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「中学では一生懸命部活をします」
膝に肘をついて手に顎を載せた神センは、優しい目で小首を傾げる。
「何部?」
「テニス部です。中学では硬式テニス部に入りたいと思っています」
私はびしっと宣言した。
「じゃ大丈夫。全部硬式テニス部のある学校だから。テニスをやってたことは、面談のときに美人のお母さんから聞いたからね。調べてある。それともレベル? ジュニアランキングとか関係ないでしょ? 僕が知らないだけで巧いの? ジュニアランキングは何位?」
くーっ。関東のジュニアランキングに名前があるくらいだったら、塾通わないで遠征してるっつーの。
「そこまでじゃないですけど」
「なら問題ない」
神センの言うことはもっともかもしんないけど、部活動に対する生徒のやる気を削いでどーすんの。部活動は中高一貫の醍醐味だったりするのに。
「でも、学校のカラーとか。雰囲気とか」
花園君は大切な天才かもしれないけど、私だって、自分の中学校生活が大切。
「なに、要領のいいお兄さんみたいに大学受験なしで附属で遊びたいって? 仁科には似合わないよ。というか、花園にははその手のところへ行かせたくない。極限まで学んで欲しい。そして知的好奇心を育んで欲しい」
「私だって中学校生活に夢があります」
とっさに口から出てしまった。いくら協力するって言ったって、自分を犠牲にするなんてありえないよ。
「へー。どんな?」
神センは仏様のような目でにっこりと微笑む。
「硬式テニス部でがんばって」
「ほー。で?」
「強くなって、試合なんかも出ちゃって」
「そうすれば? で?」
「……とりあえず、カレシが欲しいです」
ぽろっと本音が。
ふんっと神センは鼻で笑った。バカにしてっ。
どさっ
神センはソファにふんぞり返った。
「言っといてやる。どこの中学へ進学しようと、仁科がその気になれば、とびっきりのカレシができる」
「え!」
思わず立ち上がる私。
「誰がバレンタインのチョコを渡しと思ってるんだ。花園に向学心を持たせ、中学受験をクリアさせたら教えてやる。いや、とりもってやる」
「つまり、私のこと好きな男の子って、とびっきりってことですか?!」
両手に握りこぶしを作って小さくガッツポーズ。イエッス!
「おう。人生の先輩である僕から見ても間違いない」
「イケメン?」
「僕や君のお兄さんほどじゃないけど」
「性格いい?」
「保証付き」
「先生がリストした学校、全部受けます!」
「話が早いな。これだ」
っ。
見せられたメモには、輝くような高偏差値の進学校が並んでいた。眩しい。目が眩みそう。
「両親と相談します」
力なくメモを受け取るしかなかった。




