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「オレに男子校へ行ってほしくないみたいなこと喋ってなかった?」
聞いてたよね、もちろん。
「神センは教師として、花園君に中高でみっちり勉強してほしいみたい」
教師としてじゃないけど。任務だから。
「男子校でちゃらいことすんのもありかなーって思ったけど」
あらら。橘君の言ってたことと違うじゃん。女の子好きそうだよ。
私は神センがまだキッチンにいることを確かめてから小声で言った。
「いいんじゃない? 自分の人生なんだから」
これ本心。未来の都合なんて知ったこっちゃない。だいたい、平和に営まれてるって言ってたし。
「んー。人生かぁ。ま、勉強はすると思う。好きだから。周りが勉強してないところで勉強してたら変? ヤバい?」
「やってる人はいるんじゃない? 志望の学部に行きたいとかありそうだもん。でもま、浮くかも」
「女子校にかわいい子多いみたいなのが気になってさー」
なにコイツ。女の子の敵。私の兄系?
「ちょっと、九条さんくらいの美少女はいないよ。カノジョがいるくせに」
ムッとして非難しちゃった。
「カノジョ?」
「九条さん」
「はああ?」
「最近、イイ感じじゃん」
キッズモデルの三上さんが心を痛めるくらい。イケメンだからって全てが思い通りになると思うんじゃない!
「違う違う。助けてくれたお礼とか、トラックに轢かれそうになった時のこと思い出してほしいとか、母が九条のコンクールを聴きに行ったとか、そーゆーので話してたんだって」
「あ、そーなんだ」
なーんだ。良かったね、モデル。
コト コト
目の前にジュースが置かれた。今日のジュースはほんのりピンク色。ストロベリーの甘い香り。つぶつぶの小さな泡が透き通った液体の中からすーっと表面に浮かび上がる。マシュマロとクッキーが載ったお皿もオマケ。神センって女の子をもてなし慣れてるよね。たくさんの女の人といろいろあった恋愛ソルジャーなのかも。
「盛り上がってるね」
神センがソファに腰を下ろした。
「中学のこと話してました。いただきまーす」
花園君は嬉しそうにクッキーを1つ頬張った。
「いただきます。先生、花園君、勉強はしたいみたいです」
少しは安心させてあげようと、私は神センに報告した。
「ふーん。じゃ、附属じゃない方がいいだろうね。ところで花園、どんな中学校生活送りたい?」
神センは、いつかの私のときみたいに優しく切り出した。




