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会話しながらも大量のお菓子セットを作り終えた。
ふーっと溜息をひとつ。
「先生、私、特別コースでついて行けますかねぇ?」
ふと不安がこぼれちゃった。
「ついて行くんだよ。勉強はやった分だけ力が付く。ここに来れば、時間無制限で勉強できる。分からないところは教えるし、何日合宿しても構わない。とにかくやれ。死ぬ気でやれ」
鬼。
「で、もし、万が一、花園君が行くような中学に入れたとして、私、授業について行けますか?」
「大丈夫。受験を突破できたなら、その学校でついて行けるレベルだってことだから。中学に入ったら、大半の者が一息ついて遊ぶ。あ、最初の試験までは勉強するだろうが。中1の夏休みから勉強すれば楽勝」
「それって中高6年間の学生生活遊ぶなって言ってません?」
「いや。要領よくやればいいんだよ。君のお兄さんみたいに」
あんな風に生きられるのは、ごく限られた人間だと思う。兄は大学附属の私立中学に進学した。受験勉強から解放されて、楽しい学生生活を送りたかったんだと思う。校則は法律を守ることってくらいゆるゆる。男子校。
例えばバレンタイン、2月14日の兄は、朝から通学路で多数のチョコを貰い、部活の後、男子校らしく「寂しいバレンタインの会」で友達とカラオケ。
しかし、その後は、他の高校のカノジョとデート。しかも、通学途中でチョコレートをくれた女の子の中にお気に入りができたらしい。友達のためって言いながら、合コンをセッティングしていた。
まさしく女の敵。モテない男の敵。つまり人類の敵と言っても過言じゃない。
「私、不器用ですから」
「いやいや。綺麗にリボンが結べてるよ。器用器用」
「そーゆーことじゃないんですけど」
ま、いいや。兄と自分を比べたってどうしようもない。
「仁科、手伝ってくれてさんきゅ。ジュース飲む?」
神センは私の目の前にマカロンやクッキー、フルーツグミがのったお皿を置いた。
「はい!」
あ、こーゆーときは「おかまいなく」ってゆーんだっけ。全力で返事しちゃった。
即座にピンクのマカロンに手を伸ばす私。
食べたかったんだー。美味しそうなんだもん。
「どーぞ」
「いただきます」
ぱく
美味しー。シアワセ。
目の前にはワイングラスが差し出された。スマートなワイングラスに泡がぴちぴちと浮かぶ琥珀色の液体が入ってる。おおー。なんだか大人っぽい。飲んでみると、洋ナシの炭酸。旨っ。
「そのジュース、最近、こっちで流行ってるんだよ」
と神セン。
「先生って、普段も未来と現在を行き来してるんですか?」
「ああ。業務の進捗状況を報告してる」
「へー、そーなんですか。あ、このグミ美味しい!」
「ははは。
仁科のことは報告済み。業務内容を話すなんて、個人の判断レベルじゃないからね」
なんか、私って特別? すっごいじゃん、私。
お菓子は甘くて、ジュースも最高。お手伝いしてよかったかも。
最後、神センは私のホワイトデーのクッキーを言付かってくれた。




