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お笑い芸人のマネをしながら、みんなで大通りを歩いていると、
「Bさん、ちょっといいかな」
とBさんが消えた。
更に数メートル歩くと
「森、あの」
と森ちゃんが消えた。
そして、しばらくすると目の前に、男の子が現れ、
「Cさん、オレ」
と白い息を吐きながら、気の毒なくらい顔を真っ赤にした。Cさんが消えた。
そして誰もいなくなったらどーすんの?
学校を離れるほど、呼び止められる可能性は低くなる。家が学区の端にある私は、次々と友達が道で消えたり分かれたりしていった後、親友の田部ちゃんと2人で歩いていた。
横断歩道を渡ろうとしているときだった。
「仁科!」
やっと来た。ついに来た。遅かったじゃん。どんだけ待ってたと思ってんの。
「なーに?」
自然にできたとびっきりの笑顔で振り向くと、そこには男の子が2人立っていた。そのうちの一方がうつむきながらもじもじと話し始める。
「あの、あの、これ、えーっと」
かわいいなぁ。そんなに恥ずかしがらなくってもいいよ。そんなに私のこと好きなわけ?
私は聖母のような心で、目の前の男の子が気持ちを言葉にできる時間を作った。見るに見かねたのか、隣に立つ、いかにも「付き添い」って感じの男の子が代弁した。
「これ、森さんに渡してあげて」
ふーん。そーゆーこと。
「分かった」
私の返事に、しどろもどろだった男の子はぱーっと顔をほころばせた。
「あ、それでさ、これ、仁科と田部さんに」
本命の森ちゃんへのチョコレートの袋と一緒に差し出されたのは、コンビニで売ってる感じのちょっと人に渡しますって包装の箱。キットカットやきのこの山じゃない。
ま、これでよしとしましょう。
森ちゃんに渡して欲しいって頼むために急遽買いました感が満載なんだけど。
私が手を出そうとしたその時だった。
「森ちゃんにはちゃんと渡しておくから。こんなことしなくても大丈夫だよ」
レディ田部は優しく言って、森ちゃんへのチョコレートだけを手に取った。まじで? せっかく義理じゃない感じのチョコだったのにぃ。
「そーだよ。気ぃ遣わなくてもいいよー。ちゃんと渡すから」
私も慌ててレディを発動。すっごく欲しかったけど。
「仁科、田部さん」
「なんていい子」
横断歩道を渡るとき振り返ると、2人の男の子は手を振ってくれていた。
男ってのは女を評価する。「いい子」それが田部ちゃんと私に下された評価。でも、齢十一の私だってうすうす気づいてるわけ。男は「悪い小悪魔」をうっかり好きになっても「いい子」とは友達にしかならない、まったくしょうがない生き物だってこと。




