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濡れ女(仮)

作者:ぽこたろう
夏の夕暮れ。
陸上部に所属する中学生の少女・雨宮天音は、大会を控えた放課後、仲間とともに練習を終え、雨のなか帰路につく。
いつもと変わらないはずの帰り道。けれど、その日だけは違っていた。

――道路脇の車止めに座る、濡れた後ろ姿の女。
見えていたのは天音だけだった。

「あの人……なんかおかしくない?」

そのひと言が、すべての始まりだった。

翌日から、彼女のまわりの日常にじわじわと“異常”が忍び寄る。
夢の中の声、濡れた足跡、ふいに感じる視線――
やがて天音は知る。“それ”は、名も記録も失った少女の、深く歪んだ怨念だった。

そして、雨が降るたびに誰かが座るという、あの場所で。
天音もまた、“継がれてしまった”ことを悟る。

誰も見ていないはずの霊は、
――“見つけた者”に微笑む。
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