表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神メンテで最強の美女ゴーレムに溺愛される追放錬金術師 ~俺を見下した勇者パーティーは『金メッキの呪い人形』で勝手に自滅中~  作者: さらん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/6

第5話 勇者は金欠に喘ぎ、錬金術師は醤油を買いに街へ来る

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


 王都の路地裏にある、薄汚い安酒場『豚の蹄亭』。

 その一番奥の席で、かつて「新進気鋭」ともてはやされた勇者パーティーは、水で薄めたような安いエールを煽っていた。


「……ッタク、また依頼失敗かよ。割に合わねぇな」


 勇者アレクが木製のジョッキをテーブルに叩きつける。

 彼の装備は傷だらけだった。自慢の聖剣は刃こぼれし、鎧の留め具は外れかけている。


「仕方ねぇだろ。俺の盾がベッコリ凹んじまってんだ。あんな状態でオーガの突進なんか受けられるかよ」


 重戦士ガルドが不機嫌に吐き捨てる。

 かつては「鉄壁」と呼ばれた大盾は、今やスクラップ寸前の鉄板だ。

 以前なら、ダンジョンから戻れば錬金術師のクロウが徹夜で修復し、翌朝には新品同様になっていた。だが、今の彼らにそんな技術はない。


「装備だけではありませんわ……。ポーションも高騰していますし、何より……」


 聖女ミリアが、目の下のクマを指で押さえながら、恨めしげに足元を見た。


「オイ! 貴様ラ! 何ヲ 休ンデイルンダ!」


 そこには、彼らが「伝説のガーディアン」だと信じて持ち帰った、黄金のゴーレムが鎮座していた。

 しかし、その輝きは見る影もない。所々の金メッキが剥がれ落ち、下地の錆びた鉄がむき出しになっている。


「左足ノ メッキ ガ 剥ガレタゾ! 今スグ 直セ! 俺様ヲ 敬エ! 磨ケェェ!!」

「うっさいわね! 今はお金がないから金箔なんて買えないのよ!」


 ミリアがヒステリックに叫ぶ。

 このゴーレム、戦闘では役に立たないどころか、四六時中「磨け」「称えろ」と騒音を撒き散らすのだ。おかげでミリアは不眠症になり、肌荒れが酷くなる一方だった。


「……全部、あのクロウのせいだ」


 アレクが憎々しげに呟く。


「あいつが……あいつがパーティーを抜ける時に、俺たちに呪いをかけていったに違いない。でなきゃ、こんなに上手くいかないはずがないんだ」

「そうだな。あの陰気な錬金術師め、今頃どこかで野垂れ死んでりゃいいんだが」


 自分たちで追い出した事実を棚に上げ、彼らが呪詛を吐いていた、その時だった。

 酒場の入り口付近が、にわかに騒がしくなった。


「おい、聞いたか? さっきギルドに現れたパーティーの話」

「ああ! 『三人の絶世の美女』を連れた若い男だろう? 見たぜ、あれはヤバい」

「何がヤバいんだ?」

「装備だよ! あの男が羽織ってた白衣……あれ、ただの布じゃねぇぞ。俺の目利きが確かなら、伝説のS級魔獣『フェンリル』の毛皮だ」

「はぁ!? フェンリルだと!? 国宝級じゃねぇか!」

「それに連れの美女たちも凄い。ミスリルの鉄扇に、古代魔導の杖……どこの国の王族だよ」


 酒場中の冒険者たちが、噂話に花を咲かせている。

 アレクたちの耳がピクリと動いた。


「……金持ちのボンボンか?」

「アレク、これチャンスじゃないか?」


 ガルドがいやらしい笑みを浮かべ、足元のポンコツゴーレムを指差した。


「金持ちってのは、こういう『派手なだけのゴミ』が大好物だろ? 上手くおだてて、この役立たずを高値で売りつけてやろうぜ」

「……名案だ。あわよくば、そのS級装備のいくつかを譲ってもらえるかもしれん」


 勇者たちは顔を見合わせ、下卑た笑みを浮かべた。

 彼らは残った小銭をテーブルに置くと、カモを捕まえるべく、急いで酒場を飛び出した。


 ◇


 冒険者ギルドの前は、黒山の人だかりができていた。


 その中心を、モーゼが海を割るように、異様なオーラを放つ一行が歩いてくる。

 先頭を歩くのは、雪のように白いロングコート(白衣)を風になびかせた青年。


 その右腕には、紫紺のドレスを纏った妖艶な美女が絡みついている。

 左側には、知的な眼鏡をかけたクールな美女。

 そして背後には、身の丈ほどの巨大ハンマーを軽々と担いだ、赤髪の美少女が楽しげにスキップしていた。


「す、すげぇ……本当にフェンリルの毛皮だ……」

「あの美女たち、人間か? 肌が陶器みたいに綺麗だぞ……」


 周囲の視線を一身に集めながらも、彼らは気にする素振りもない。


「おい、そこの貴族様!」


 勇者アレクは、人混みを掻き分けてその青年の前に飛び出した。

 一番良い営業用のスマイルを貼り付けて。


「お初にお目にかかる! 俺は勇者アレク。この街で一番の……」

「オイ! 貴様! 俺様ヲ 地面ニ 置くな! 高イ所ニ 飾レ!」


 背負っていたゴーレムが騒ぎ出し、アレクは舌打ちしそうになるのを必死で堪える。


「……コホン。実は貴方のような高貴な方に、この『伝説の黄金騎士』をお譲りしたいと思いましてね。どうです? その美しいお連れ様たちにも似合う――」

「――邪魔だぞ。どいてくれ」


 青年が、足を止めることすらせず、冷淡に言い放った。


 その声に、アレクは心臓が止まるかと思った。

 聞き覚えのある声。

 いや、忘れるはずのない、自分たちがゴミのように捨てた男の声。


 青年がゆっくりとフードを上げる。

 そこにいたのは、以前よりも肌ツヤが良く、自信に満ちた表情の錬金術師だった。


「ク、クロウ……!?」

「なっ、嘘だろ!? なんでお前がそんな……!?」


 アレク、ガルド、ミリアの三人が、幽霊でも見たかのように後ずさる。

 ボロボロの装備を纏った勇者たちと、国宝級の装備を纏った元・雑用係。


 その対比はあまりにも残酷だった。


「……ん? なんだ、アレクか」


 クロウは、路端の石ころを見るような目で彼らを見た。


「相変わらず、貧乏くさい装備だな。ガルドの盾、まだ直してないのか? それじゃゴブリンの棍棒も防げないぞ」

「なっ……!」

「それにミリア、肌が荒れてるな。俺が配合してた『美容クリーム』を使ってないのか?」


 図星を突かれ、ミリアが顔を真っ赤にして俯く。


「クロウ、貴様……! そのふざけた格好はなんだ! まさか、どこかで盗みを……」

「盗み? 失敬な」


 クロウが答える前に、彼の隣にいた紫の美女――アミィが、パァン! と鉄扇を開いた。


「この方は、正当なる古代遺跡の継承者にして、私たち『三姉妹』の唯一無二のご主人様ですわ。貴方たちのような薄汚い方々が、気安く話しかけていい相手ではありませんの」


 アミィは扇で口元を隠し、氷のような視線で見下す。


「ご主人様の視界に入らないでくださる? その貧乏くさい臭いが移りますわ」


 続いて、眼鏡の美女――サフィが、冷徹に告げる。


「スキャン終了。脅威度ゼロ。……マスター、彼らに関わるメリットは皆無です。時間の無駄ですので、『醤油』の買い出しを優先することを推奨します」

「し、醤油だと……!?」


 アレクが絶句する。

 自分たちが必死で生きている中、こいつは「醤油」のために街へ来たというのか。


 とどめとばかりに、赤髪の少女――ルビィが、アレクが抱える黄金ゴーレムを指差してケラケラと笑った。


「あははは! お兄ちゃん見てー! あの金ピカのお人形、中身がスッカスカだー! ハリボテだねー! 弱そー!」

「ギギッ!? 貴様、何ヲ言ウ! 俺様ハ 最強ノ……」


 ルビィの無邪気な指摘に、黄金ゴーレムが反論しようとした時だ。

 ゴーレムの目が、クロウの着ているフェンリルの白衣と、彼の整った魔力波長を捉えた。


「オオオ……! 美シイ! 素晴ラシイ輝キダ!」


 ゴーレムはアレクの手を振りほどき、這いつくばってクロウの足元へ擦り寄ろうとした。


「オイ! そこの貴族! 俺様ヲ 拾エ! 磨ケ! そこの貧乏人ハ もう嫌ダァァァ!!」


 自分たちの「切り札」にまで裏切られた勇者たちは、公衆の面前で恥を晒し、顔面蒼白で立ち尽くすしかなかった。


「……悪いな」


 クロウは、足元のゴーレムを避けるように一歩退がり、冷たく言い放った。


「俺は『本物』しか愛せない主義なんだ。そのメッキ人形は、お前たちにお似合いだよ」


 そう言ってクロウは、三人の美女を連れて優雅に立ち去ろうとしていた。


 後に残されたのは、群衆の嘲笑と、惨めな勇者パーティー、そして「磨ケェェ!」と喚き散らす金メッキの鉄屑だけのはずだった。



【終盤シーン:ゴミをダイヤに変える錬金術 ~返品不可の契約完了~】

「……待て」


 一度は背を向けたクロウだったが、何かに気づいたように足を止めた。

 彼は振り返り、這いつくばる黄金ゴーレムをじっと見下ろした。


「鑑定……なるほど。そういうことか」


 クロウは一つ頷くと、ニヤリと口角を上げた。


「おいアレク。そのゴーレム、売る気があるなら俺が買ってやってもいいぞ?」


 その言葉に、絶望していた勇者たちの顔色がパッと変わった。


「ほ、本当か!? 買うのか!? このポンコツを!」

「ああ。ただし、見ての通りのジャンク品だ。金貨10枚……いや、5枚なら引き取ってやる」


 金貨5枚。勇者パーティーにとっては宿代数泊分にしかならない端金はしたがねだ。

 だが、彼らは飛びついた。この騒がしい呪いの人形を処分できて、金まで手に入るなら願ったり叶ったりだ。


「売る! 売るぞ! 今すぐ持って行け!」

「よし。……サフィ、契約書を」


 サフィが瞬時に羊皮紙を取り出し、アレクにサインをさせる。

 これで所有権は正式に移行した。ギルド職員や群衆が見守る前での、公的な取引成立だ。


「よし、契約成立だな」


 クロウは契約書をしまうと、ボロボロの黄金ゴーレムの前に膝をついた。


「おい、聞こえるか? お前が騒いでいたのは、回路が詰まって苦しかったからだな?」

「ア……アァ……磨ケ……詰マル……苦シイ……」

「今、楽にしてやる」


 クロウは懐から、ラボで精製した『超・活性化オイル(エリクサー配合)』を取り出し、ゴーレムの錆びついた関節に垂らした。

 同時に、錬金術師としての莫大な魔力を、詰まっていた回路に一気に流し込む。


「――再構築リビルド!!」


 カッ!!

 眩い光が周囲を包み込む。

 バチバチと音を立てて剥がれ落ちていた金メッキが、クロウの魔力と反応し、再結晶化していく。

 ただのメッキではない。錬金術によって、その装甲は「純度100%のオリハルコン・ゴールド」へと変質したのだ。


「オオオオオオッ!!」


 光が収まると、そこに立っていたのは、以前の薄汚い姿ではなかった。


 鏡のように磨き上げられた黄金の装甲。

 軋む音一つ立てない滑らかな関節。

 背中からは光の粒子を放つスラスターが展開され、その威圧感はまさに「黄金の要塞」。


「……システム・オールグリーン。出力、安定。……我が主よ」


 ゴーレムの声が変わった。

 耳障りな金切り声ではない。重厚で、知性を感じさせるバリトンボイス。

 黄金の巨体は、クロウの前で恭しくひざまずいた。


「我が名は『ゴルド』。主の盾となり、敵を粉砕する守護者なり。……この清らかな魔力供給、感謝の言葉もありません」

「な、なんだと……!?」


 アレクたちの目が飛び出る。

 ミリアが震える指で叫んだ。


「う、嘘よ! さっきまでただのガラクタだったじゃない! なんで急に……!」


 クロウは涼しい顔で、生まれ変わった『ゴルド』の肩をポンと叩いた。


「道具は使い手を選ぶ、ってことさ」


 彼は残酷な真実を突きつける。


「こいつは元々、高性能な学習型ゴーレムだ。『磨け』と言っていたのは、魔力伝導が悪化してSOSを出していただけ。お前たちがメンテナンスを怠り、雑に扱ったから、こいつも性格が歪んで性能が落ちていただけなんだよ」

「そ、そんな……」

「俺が少し手入れをしてやっただけで、これだ。……つまり、悪いのはこいつじゃなくて、お前たちだったってことさ」


 群衆から「ああ~……」という納得の声と、勇者たちへの冷ややかな視線が注がれる。


 「宝の持ち腐れとはこのことか」「勇者、見る目なさすぎだろ」という囁きが聞こえてくる。


 アレクの顔が欲望で歪んだ。

 目の前にあるのは、今や国宝級の輝きを放つ最強のタンクだ。


「か、返せ! それは俺たちのものだ! 詐欺だぞ!」

「は? 何を言ってるんだ?」


 クロウはヒラヒラと契約書を見せつけた。


「適正な取引は終わった。これはもう俺のものだ。……なんなら、ギルドマスターを呼んで判定してもらうか?」

「くっ……!」


 ぐうの音も出ない。

 勇者アレクの手元に残ったのは、たった5枚の金貨だけ。

 一方、クロウは最強の「黄金の守護者」を手に入れた。


「さあ、行こうかゴルド。アミィたちの護衛を頼むぞ」

「御意。……前の持ち主と違い、貴方様からは高貴な魂を感じます。この命に代えても」


 ゴルドは勇者たちを一瞥もしない。完全に興味を失っているのだ。


「くそっ、くそぉぉぉッ!!」


 地団駄を踏む勇者たちの絶叫を背に、クロウたちは悠々とその場を後にした。


 最強のアミィ、最強の知能サフィ、最強の破壊力ルビィ、そして最強のゴルド

 盤石となった「新生・錬金術師パーティー」は、次のダンジョン(ラボ)を目指して歩き出した。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


少しでも「面白かった!」「スカッとした!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、

ページ下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、毎日の執筆の爆発的なエネルギーになります!


ブックマークへのご登録も、ぜひよろしくお願いいたします!


それでは、次回もどうぞお楽しみに!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ