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お昼、夏期講習や自習はひとまず休憩。私達は女子3人でなんとなく固まってランチタイム。
「な。今日さ、あいつら2人来てねーし。弁当、ここで食っていい?」
花園君がお弁当袋を持って近づいてきた。
「「「どーぞ」」」
花園ファンクラブの2人は満面の笑み。
すとん
花園君が控えめに近くの席でお弁当を広げ始めた。
「あれ? 箸、いつものじゃない。割りばし入ってる」
不思議そうに花園君は、自分のお弁当箱の上に乗っかった割りばしを手に取った。
「花園君、いつものお箸、筆箱に入ってるんじゃない?」
私は指摘した。さっき話を聞いたばっか。
「え? 筆箱?」
花園君は首を傾げながら立ち上がり、午前中の夏期講習の席まで行った。そして机の上に出してある筆箱を漁る。
ぱたぱたぱた
小走りで戻ってきた。
「ニカ、あった。本当にあった。すごくね? ヤベーよ、ニカ! 神かよ」
嬉しそうに花園君が箸を持って着席する。
賢い人とは到底思えない話し方。
まさかと思うんだけど。その昨日使って筆箱に入れてあった箸、使わないよね?
心配した通り、花園君は筆箱から出してきた箸を前に「いただきます」と手を合わせてる。
「洗った方がよくない?」
我慢できなかった。私が神経質なわけじゃないと思う。
だってさ、真夏だよ? しかも、花園君はシャープペンも消しゴムもよく落とす。それと一緒に入ってたんだよ。不衛生極まりない。
「あ、そっかぁ。やっぱダメ?」
花園君は、にへらーっと笑い、箸を持って席を立った。洗いに行ったんだと思う。でもね、生徒が使える水道なんてトイレじゃん。
はー。
花園君は戻って来て再び「いただきます」と合掌。どこで箸を洗ったかには触れないでおこう。私の眉間にシワが寄りそう。
「ニカ、なんで花園君のお箸が筆箱の中って分かったの?」
不思議そうにバイオリン姫が聞いてくる。
「さっき、昨日、片付け忘れて筆箱に入れてたって言ってたじゃん」
「でも、普通、入れっぱなしって思わないよー」
とモデル。
甘い。普通じゃないんだってば。
「おいっ。恥ずいから箸のことは忘れろっ」
花園君が少し頬を染めて下唇を突き出す。こんな顔してもカッコいいんだよね。イケメンって得。花園ファンクラブの2人は、今の顔にきゅんきゅんきていらっしゃるご様子。
「ごめんね、花園君。そそっかしいとこもあるんだね」
バイオリン姫が微笑む。
そそっかしいとこだらけなんだって。早く気づいて!




