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スマホの画面の着信表示はバイオリン姫の九条さん。
「九条さんからです。出ます」
「ああ。手短に。そっちの時代に繋ぐと時間が経過するから」
タップ。
「はい、仁科です」
『おはよ、ニカ。こんな日にごめんね。T駅で花園君を捕まえたの。それが、面接さぼるつもりだったみたいで』
「え! T駅で花園を捕まえたって?!」
私の言葉を聞いた神センが、手招きをする。気づけば私達の時代に繋がっていた円がなくなっている。時間を止めたんだ。
「仁科、T駅は広い。どこにいるか聞いてくれ。それから、僕がT駅で花園を探していることにしてくれ。で、仁科が僕に連絡するって言って」
「はい」
T駅は、受験校まで行くルート上にない。受験校へは、その一駅手前のA駅で乗り換える。
たぶんバイオリン姫は、A駅で降りなかった花園君を見かけて追いかけたんだ。どんだけ献身的なの。受験の面接ってのに。私だったら自分優先。
神センは再び汚い部屋への円を登場させた。
「九条さん、今、駅のどこ? 神センが花園君のことT駅に探しに行ったらしい。私、神センに連絡するから」
『駅裏のバスターミナルの方。エスカレーター降りたとこ』
「分かった。ありがと」
『よろしくね』
ぷっ
「成田空港行きのバスターミナルの方へ行く、エスカレーターの下だそうです」
「分かった。じゃ、エスカレーターの上から下りていくことにしよう。九条の面接時間は2番目なんだ。早く行かせてあげないと」
「私だって5番目です」
面接時間は1人10分。
「花園もね」
あ、神センの話し方が変わった。クソガキ→花園。なんとかできそうって心の余裕?
「それって、つまり、私に花園君を連れていけってことですよね」
「当然」
今度は宙に横長の楕円形が現れて、その向こうに静止した大勢の人がいた。背景からT駅とわかった。神センが何やら空中で操作すると、人が小さくなって、上から見下ろしているようなアングルになった。そして空を飛びながら移動しているような光景。
「すごーい。鳥になった感じ」
「3D画像だよ。お、いたいた」
「ホントだ」




