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「花園君がかわいそう。頭いいのに歓迎されてないなんて。」
「歓迎か。そうやって遺伝子レベルで幅を狭めてきた。僕がいる時代に天才がいないのは当然だな。倫理的な善悪如何に関わらず、特殊なものも包括しなければならなかったって、花園を見て思うよ。世界中にある特異な頭脳を何年にも渡って排除してきたんだ」
「ひょっとしたら花園君は、面接官の希望する答えを分かってるんじゃないですか? 自分の考え方が歓迎されないことも分かってて。
1次試験の国語のテストに、貧困と紛争についての説明文とエネルギー革命についてのエッセイがあったんです。だから、その、なんて言ったらいいのか、国語の問題文のチョイスだけで、もうあの学校に行く気はなくなったーーーって。
で、ちょうどDDが来日していた日を間違えていたから、面接よりもDDを優先したーーー」
「そうかもしれない。扱いにくい天才君だよ。何を考えてるんだか」
まったく。バイオリン姫の気持ちすら、どこ吹く風。
「先生、扱いにくい花園君は合格しました。去年の約束、覚えてますよね?」
さあ、本題。この1年間、ちょくちょく振り回された。天才が必要だかなんだか知らないけど、私にはそんなことは関係ない。
4月から中学生。上手くいけば、春休みにカレシを作ってからのスタートになるかもしれないじゃん。
「その、言いにくいんだけど。実は」
言いかけたのに、神センは腕組みをして下を向く。
「あー、なんか残念な結果に終わったんですか? 実は、花園君からのチョコだったけど、花園君は九条さんを好きんなっちゃったとか?」
「違う。でも、似たようなもん」
「あ、じゃ、橘君だったけど、橘君は……」
「は? 橘? まさか。仁科、自己評価高過ぎ」
くっ。そんな食い気味に言わなくてもいーじゃん。
「ちょーしに乗りました」
「山田だよ。だけど、山田はもう、クリスマスくらいにカノジョができたらしい」
「山田君が?」
山田君は、同じ小学校でミニバスをやってる男の子。橘君とミニバスを通じて友達で、夏に橘君のチームのことを教えてくれた子。ちょっと派手な目立つ外見で、さばさばした明るい性格。友達が多い。
「秋ごろ運動会でハチマキ交換をしてから、その女の子に夢中みたいだよ。同じ小学校なんだろ? たぶん知ってる子だろうね」
へー。そーいえば、山田君って学校で人気あったかも。誰とハチマキ交換したかなんて知らない。興味なかったもん。
!
クリスマスツリーを飾る水玉のリボンについて聞いたとき、事務員が言った。「橘君達がやってくれたの」って。橘君と花園君だと思ってた。
山田君は橘君と仲がいい。あの言葉の「橘君達」には山田君が混じってたんだ。そして、クリスマスツリーを飾っていたのは、恐らく山田君のリボン。私へのチョコのラッピングの余り。
「そうだったんですか」
期待に胸が膨らんでいたというのに。惜敗。
なんだかなー。試合に勝って勝負に負けた、みたいな。




