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「真っ先に、花園が問題になってたよ」
神センは左手を首の前で水平にし「ツッ」と舌を鳴らした。
縁起でもない。合格したじゃん。
「花園君、名前を書き忘れたんですか?」
「いや、面接で」
神センは親指を立てて下に向けた。またまたバッシング。
「あー、私は少子化対策について聞かれました。あれは自信ないです」
確か、政府や自治体が協力して保育園を作ったり制度を整えたりして、女性の社会復帰を促せば、子供を安心して産めるって答えたんだよね。こんな感じのこと、テレビで言ってなかったっけ?
「仁科は見事だったよ」
「やった」
ガッツポーズ。
「面接官が望む通りの浅はかな答えで」
それ、褒めてないよね。むしろ、けなしてるよね。
「いいです。もう。合格したから」
「はは。じゃあ聞く。保育園を作れば女性が子供を産むと思うか? その前の段階で、既に、結婚しないという選択をする人間が男女共に増えているのに」
「深くなんて考えたことありません。産みたい人は産めばいーし、結婚なんて私にはまだ先で、どーでもいーし」
「質問を変えよう。なぜ少子化は問題なんだ?」
「えーっと、子供が少ないと、何かと困るから」
「なぜ困る?」
「えーっと、分かりません」
「それはね、日本を国家ってレベルで考えるからだよ」
??????
「なんか。あの学校って、そんな難しいこと考えなきゃダメなんですか?」
「いや、悪かった。いいんだ。面接官はただ、社会問題に触れているかどうかってことを知りたかっただけだから」
「じゃ、花園君は少子化のこと、国家がどーのこーのって答えたんですか?」
「いや。花園は、先進国として日本がどうすべきかを聞かれた」
「へー。難しそーですねー」
他人事。よかった。その質問じゃなくて。
「あのガキはね、日本が先進国として存在し続けるためには経済成長が必要だと説いた。そして、自国の経済成長を望むなら、
①為替を使って他国の安い労働力を使うべきだ、
②対岸の武力紛争には物資や技術を輸出するべきだ、
③現状通り、低賃金重税で企業に資金を回せばいい、
④原子力発電の技術を他国で展開し、門外不出の秘伝のタレのように技術を非公開にして、メンテや閉鎖の後処理で、数十年に渡って利益を搾り取るべきだと論じたんだよ」
「……」
絶句。①NOTフェアトレード、②④戦争と原子力は触れちゃダメ、③国が打破しようとしてること。
「面接の部屋に黒板があったことを覚えてる?」
「はい。たしか、面接官の後ろにありました」
「君の後ろにもあったんだよ」
「気づきませんでした」
「いいかい、あのガキはね、誰一人として使わなかった黒板に世界地図を描いた。3カ国例を挙げ、為替について具体的な数字を使って説明した。武力紛争のある場所を指して具体的に有用な武器を挙げた。原子力発電所を増やすべき国をマークし、日本への利益を見込めない国には×印をつけた。所要時間4分」
天才恐るべし。
「へー」
神センが早口で熱いんだけど、なんだか分かんない。
「資料も見ず数字を使って論じたんだよ。この時代での倫理がどうあれ、内容は別格だ」
「内容が別格なら、どうして花園君が問題になるんですか?」
「言っただろう。この時代において、全て倫理的にセンシティブな問題だからね」
倫理って何? それ、美味しーの? センシティブってどーゆー意味? 英語使わないでよー。
「一般的小学生の私には理解できません」
花園君の言ったことも、神センの言ったことも。
「だろ? 面接官一同もエキセントリック過ぎてお手上げだった」
あれれれ。「私が分かってない」ってことが神センに伝わってない気がする。ま、いっか。
「そうなんですか」
適当に相槌。ところで、この話、まだ続くの?
「教師達はあのガキを危険分子と見なした。しかも、前日の4教科は400点満点」
「はあああ?! 400点満点?」
「せめて397点にしておけば可愛げがあったものを。どの教師も空恐ろしくなったのさ。おまけに小学校の成績がすこぶる悪い。異端児の王道」
「じゃ、どーして不合格にならなかったんですか?」
「満点を取った人間を不合格にできるか? 過ぎるくらいの面接内容だった。この国には言論の自由がある。異端児だからという理由で不合格にはできない。誰かが『きっと優秀すぎて学校に来なくなりますよ』って笑った」
天才って普通のものさしじゃ測れないだね。




