*
クリスマスイブ、自習室はいっぱいだった。
キッズモデルは、バイオリン姫と花園君が自習室にいることにほっとしてる。ホントに好きなんだね。
今日は早めに帰って、家でケーキを食べる予定。
サンタさんへはテニスラケットをお願いしたの。しっかり写真付きで。楽しみ♪
心の中でジングルベルを歌いながら塾の廊下の掲示物を見ていると、
「仁科、ちょい」
と神センに呼ばれた。
「はい。イブですけど、先生はデートの予定あるんですか?」
歩きながら、恐らく私生活が寂しい神センをいじってみた。
「塾講師はクリスマスもお正月もない社畜だよ」
いじってすいませんでしたっ。頭が下がります。
さっきまで面談をしていた教室に入った。ドアを閉めた途端、神センの部屋。もうすっかり見慣れた白い革製のソファに腰を下ろす。
「花園が大学附属の男子校を志望校に入れてしまった」
いきなり本題に入る神セン。
「それが何か問題あるんですか?」
「大ありだよ。エスカレーターで入学できるから、中学高校で勉強する量が減る」
「花園君なら、受験したとこ全部受かるだろうから、第1志望じゃなければいいじゃないですか」
そんなに心配しなくても。
「どう考えてるんだろう。あの天才君は」
神センは額に指を添えて、はーっと溜息を吐く。
「志望順序はどうなってるんですか?」
「第3志望」
「じゃ、大丈夫ですよー」
そんなに心配することないのに。
「腑に落ちない。橘も受けない、もちろん仁科達も受けない。どうして受けようと思ったんだろう。本当はそこに1番行きたいんじゃないかと勘ぐってしまう」
「直接聞けばいいじゃないですか」
「紙に第3志望と書いてある以上、僕に本音を言うとは思えない。頼む、仁科から聞いてみてくれ」
「はいはい。本人がそこを受けるってみんなの前で言ったら、聞いてみます」
「よろしく頼む」
私が立ち上がろうとすると、突然、テーブルの陰から声が聞こえた。
「それはさ」
「うわっ」
「花園君!?」
神センと私はびっくり。
ひょこっとテーブルの陰から首を出した花園君。神出鬼没。
「学食の飯が旨くて、同じ大学附属の近くの女子校にかわいい子が多いって聞いたから」
「……」
「……」
神センと私は言葉を失った。花園君は続けた。
「あのさ、ここどこ?」
普通、それを1番に聞くよね? ってか驚きの声くらい上げようよ。どう考えても瞬間に周りが変わるなんておかしいじゃん。
「花園、どうやってここに来た?」
神センが低い声を出した。
「消しゴムなくしたのに気づいて取りに来たんです。机の下に落ちてたから拾ったら、神村先生と仁科が入って来て、突然」
「僕と仁科の傍にいたから、巻き込まれたってわけか。うっかりしてた。範囲設定が甘かった」
ふーん。近くにいるとそーゆーこともあるんだ。範囲の設定とか必要なのか。
きょろきょろと辺りを見回して、花園君は深呼吸した。
「綺麗な部屋ですね。広くて白くて」




