちは、巨大な氷のドーム状の広間に到達していた。


「この奥から、強い魔力反応を感じます。間違いなく『エリア・ボス』ですわ」


 アミィが鉄扇を閉じ、少しだけ真剣な表情になる。

 俺は頷き、前に立っている黄金の巨人に声をかけた。


「ゴルド、出番だ。サクッと片付けてくれ」

「御意! 我が主の行く手を阻む者は、この鉄拳で粉砕してご覧に入れます!」


 ゴルドが重厚な足音を響かせて前に出る。

 その直後、広間の中央にある湖が激しく泡立ち、巨大な「それ」が姿を現した。


「グルルルル……!」


 現れたのは、不定形の体を持つ巨大なスライム……いや、違う。

 その体は銀色に輝く液体金属で構成されていた。

 ボスモンスター『水銀の魔神マーキュリー・ロード』。

 物理攻撃を無効化し、あらゆるものを飲み込む流体の怪物だ。


「フン! 姿形が定まらぬ軟弱者め! 我がオリハルコンの拳で霧散させてくれる!」


 ゴルドがスラスターを噴射し、音速の突撃を敢行する。

 その拳は山をも砕く威力だ。直撃すれば、どんな魔物も肉片になるはずだった。


 ――ドプンッ!

 しかし、不気味な音が響いただけだった。

 ゴルドの拳は、水銀のボディに深く沈み込み、勢いを完全に殺されてしまったのだ。


「ナ、ナニッ!?」

「グルァァァ!」


 魔神が流動し、ゴルドの腕に絡みつく。

 さらに触手のような鞭が、ゴルドの装甲を何度も打ち据えた。


「グオォッ! バ、馬鹿ナ! 効カヌ! 手応えガ無イ!」


 ゴルドが必死に振り払おうとするが、殴れば殴るほど拳が埋まり、逆に拘束されていく。

 物理的な硬度を誇るゴルドにとって、衝撃を受け流す「流体」は、まさに天敵中の天敵だった。


「主ヨ! 申シ訳アリマセン! こノ敵、相性ガ……ググッ!」


 最強の盾が、巨大なスライムに飲み込まれそうになっている。

 普通なら絶望的な状況だ。

 だが、俺は慌てることなく、隣に控える知的な眼鏡美女に声をかけた。


「……というわけだ。サフィ、交代だ」

了解ラジャー。分析終了。……ゴルド兄さん、少し頭を使ってください」


 サフィが一歩前に出る。

 彼女は眼鏡をクイッと押し上げ、氷のように冷徹な瞳でボスを見据えた。


「対象は流体金属。物理衝撃吸収率99.8%。打撃での撃破は非効率的かつ不可能です」

「デ、デモ、どうすれバ……!」

「簡単です。『状態変化』させればいいのです」


 サフィが右手を掲げる。

 その周囲に、幾何学模様の魔法陣が何重にも展開された。

 彼女の演算能力が、空間の熱量を計算し、強制的に数値を書き換えていく。


「術式装填――広域冷却魔法『絶対零度のコキュートス・コフィン』」


 パチン、と彼女が指を鳴らした瞬間。


 キィィィィィン……ッ!!

 空気が悲鳴を上げるような高周波と共に、広間の温度が一瞬で絶対零度近くまで低下した。


「ギ、ギャァァァ……!?」


 水銀の魔神が断末魔を上げる間もなかった。

 流動していた銀色の体は一瞬で熱を奪われ、カチコチに凍りつき、動きを止めた。

 あの厄介な流体が、ただの「銀色の彫像」へと変わり果てたのだ。


「物体化を確認。……ルビィ、どうぞ」

「わーい! 壊していいのー?」


 サフィの指示で、待ってましたとばかりにルビィが飛び出す。


「必殺! メガトン・ハンマァァァッ!!」

「待てルビィ! その素材はレアメタルだ! 粉々にしすぎると回収が面倒に……!」


 俺の制止も虚しく、ハンマーの一撃を受けた凍結ボスは、パリーンッ! と盛大な音を立てて粉砕された。


「……ふぅ。ミッション・コンプリートです」


 サフィが何事もなかったかのように戻ってくる。

 拘束から解放されたゴルドは、申し訳無さそうに肩を落としていた。


「面目次第モゴザイマセン……。盾タル私が、露払イスラ出来ヌトハ」

「気にするなゴルド。適材適所ってやつさ」


 俺は落ち込むゴルドの装甲をポンポンと叩いた。


「お前が囮になって引きつけてくれたおかげで、サフィが狙いを定められたんだ。ナイスアシストだったぞ」

「主ヨ……! アァ、なんと慈悲深イ……!」


 ゴルドが感動に打ち震える中、俺は砕け散ったボスの残骸(大量の水銀)をアイテムボックスに回収し、その奥にある扉を見上げた。


「さて……。この奥がお待ちかねの『第2ラボ』だな」


 物理最強の盾と、魔法最強の矛。

 この二つが揃った俺たちに、もはや攻略できないダンジョンなど存在しないことを証明した一戦だった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


少しでも「面白かった!」「スカッとした!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、

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それでは、次回もどうぞお楽しみに!


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