目覚めたのはあの日
初めての投稿です。
文章力がないのでChat GPTに自分の考えたプロットを小説にしてもらいました。
感想などあればぜひお願いします。
夜明け前の登山道は、冷気というよりも静寂でできていた。 枝を折る音すらしない。落葉の上を踏むたび、湿った音がひとつ残るだけだ。
三崎晴人は、ただ黙々と登っていた。 理由はなかった。衝動だった。 登山が好きなわけでも、特別な思い出があるわけでもない。 ただ、「朝焼けが見たかった」ということにしておいた。
スマホの通知も切ったまま、日帰りリュック一つ。 誰とも喋らず、誰にも気づかれず、静かに山を登る中年男。それが今日の彼だった。
登山道の終盤、稜線が見え始めるころ、彼はふと立ち止まった。
視界の奥で風が揺れる。遠くの山肌が、かすかに白み始めていた。 見上げた空には、まだ星がいくつか残っている。 それを見た瞬間、なぜか涙が出そうになった。
彼は口元をぬぐい、呟いた。
「……なんで今さら、こんなところに来たんだか」
言葉にしたら、余計に空しくなった。 何かを求めていたわけじゃない。ただ、立ち止まりたかったのかもしれない。 今まで通りの日々を、あと一歩だけ遅らせたかった。
風が強くなった。
次の瞬間、足元がわずかに崩れた。 乾いた岩肌がもろく崩れ、彼の体は一気に斜面を滑り落ちていく。
落ちていく最中、彼は不思議と冷静だった。 痛みよりも、恐怖よりも、ただ一つの感情が心を満たしていた。
(……またか)
世界が反転し、景色が暗転する寸前、彼は一人の名前を呟いた。
「由香……」
***
目が覚めると、眩しい光が差し込んでいた。 机の上には教科書、壁には手書きのポスター。制服を着た学生たちの声。
晴人は、自分の手を見た。 若い。細く、力強く、骨が目立たない指。見覚えのある学ランの袖。
目の前には、教室。 その壁の時計は、午前8時を指していた。
起き上がる。視線を天井に向ける。 どこか懐かしい。いや、“懐かしすぎる”。
カレンダーに目をやった。
1997年、12月15日。
瞬間、彼の肺から空気が抜け落ちる。 あの事故が起きた日から、三日前だった。
ドアが開いた。
「おーい、晴人ー。まだ寝てんの?」
声とともに顔をのぞかせたのは、制服姿の女子生徒。 光を背にしても、その顔は一目でわかる。
長谷川由香。 あの日、雪の坂道で転落して死んだ、彼の恋人だった。
夢なら醒めてほしかった。 現実なら壊れてほしかった。
だが彼女は、目の前で笑っていた。何も知らずに。
「もうすぐ一限始まるよ?」
彼は答えなかった。うまく声が出なかった。
時間が巻き戻った。過去が、目の前にある。 その現実に、まだ思考が追いつかない。
それでも、彼の体はゆっくりと立ち上がった。 まるで演じるように、制服の襟を正し、鞄を肩にかける。
また始まるのかもしれない――彼女の死と、それを防ごうとする日々。 けれど、それを望んでいる自分も、どこかにいる気がした。
その理由は、まだわからなかった。