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「花園、中学行きたいんだよな?」
神センが花園君に再確認。私も確認したかったところ。
「はい。でも、受験ってメンドクサイですね」
「花園君、そんなこと言ってたら、メンドクサイことだらけじゃん。これまでやってきた勉強の方がぜんぜんメンドクサくない?」
あきれ果ててつい口から出てしまった。自分で自分にびっくり。勉強を頑張ってきたのに、実際には私って「メンドクサイ」なんて不届きなこと思ってたのかも。
「えー、勉強は楽しいじゃん」
ああ、花園君のここがすごい。
「よしっ。花園、こうしよう。大人しく面接を受けたら、DDのライブを体感させてあげよう。ライブ会場にいるのと全く変わらない」
「ええええ! マジで。あざーっす」
神センがこんなご褒美を用意したのは、花園君の気持ちを盛り上げようとしたんじゃなくて「勉強が楽しい」って言葉が嬉しかったからかも。少なくとも私には、そう思えた。きっとそう。
「ついでに仁科も」
「ありがとうございます」
「じゃ、どこか向こうの時代で時間を潰すか」
「時間って自由になるんじゃないんですか?」
不思議。過去のある時点まで戻ることができたのなら、それをズラせば済むだけだと思う。
「いや、こっちに来た分がゼロなだけ。特定の時代に繋がる技術はあるけど、この部屋は仁科や花園達の時代限定。この部屋みたいな特殊空間は、設定が大変で莫大なコストがかかるんだよ」
へー。予算の都合ってわけね。
3人で、受験する中学校の校門の映像をぼーっと見ながら時間が過ぎるのを待った。
きっかり30分前、花園君と私は校門前に立っていた。
校舎に入ると面接を終えたバイオリン姫と橘君が待っていた。
「央治! おっせーよ」
橘君が駆け寄って、がばっと花園君に抱き付いた。
「途中で会ったから、一緒に来たの」
私は言い訳のようにバイオリン姫に嘘をついた。ん? 嘘じゃないじゃん。
「あれ? 花園君、家に帰ってから着替えたの?」
バイオリン姫が鋭い質問。あの時間から自宅に帰って着替えてここまで来ることは難しい。
「えーっと、途中で着替えた」
微妙に本当のことを言う花園君。
なんとかかんとか無事終了。
午後1のモデルの面接が終わるのを駅でだらだらと待ち、生徒会長も合流してファーストフード店で打ち上げ。中学受験よ、さらば。
約束通り、神センはDDのライブを体感させてくれた。私としては、1番の手柄はバイオリン姫だと思ったから、ちょっと後ろめたかった。




